UFC 219見どころ:女子格闘技最高峰の戦い!

UFC PPV 見どころ
UFC 214:クリスチャン・サイボーグ vs. トーニャ・エヴァンジャー【アメリカ・カリフォルニア州アナハイム/2017年7月29日(Photo by Mike Roach/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
UFC 214:クリスチャン・サイボーグ vs. トーニャ・エヴァンジャー【アメリカ・カリフォルニア州アナハイム/2017年7月29日(Photo by Mike Roach/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
サイボーグが頂点を極めるか、ホルムの番狂わせ再びか

ホリー・ホルム(米国)がUFC 193(2015年11月)でロンダ・ラウジーと対戦することになった時、ホルムに勝ち目があると考える人はほとんどいなかった。当時のラウジーは人気・強さともにピークを極(きわ)めていた。この試合に至るまで4試合連続で秒殺勝利を遂げており、文字通り、相手に触っただけで勝ってしまうような圧倒的な強さだったのだ。ところがこの試合の第2ラウンド、ホルムの狙いすましたハイキックがラウジーのアゴをえぐると、ラウジーが意識を狩られてダウン。信じ難い光景を目撃した世界がおののいた。

日本時間12月31日(日)、2017年の掉尾(とうび)を飾るUFCのビッグイベント、UFC 219で、ホルムが再び形勢不利を予想される状況で地球最狂女王クリスチャン・サイボーグ(ブラジル)と対戦する。



番狂わせの女王ホルム、すべては「作戦通り」

20歳からプロボクシングキャリアをスタートさせたホルムはボクシング戦績33勝2敗3分、3階級でベルトを獲得した女子ボクシング界のレジェンドだ。2011年にMMAに転向した後、2014年にはUFCデビューを果たし、翌年、ラウジーを倒してUFC女子バンタム級チャンピオンを獲得する。男子を含め、ボクシングとMMAの両方でチャンピオンになった選手はホルムただ1人である。

ボクシング時代からホルムと二人三脚を続けている打撃コーチのマイク・ウィンケルジョンは、再びホルムが大金星をあげると予言する。

「ロンダ戦の時、舞台裏でわれわれは作戦に大いに自信を持っていた。ボクシング時代に、当時の最強王者クリスティ・マーティンとホリーが戦った時にも、無謀すぎる挑戦だと言われたんだ。しかし、ホリーは相手をいとも簡単に仕留めた。相手がパンチを放っても、ホリーが身体をかわすから、相手は危うく場外に落ちるほどの大きな空振りをしていたんだ。分かるだろう? ロンダもそうなっていた。そしてサイボーグ戦でも同じことが起きる」

王座獲得後は負けが続き心配されたが、UFCファイトナイト・シンガポール(2017年6月)でベチ・コヘイアを得意のハイキック1発でマットに沈めて健在ぶりを示したホルム。本人も“ビッグアップセット”再現へ意欲満々だ。

「当時のロンダがどうにもならないくらい強かったことを忘れている人が多いと思う。実際、あの試合でも何度か、逆の結果が出ていてもおかしくないようなヒヤリとする展開はあった。当時の彼女は圧倒的だった」

「今のサイボーグも同じように圧倒的な存在になっている。それでも、私ならサイボーグを倒すことができる。ロンダ戦で私が他の選手と違っていたことは、ロンダと対峙(たいじ)した時の自信だったと思う。私は自分のことを疑うという選択肢を放棄している。自信が足りない状態では戦うなんてできないからよ」

強敵との対戦を前に、ホルムは試合を次のように展望している。

「サイボーグはとても攻撃的で強くて、威圧的な試合をする。今回も攻撃的に来るのかもしれないし、来ないのかもしれない。いずれにしても、ゲームプランは立ててある。カウンター狙いに来るのかもしれないし、フットワークを使ってきたり、クリンチを使ってきたり、レスリングをしようとするかもしれない。MMAなんだから、いろんな可能性がある。私は、どんな状況にも対応できるように練習してある」

新しいサイボーグ

UFC女子フェザー級チャンピオンであるサイボーグの戦績は18勝1敗1ノーコンテスト。18勝のうち16勝がノックアウト、黒星だったデビュー戦以来12年間無敗を誇り、Strickeforce、Invicta FC、UFCと行く先々でベルトを獲得してきた。逆転勝ちも、際どい判定勝ちも一切なく、対戦相手を台風に巻き込んで吹き飛ばすような、格闘技ファンですら目を背けたくなるような圧倒的な暴力でひたすら勝ち続けてきたのである。犠牲者にはジーナ・カラーノ、マルース・クーネン、シェイナ・ベイズラー、トーニャ・エヴァンジャーといった女子格闘技のレジェンドの他、高橋洋子、赤野仁美、HIROKOら日本人の秀英も含まれる(HIROKO戦は後にノーコンテスト裁定)。

サイボーグの打撃コーチであるジェイソン・パリロは、「サイボーグはMMA版のマイク・タイソンだ。彼女がケージに足を踏み入れる時、電流が走るようなエネルギーが流れる」と称している。

とはいえ、サイボーグにとってホルムはこれまでにない強敵であることには間違いがない。

「ホルムには300ラウンド以上の豊富なボクシング経験がある。今回は私にとっても難しい試合になるだろう。でもこれはMMA。この試合では、もしかすると新しいサイボーグをお見せできるかもしれない。テイクダウンを取って関節技を狙うかもしれない。ただ単に、第1ラウンドでノックアウトすればいい、とは思っていない。そうなれば素晴らしいとは思うけれど、これはMMAだから、どうなるか分からない。私にできることは全部やるつもりで戦う」

対照的な2人、宿命の対決

「ホリーとロンダの試合は見ていた。素晴らしい試合だった。もともと私はロンダと戦うつもりだったけれど、あの日以来、私はいつか、ホリーと戦うことになるのだと思っていた」と語るサイボーグ。

一方、ホルムは「この試合はいつの日か、やることになると思っていた。私がUFCに来る前、彼女がStrikeforceにいた頃から、“自分がMMAに転向するなら、この人と戦うことになるのかしら”と思っていた」と話す。

アメリカ女子MMAのパイオニアである蹴撃女王カラーノを引退させたサイボーグと、UFC女子部門の立役者で五輪柔道メダリストのラウジーのキャリアを事実上終わらせたホルム。

超アグレッシブなムエタイスタイルのサイボーグと、カウンター狙いの戦略家ホルム。

プレッシャーのサイボーグとフットワークのホルム。

喧嘩(けんか)屋サイボーグとアスリートなホルム。

まさに現在の女子格闘技で実現可能な最高峰の戦いと言える。勝者はベルトを獲得するだけでなく、最強女子格闘家として人々の記憶に強く刻まれることとなるだろう。

ハビブ・ヌルマゴメドフとエドソン・バルボーザのライト級トップコンテンダー決定戦もセミメインイベントに控える大みそかのUFC女祭り、誰がどんな始末をつけるのか、しっかり見届けよう。

【文 高橋テツヤ】

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