UFCファイトナイト・シャーロット見どころ:ジャカレ・ソウザ、タイトル戦線再浮上へ試金石の一戦

UFCファイトナイト 見どころ
ジャカレ・ソウザ
ジャカレ・ソウザ
日本時間1月28日(日)開催のUFCファイトナイト・シャーロットのメインイベントではジャカレ・ソウザ(ブラジル)対デレク・ブランソン(米国)戦が行われる。



ジャカレ、ケガからの復帰戦!

ソウザはミドル級タイトル挑戦に最も近い男であるはずだった。

2012年から2015年まで破竹の8連勝。2015年12月のヨエル・ロメロ戦ではフルラウンドにわたるドッグファイトの末、惜しくもスプリット判定負けを喫したものの、ソウザが勝っていたのではないかと見る識者も多かった。その後もビトー・ベウフォート戦、ティム・ボーシュ戦で連続パフォーマンスボーナスを獲得する快勝を飾り、2017年初旬の時点でソウザは過去11試合で10勝の高勝率を誇っていたのだ。

2017年4月、ソウザはロバート・ウィテカーとの試合を受ける(UFCファイトナイト・カンサスシティ)。現在でこそ王者にまで登り詰めたウィテカーであるが、当時の状況ではソウザにとってウィテカーは格下。勝って当然、負けるとタイトル戦線から大きく後退しかねない、いわゆるリスクの高い試合だった。そしてこの試合でソウザはUFC入りしてから初めて、まさかのノックアウト負けを喫してしまう。

「こんな試合を受けるべきではないという意見もあった」とソウザは振り返る。「でも、ダンサーは踊る。シンガーは歌う。ファイターは何をする? 長い間休んでいても仕方がないだろう。だからUFCがくれたチャンスに感謝して、とにかく前進し続けようと考えたんだ。自分のモチベーションは、それぞれの対戦相手が突きつけてくる難題を解くこと。ベルトは結果にすぎない。試合を選ぶ時には、ひざまずいて神のご意向を伺うんだ。そうすれば道はおのずと開ける」

ウィテカー戦で胸筋を断裂、手術とリハビリを経て、今回は9カ月ぶりの試合となる。ソウザ不在の中、ミドル級タイトル戦線は状況が大きく動いた。ソウザはこの間、リオデジャネイロから家族を引き連れてフロリダに移り、米国での新生活を試行している。うまくいきそうなら、生活と仕事の場を米国東海岸に固定することも考えているのだという。

「今でも俺はミドル級トップの1人なんだ」と語るソウザは目下、UFCタイトル戦線での立ち位置だけでなく、キャリアや生活の方向性も見定め直している時期にある。明るい未来を描くためにも、まずは今回の試合をしっかりと制しておきたいことは言うまでもない。

地元がい旋を錦で飾りたいブランソン

地元ノースカロライナ州出身のブランソンはノースカロライナ大学で刑事司法を専攻、プロファイターになる前には地域で社会福祉の仕事をしていた変わり種だ。今回は本人の強い希望もあって、UFC入りする前のローカル団体時代以来、8年ぶりに地元がい旋を果たす。

ダン・ケリー、リョート・マチダを連続ノックアウトし、過去12戦で9勝と好調なブランソンだが、ソウザとはStrikeforce時代の2012年にも対戦しており、わずか41秒でノックアウト負けを喫している。

「前回の試合は大学を卒業したばかりで、キャリアも浅かった」とブランソンは語る。「まだベースのレスリングだけでやっている時期だった。その後じっくり時間をかけてボクシングとムエタイのスキルを獲得してきた。パンチを打つ時に自分をさらしすぎないことがポイントなんだ。その点では今の自分は当時と別人になっている」

「自分のグラウンドスキルは相当に高いと自信を持っている。そろそろ、ミドル級で俺の時代が来る。そうなるようにできることは全部やる」と意気上がるブランソンに、地元ファンの前で己こそが次のタイトル挑戦者にふさわしいことを証明する絶好のチャンスがやってきた。

フィリが金網でこん身のメッセージを叫ぶ

UFCファイトナイト・シャーロットのセミメインイベントではアンドレ・フィリ(米国)とデニス・バミューデス(米国)が対戦する。

チーム・アルファ・メール所属のフィリは前回の試合でアーテム・ロボブ(UFCファイトナイト・ポーランド、2017年10月)を下し、勝利者インタビューでマイクを向けられると、次のように発言した。

「正直言って、試合のことなんてどうでもいい。俺が合宿を張っていたこの2カ月ほど、銃乱射事件、爆弾、津波、台風、カリフォルニアの山火事などが次々に起きた。俺たちはお互い、もっと人間らしくやっていかないといけないと思うんだ。みんな同じ人類じゃないか。少しは他人のこと、そして子どもたちのためにこの地球のことを考えようぜ」

ふだんから自身のポッドキャスト『Touchy Subject(やばい話題/“タッチー”はフィリのニックネームでもある)』やソーシャルメディアを通じて社会的な発言をすることが多いフィリは、このユニークなアジテーションについて、「前もって用意していたわけでも何でもない。あれがあの頃ずっと考えていたことだった。家を失った人、水や電気が途絶えてしまった人に比べれば、俺の問題なんて何てちっぽけなんだろうと思ってさ。とにかく言いたいことは、クズ野郎にならないようにしよう、ということなんだ。俺らは他人とちょっとしたことでやり合ってしまうし、そうしないためには多少の努力も必要だけど、その見返りはうんと大きいんだよ」とその心を明かしている。

最近8戦で4勝4敗、しかも白星と黒星がきれいに交互に付いており、この調子でいくと今回は黒星の順番ということになってしまうフィリではあるが、このパターンを打破してランク入りを目指すべく必勝を期している。

一方、「1リットルのレモンジュースをストローで早飲みする」という珍競技でギネス記録(22.75秒)を持ち、今後、フローズンジュース、ケチャップ、マスタードの早飲みにも挑戦したいという、強じんすぎる胃腸を持つバミューデスは現在連敗中だ。フィリについては「スタンドが強い選手だけど、かえってありがたい。距離が長い選手なので、懐に入って戦いたい」と分析している。かつて現フェザー級王者マックス・ホロウェイを下した実力を存分に発揮し、3連敗は何としても避けたいところだ。

【文 高橋テツヤ】
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