大沢ケンジに聞く:UFCファイトナイト・シンガポール見どころ(後編)

UFCファイトナイト 見どころ
UFCファイトナイト・シンガポール:石原夜叉坊
UFCファイトナイト・シンガポール:石原夜叉坊
日本時間6月23日(土)に開催されるUFCファイトナイト・シンガポールの見どころを大沢ケンジ氏にうかがった。

石原“夜叉坊”暉仁 vs. ピョートル・ヤン

大沢: この試合はヤバイですね。ヤン(ロシア)はヤバイですよ!

Q: ヤンは今回がUFCデビューなのですが、どんなふうにヤバイ選手なのですか?

大沢: まず、そもそもロシア人だというだけでヤバいんです! UFCに出てくるロシア人選手も、他団体に出ているロシア人選手も大体強い。総じて、柔道やレスリングのバックボーンがあって、身体も強いんです。アメリカ人ファイターの間でも、ロシアというだけで恐れられている面がある。ヤンはそんなロシアのACB(チェチェン共和国)という団体のチャンピオンなので、これは絶対に強いです。そして実際に試合映像を見たら、打撃が恐ろしく強い! UFCでいきなり勝負できそうな選手、今後タイトル戦線に絡んできそうな選手だと思います。

Q: 石原選手自身も『Twitter(ツイッター)』で「引き(が)良すぎて本物当てた!」と言っています。

大沢: そう思いますね。ただ、ただですよ、ヤンは本当に強いんで、夜叉坊にとっては、勝てばこれまでの戦績(注:過去4戦で1勝3敗)は払拭できるくらいのインパクトのある勝ち星になります。

Q: 石原選手にとって、ハイリスク・ハイリターンな試合になりそうですね。

大沢: これまで、UFCは夜叉坊を長い目で育てようとしているのかなと思っていたのですが、今回はずいぶん厳しい相手を当ててきたな、と感じますね。

ヤンはプレッシャーをかけて前に出ながら待てる選手で、よく相手のことが見えているし、打撃の種類も多いです。夜叉坊にとっては、これまで通りの戦いでは正直キツイかもしれません。ただ夜叉坊もチーム・アルファ・メールで、本物のトップどころと練習を積んできているので、どこまで成長してきたのかが注目です。

Q: ご本人も「負けたらクビ、勝てばホンモノ」(『Twitter』より)と背水の陣を敷かれています。

大沢: それは厳しいですがその通りだと思います。ここは応援したいですね。この相手を食ったらすごいですよ! ヤンに打ち勝つようなことがあれば、今後誰が相手でも、打撃で勝負できるといっても過言ではないと思います。

阿部大治 vs.リー・ジンリャン

Q: 今回でUFC3戦目となる阿部選手ですが、ここまでの戦いぶりをどのようにご覧になっていますか。

大沢: 阿部選手は日本で戦っていた頃にはドンドン前に出てプレッシャーをかけて打ち勝つというタイプの選手でした。自信を持って戦ってきたのだろうと思います。そして、若くして順調にUFC入りのチャンスを獲得しました。しかしUFCではこれまでのところ、勝った試合も含めて、距離が合わなかったり、テイクダウンを取られたり、なかなか思うに任せない展開になっていたのではないでしょうか。

今回の対戦相手のリー・ジャンリン(中国)は、UFCの中でもしっかりと実績を上げてきている選手、中国人トップクラスの強豪です。阿部選手にとって今回は真価が問われる一戦となるでしょう。

ジャンリンは比較的アグレッシブに仕掛けて来てくれる選手です。阿部選手はカウンターを取るのが上手なので、チャンスはあると思います。

Q: 本人のInstagramによれば、阿部選手はデュエイン・ラドウィッグ氏のジムでトレーニングを積んできたようです(注:所属選手にT.J.ディラショー、ジョセフ・ベナビデス、マット・ブラウンらがいる)。

大沢: 日本でもGENスポーツアカデミーで、安西選手や岡見選手と一緒に練習をし始めています。こだわりを捨てて、いろいろな練習を取り入れ、技術交換を行うようになっていますので、今後に期待しています。

Q: ジャンリンといえば前回のジェイク・マシューズ戦で、相手のグローブをつかんだり、目潰しのような動きで関節技を逃れたりと、良くも悪くもややダーティな攻撃が話題になりました。阿部選手はどんなふうに用心すれば良いのでしょうか。

大沢: それだけジャンリンの勝ちに対する意識が強いのでしょう。海外には、見えないところでそういうことをやってくる選手はけっこういますよ。このまま負けるくらいなら、反則上等で反撃してやろう、ということなのかもしれません。もちろん反則はいけませんが、ただ、そこを余り気にして、他のところで注意散漫になっても良くないので、対策としては逆により強い気持ちで行くしかないのではないかと思います。

Q: 他方で阿部選手は、初戦、2戦目とも、サミングをめぐってうまくアピールができず、損をしているように見えたシーンがあったので、ジャンリンのような選手との試合には何か嫌な予感もします。

大沢: 自分も試合中にレフェリーに何かをパパッと言われて、よく分からないままOK、OKと答えてしまったこともありました。海外の試合ではそういうことはありますよ。日本に来ている外国人選手も同じような目に遭っていると思う。こればかりは、仕方ないと受け入れるか、英語の勉強をするか、分かるまでしつこく聞くか、割り切るしかないですね。

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Q: 大沢さん! 最後にズバリ伺いたいのですが、日本人ファンとしては、日本人UFCファイターのまずますの活躍に期待したいのですが、どうすればもっと勝てるようになると思われますか。

大沢: あまりきれいに戦おうとしすぎないことではないでしょうか。ぐちゃぐちゃな試合、ケンカのような試合、メラメラと闘争本能が出るような試合、そういう試合をもっと見たい。武道とかスポーツマンシップもいいですが、UFCではそれだけでは勝てないと思うのです。ラウンドが終わった後でも相手をにらみ返したり、胸を突き返すくらいの勢いが必要だと思います。

ゴールラインにどうしても欲しいものがある時、きれいに走って勝とうとするのか、相手の服を引っ張ってでも前に出ようとするのか。本当に欲しいのなら、どうするべきかを考えるべきでしょう。僕はそんなふうに思っています。

【文 高橋テツヤ】

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