UFC 220見どころ:ミオシッチ対ガヌー、地球最強決定戦!

UFC PPV 見どころ
UFC 211:スティペ・ミオシッチ vs. ジュニオール・ドス・サントス【アメリカ・テキサス州ダラス/2017年5月13日(Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
UFC 211:スティペ・ミオシッチ vs. ジュニオール・ドス・サントス【アメリカ・テキサス州ダラス/2017年5月13日(Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
誰が相手であろうとぶち壊す地球上最強の男の称号、UFCヘビー級チャンピオン。日本時間2018年1月21日(日)に開催されるUFC 220のメインイベントでは、その称号を持つ王者スティペ・ミオシッチ(米国)が、最強挑戦者にしてMMA界の大注目株、フランシス・ガヌー(カメルーン)を迎えてタイトル防衛戦を行う。



「スティペの限界は見えている」とガヌー

わずか4年前までMMAという競技の存在すら知らず、ボクサーを志して母国カメルーンからヒッチハイクでたどり着いたパリの路上で暮らしていたガヌー。現在はラスベガスの高級マンションに住み、UFCパフォーマンス・インスティチュートでの科学的トレーニングで、持ち前のナチュラルパワーに高度なファイトIQを着々と注入している。前回の試合はつい先月のこと、UFC 218でアリスター・オーフレイムを第1ラウンドでノックアウトした。狙い澄ましたアッパーカットを食らったオーフレイムが、まるで雷に打たれたかのように硬直したまま気絶する光景に、まさに戦慄が走った。

重さ5kgのハンマーを脳天に思い切り振り落とすのと同じ打撃力を持つと言われるガヌー。記者会見で、ミオシッチは打ち合いに応じてくれるのか、それともレスリング勝負に来ると思うかと聞かれたガヌーは作戦なしで挑むこと、ミオシッチを相手にできることはせいぜいサバイバルのみだと断じている。

「サバイバルが彼のゲームプランだ。それでも俺はパンチを当ててやる。パンチが当たったらどうなると思う?」

「この2年間はレスリングの練習もしてきた。寝ても立っても、スティペをフィニッシュできる。ノックアウトパワーだけだと試合に勝つのに十分でないことは分かっている。もっとオールラウンドに、完全無欠のファイターを目指しているんだ」

実際、オーフレイムが距離を詰めてクリンチしてきた時にも、ガヌーは体勢を入れ替えてあっさりと解除に成功している。

「え? クリンチゲームはもう終わり? と拍子抜けしたよ。あれで逆に相手の力が分かってしまった」

「自分にはスティペの限界が見えているし、スティペが何をやってくるのかも知っている。でも恐ろしいことに、ガヌーの限界は誰にも見えていないし、ガヌーが何をやってくるのかも誰にも分からない。だから自信があるんだ」と勝利を確信するガヌーは「この俺がヘビー級を変えていく」と、新時代開拓を高らかに宣言している。

連続防衛記録に挑むミオシッチ

怪物を迎え撃つ形となるミオシッチではあるが、大会前記者会見ではいきり立つガヌーの挑発を右から左へと受け流し、余裕あふれる王者の貫録を見せつけた。それもそのはず、ミオシッチは現在5連勝中、しかも4試合連続の第1ラウンドでのノックアウト勝ちを収めており、まさにファイターとしての全盛期・円熟期を迎えているのだ。確かにガヌーはアンドレイ・アルロフスキーとオーフレイムを連続でノックアウトしたが、それくらいのことならミオシッチもとっくにやっているのである。

記者会見でガヌーの印象について聞かれたミオシッチは「パンチの強い大男だろ。他のヘビー級ファイターと変わらん」と多くを語らない。ガヌーがオーフレイムを強烈にノックアウトしたことについては「勝てて良かったんじゃないか。まあ、簡単な試合だよ」と一蹴。下馬評でガヌーの方が優勢であることについては「そういう賭け率には慣れているから何とも思わない。ただ、またカネを損するヤツが続出すると思ってな」と話すにとどめ、“すべては試合を見れば分かる”といわんばかりに素っ気ない。

25年のUFCヘビー級史上、これまでに3回連続でタイトルを防衛した選手はいない。オーフレイム、ジュニオール・ドスサントスを下して2回連続防衛に成功しているミオシッチは今回、前人未踏の記録の達成に挑む。しかし、そのためにはガヌーというモンスターの挑戦を退けなければならない。“地球上で最凶は誰だ?”をテーマに、危険すぎる大戦争がついに開戦する。

コーミエ、「レベルの違いを見せつける」

UFC 220のセミメインイベントもタイトルマッチが組まれ、UFCライトヘビー級王者ダニエル・コーミエ(米国)と挑戦者ヴォルカン・オーズデミア(スイス)が対戦する。

コーミエは前回、ジョン・ジョーンズに敗れて(UFC 214、2017年7月)タイトルを奪われたものの、後にジョーンズの薬物違反が判明したことにより、ベルトが手元に戻ってきた復活王者だ。負けて泣きじゃくっていた男が再びチャンピオンになったことについて、コーミエは複雑な思いを明かす。

「あの日、オクタゴンで何が起きたのか、自分はよく分かっている。ごまかすつもりはない。俺は負けた。それが現実だ。ただ、俺は自分の力で埃(ほこり)を払って立ち上がったんだ。それだけが自分にできることだからね。もちろん後味は良くない。だから今回、ヴォルカンを圧倒してぶっとばす。それだけが選手として気分良くいられる唯一の方法なんだ」

「ヴォルカンは確かにいい選手だ。ただ、MMAにはレベルというものがある。彼は今回、それを思い知ることになる。5分たっても10分たっても、俺はずっと相手を押し込み続ける。マットに投げつけ、頭を押さえつけ、呼吸をさせない。するとどうなる? みんな背中を向けて、こちらに首を差し出すんだ。ヴォルカンもそうなるんだよ」

スイス出身ファイターとして初めてのUFCタイトル挑戦を果たすオーズデミアは2017年2月のUFCファイトナイト・ヒューストンでデビュー。しかも、わずか2週間前の緊急オファーを受けていきなり当時ランキング6位のオヴィンス・サン・プルーを下し、5月にはミーシャ・サークノフ、7月にはジミ・マヌワを、2人合わせて70秒でノックアウト。UFC入りして1年もたたずにタイトルショットにたどり着いた急成長株だ。「オレの目標は最速でUFCのベルトを取ること。あとはコーミエをノックアウトするだけだ」と腕を伏している。

UFC史上、ヘビー級とライトヘビー級の重量級2本のベルトが同じイベントでかけられるのは今回が初めてだ。最強寒波到来のボストンで繰り広げられる雪をも溶かす余りにも熱くて豪華な戦いをたっぷりと堪能しよう。

【文 高橋テツヤ】

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