UFCファイトナイト・ベレン見どころ:地元がい旋のリョート・マチダが10連勝男を迎え撃つ

UFCファイトナイト 見どころ
UFCファイトナイト・サンパウロ:デレク・ブランソン vs. リョート・マチダ【ブラジル・サンパウロ/2017年10月28日(Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
UFCファイトナイト・サンパウロ:デレク・ブランソン vs. リョート・マチダ【ブラジル・サンパウロ/2017年10月28日(Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
日本時間2月4日(日)に開催されるUFCファイトナイト・ベレンのメインイベントでは、舞台となるベレンで幼少期を過ごした“ザ・ドラゴン”ことリョート・マチダ(ブラジル)が、赤丸急上昇中のフットボーラー、エリク・アンダース(米国)と対戦する。

マチダ、「1戦1戦を大切に」

2017年10月に開催されたUFCファイトナイト・サンパウロで2年ぶりにオクタゴン復帰を果たすも、デレク・ブランソンにノックアウト負けを喫したマチダは2014年12月を最後に3年以上勝ち星がなく、過去3戦は3連続ノックアウト負け。そして今年5月には40歳になる。

さすがのマチダにも限界説がささやかれているが、試合前記者会見で本人はそんな懸念を一蹴している。

「3連敗も4連敗もすると、人はすぐに引退の話を持ち出す。MMAファンは例えばテニスファンと比べて、スポーツのことを分かってないんじゃないか。テニスのラファエル・ナダルやロジャー・フェデラーは何回負けていると思う? サッカーもそうだ。チームに悪い時期があっても、また浮上してくる。ただ、そのための時間は必要なんだ」

「もちろん、誰だって歳(とし)はとる。でも、コンディションが良く、やる気もあり、練習でも若い選手やトップファイターと伍(ご)してやれている以上、引退する理由はないと思う」

2007年のUFCデビュー以来、8連勝で一気に頂点まで駆け上ったマチダ。ラシャド・エバンスから王座を奪った試合、大激戦となったマウリシオ・ショーグンとの防衛戦、ランディ・クートゥアを引退に追い込んだ試合など、忘れ難い名勝負も多い。対戦相手のアンダースは上昇中のハングリーな選手ではあるものの、マチダも踏み台になるつもりはさらさらない。

「アンダースは身体が強く、若さもある。ただ、自分から見れば、これといって秀でているところがない。何でも少しずつできるような選手だと見ている。もちろん、経験面では自分の方が上回る」

黒星後の試合としては短いインターバルでの復帰となったが、地元で昔からの友人や家族の前で試合をすることにモチベーションをかき立てられているのだという。

「最終目標はベルトだけれど、今はそんなことを口にするのはおこがましい。とにかく目の前の試合に集中して、1戦1戦を大切にしていきたいんだ」

アンダース、アメフト仕込みの突進力で快進撃

プロ戦績10戦10勝、うち7試合でフィニッシュ勝利というアンダースのUFCデビューは鮮烈なものだった。負傷欠場選手の代打として、試合9日前にオファーを受けたスクランブルデビューだった上、対戦相手はUFCキャリア17戦、難攻不落のハファエル・ナタウだ(UFCファイトナイト・ロングアイランド、2017年7月)。1カ月前には他団体で試合をしたばかりだったにもかかわらず、このチャンスに飛びついたアンダースはナタウを3分でノックアウトしてしまう。

「UFCのミドル級全選手に、エリク・アンダースからの宣戦布告をするいいチャンスだと思ったんだ。いつでもフィニッシュを狙っている。判定ではダメなんだ」

この試合はUFC公式サイトが選ぶ“2017年番狂わせベスト10”の第4位に選出されている。

その後、2017年12月にマルクス・ペレスを下したアンダースは勝利者インタビューで次の対戦相手として大胆にもマチダを指名したのだった。

「自分より強いと言われている人、ランクが高い人と戦うのが面白いんじゃないか。リスクがあればあるほど、見返りも大きいからね」

アンダースのバックボーンはアメリカンフットボール。アラバマ大学時代の2009年には、9万5,000人の大観衆を集めた大学ナンバーワン決定戦でラインバッカーとして大活躍した。しかし、プロに進むには体格が小さすぎたため、さまざまな職業を転々とした挙げ句、2年前にMMAとめぐり会った。

超攻撃的なアンダースはUFCで欠場者が出るたびにソーシャルメディアで自分の出場をアピールしている。UFC 215(2017年9月)開催時には、ジュニオール・ドス・サントスの欠場により当初予定されていたフランシス・ガヌーの試合が流れたときにも、自らはミドル級にもかかわらず、アンダースは自分がヘビー級のガヌーと戦ってやると宣言したのだ。

「フットボール仕込みの体力だけでやっている選手だと思われているのかもしれないけど、俺だって人生をかけているんだ」と語るアンダースは大金星を挙げることで、マチダのホームであるブラジル・ベレンのファンを沈黙させることをたくらむ。

シェフチェンコの女子フライ級転向初戦も

セミメインイベントに登場するのはジョン・ドッドソン(米国)だ。過去に2度、フライ級タイトルに挑戦しながら、絶対王者デメトリアス・ジョンソンに退けられ、2016年にバンタム級に転向したドッドソンだが、転向後は2勝3敗と苦戦している。しかし、キャリア27戦でまだフィニッシュされたことがない(8敗は全て判定負け)という粘り強さ、ジョンソン戦以外ではほぼ完璧なテイクダウン防御力(32回の被テイクダウンで実際に許したのは1回のみ)は誰にとっても厄介な難敵であることは確かだ。

対戦相手のペドロ・ムニョス(ブラジル)は現在4連勝中、うち3試合でファイトボーナスを獲得している名勝負製造機だ。前回はロブ・フォントと乱打戦の末、片腕でのギロチンチョークで切って捨てている。柔術をベースにしながら、試合ごとに打撃の進化を見せているムニョス。ブラジルでの戦績は6勝1敗とホームゲームに強い。元トップコンテンダーに土を付けてますます上昇気流に乗りたいところだ。

その他、前戦で女子バンタム級王者アマンダ・ヌネスに挑戦して惜しくも判定負けを喫したワレンチナ・シェフチェンコ(キルギス)の女子フライ級転向後初戦も行われる。まだ29歳にして格闘技歴20年、ムエタイで17回チャンピオンになり、MMA戦績は14勝3敗という実力者“バレット(弾丸)”ことシェフチェンコに相対するのは、壮絶なコカイン中毒との戦いを経て2年前からMMAを取り組み始め、ブラジルの国内団体で8連勝を飾って今回UFCデビューを果たすプリシラ・カショエイラ(ブラジル)だ。勝てば一気にベルト挑戦も見えてくる大一番、人生再チャレンジのシンデレラストーリーを描くことができるか、注目が集まる。

【文 高橋テツヤ】
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