UFC 225見どころ:豪華2大タイトルマッチ! ここから始まるロバート・ウィテカーの王道

UFC PPV 見どころ
UFC 213:ヨエル・ロメロ vs. ロバート・ウィテカー【アメリカ・ネバダ州ラスベガス/2017年7月8日(Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
UFC 213:ヨエル・ロメロ vs. ロバート・ウィテカー【アメリカ・ネバダ州ラスベガス/2017年7月8日(Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
日本時間6月10日(日)に開催されるUFC 225の見どころは何と言っても豪華ダブルタイトルマッチだ。メインイベントではUFCミドル級王者ロバート・ウィテカー(ニュージーランド)に挑戦者ヨエル・ロメロ(キューバ)が、そしてセミメインイベントではハファエル・ドス・アンジョス(ブラジル)対コルビー・コビントン(アメリカ)のUFCウェルター級暫定王座決定戦が行われる。

ミドル級タイトル戦線再始動!

ここでまず、いろいろあって事情が複雑化しているUFCミドル級タイトルの変遷についておさらいしておこう。2016年6月に王座を獲得したマイケル・ビスピンが2017年11月にジョルジュ・サン・ピエールの挑戦を受けるまで、負傷などにより防衛間隔が空(あ)いたため、UFCではUFC 213(2017年7月)でロメロを下したウィテカーを暫定王者に認定した。その後、ビスピンを下した新正王者サン・ピエールがベルトを返上すると、ウィテカーが戦わずして正王者に格上げされたのだ。

そのウィテカーはUFC 221(2018年2月)でルーク・ロックホールドを挑戦者に迎えて防衛戦を行うはずだったが、試合前に水ぼうそうなどを発症して無念の欠場。ウィテカーの代役としてロメロが起用され、試合は暫定王者決定戦に認定されることとなった。ところが、この試合でロメロが計量に失格したため、試合はロックホールドが勝った場合にのみ、暫定王者を獲得できるという特別ルールで行われることに。

そして、この試合で勝利したのはロメロだったのである。暫定王者ではないものの、事実上のトップコンテンダー決定戦を制したロメロこそ、やはり正王者ウィテカーに挑戦する一番手としては余人を持って代え難く、結果的に今回、UFC 213のリマッチの実現という運びとなったのである。

オセアニア出身初のUFC王者となったウィテカーは前回、第1ラウンドにロメロの関節蹴りで左足を破壊されながら、そのまま5ラウンドを戦い抜き、ユナニマス判定勝ちを収めている。「ヨエルは運動能力の化け物だった。爆発力があることは分かっていたけど、実際に対峙(たいじ)してみると想像とは全く違う強さがあった」と、勝利にもロメロの強さに舌を巻いたウィテカー。

「ロックホールド戦のヨエルも、これまでとはまるで違ったゲームプランで戦っていたし、とても刺激的だった。彼はトップ5全員を倒し、トップコンテンダーの地位をもぎ取っている。厄介な相手だけど、やるしかない」と警戒を一層強めるチャンピオンだ。

一方、41歳の“ソルジャー・オブ・ゴッド”ことロメロにとっても、この試合には王座獲得の悲願がかかっているだけでなく、前回喫したUFCでの唯一の黒星をリベンジするチャンスでもある。「今回は前回の2倍の準備をしている。わずかなチャンスも逃さないつもりだ」と、こちらも入念に必勝を期している。

悪童コビントン「メイクUFCグレート・アゲイン」

「ブラジルはゴミ集積場。おまえらは全員、汚らしい獣だ!」

2017年10月のUFCファイトナイト・サンパウロでデミアン・マイアを圧倒したコビントンは試合後の勝利者インタビューで、ただでさえ自国選手の敗戦に落胆していたブラジルの観客に追い打ちをかけるように罵倒した。耳をつんざくようなブーイングの中、10人ほどのセキュリティスタッフに囲まれて花道を足早に退場していくコビントンには、客席からペットボトルやゴミなどが投げつけられ、場内は暴動寸前の阿鼻叫喚(あびきょうかん)を呈したのだった。

それから半年、2018年4月に行われたUFC25周年記念記者会見に出席したコビントンは再び、今回の対戦相手であるドス・アンジョスの母国ブラジルを罵倒した。

「オレはブラジルの王だ。オレにはブラジルに戻って、ブラジルのファンに試合を見せてやる義務があるんだけど、どうやら時期尚早のようだ。だから今回の試合はアメリカで行う。あの国はゴミ集積所だ!」

何かと各方面に噛(か)みつき、敵を作りまくっているコビントンであるが、大学時代にはPAC-10チャンピオンを2度獲得、MMA転向後の戦績は14勝1敗(UFC戦績9勝1敗)、現在5連勝中という確かな実力者だ。しかし、そんなコビントンにとってもドス・アンジョスが過去最強の対戦相手であることは間違いない。特に5ラウンドのタイトルマッチでの経験ではドス・アンジョスに一日の長がある。

それでも、コビントンは委細構わず今回の試合について、トランプ大統領のあの名言、“メイク・アメリカ・グレート・アゲイン”をもじってこう言ってのけるのであった。

「オレが“メイクUFCグレート・アゲイン!”を成し遂げる!」

他方のドス・アンジョスはコビントンの暴言を笑顔で受け流している。

「自分はブラジルのファベーラで育った。イジメや悪口は俺には効かない。コルビーはコナー・マクレガーになりたいんだろうと思う。ただ、コナーのことなら自分もリスペクトしているけれど、コルビーはコナーの単なる劣化版だ。口先だけで中身が何もない。試合に感情は持ち込まない。ひたすら冷血に痛めつけてやるだけだ」

確かにドス・アンジョスはかつて、試合中にも絶えることのないネイト・ディアスの口撃を柳と受け流し、無慈悲なパウンドで流血葬に処したことがある。

元ライト級チャンピオンのドス・アンジョスはウェルター級転向後、タレック・サフィジーヌ、ニール・マグニー、ロビー・ローラーを打ち破って3連勝、タイトルマッチへと急上昇してきた。2度目の全盛期を迎えて円熟味を増すばかりのドス・アンジョスが、コビントンという出る杭(くい)をたたいて2階級制覇、そしていよいよ正王者タイロン・ウッドリーへの挑戦に乗り出す。

アンダーカードも過激な豪華さ

シカゴで開催されるUFC 225では元WWEスーパースターで地元出身、CMパンクの注目の復帰戦も行われる他、アリスター・オーフレイムがプレリミナリーに、ラシャド・エバンス、ジョセフ・ベナビデス、クレイ・グイダがアーリープレリムに登場と、スター選手がてんこ盛りであふれ返っている超豪華ラインアップだ。それぞれに見どころ満載の全13試合、じっくり堪能しよう。

【文 高橋テツヤ】

Facebook X LINE

オクタゴンガール
オフィシャルショップ
FANTASY