UFC 228見どころ:世代交代へ! ダレン・ティルの実力行使

UFC PPV 見どころ
UFC 214:タイロン・ウッドリー vs. デミアン・マイア【アメリカ・カリフォルニア州アナハイム/2017年7月29日(Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
UFC 214:タイロン・ウッドリー vs. デミアン・マイア【アメリカ・カリフォルニア州アナハイム/2017年7月29日(Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
日本時間9月9日(日)に開催されるUFC 228のメインイベントではUFCウェルター級王者タイロン・ウッドリー(アメリカ)が挑戦者ダレン・ティル(イギリス)を迎えるタイトルマッチが行われる。

ティル、ニューヒーロー誕生の時は来たか?

2017年にドナルド・セラーニを鮮やかにノックアウトし、今年5月の試合では地元リバプールでスティーブン・トンプソンに判定勝ちを収め、25歳の若さで一気にタイトルマッチに駆け上ってきたニュースターのティル。王座獲得となればマイケル・ビスピンに次いで2人目のイギリス人UFC王者となる。

「時が来た。オレが王者になることはもはや疑う余地もない。ウッドリーが史上最強のウェルター級ファイターの1人であることは確かだ。オレが倒してきた相手よりも強い選手に勝ってきている。だからといって、今回の試合の結果が変わるわけではない」

「オレはタイロンに自分の意志を押しつける。タイロンは気持ちが強いし、頭もいい。調子に乗っている間はすばらしい選手だ。でもタイロンはオレのような選手と戦ったことがない。タイロンにはオレは倒せない」

ティルは前回の試合で計量に失格したが、今回はラスベガスにあるUFCパフォーマンス・インスティチュートで早めの調整と減量に取り組んでいる。体調万全で臨む今回の試合でティルは自信を確信に変える。

長期政権樹立へ! ウッドリー

他方、今回が4度目のタイトル防衛戦となるウッドリーは前回のダミアン・マイア戦の後、負傷箇所の手術を受けたこともあって、1年2カ月ぶりの試合となる。

自信満々のコメントを連発するティルに対してウッドリーは意外にも高評価だ。

「若い選手がのしあがろうとするのを見ていると、かつての自分を思い出すよ。ティルは本当に自分のことを信じているようだね。中には他人が聞きたがることを言っているだけのヤツもいるが、ティルは本気で俺に勝てると思っている。ステアダウン(フェイスオフ)の時にも、ティルからは本気が伝わってきた。それでいい。そうでないのなら、転職した方がいい」

記者会見後のフェイスオフでは両者の体格差が著しいことが話題になった。長身の“ザ・ゴリラ”ことティルが王者を大きく見下ろす形となったのだ。しかしウッドリーは意に介さない。

「俺の身長は175cmしかない。この階級の全員が自分より大きいんだ。それでも俺は全員をテイクダウンしてきた。身体の大きさは試合の一部分にすぎない。技術、爆発力、ファイトIQ、ハイレベルでの実戦経験など、試合を左右する要因は他にたくさんある。ロビー・ローラーもポール・デイリーも、ティル以上に大柄でパワフルだった。俺はそんな男をすでに倒してきているんだ」

現在36歳、UFCチャンピオンで2番目の年長者であるウッドリーにとって、挑戦者の若さも脅威になり得るが、ウッドリーはこれも一笑に付す。

「彼が25歳だからといって、何か俺にはない強みでも持っているというのか? 若くて無敗の選手と戦うのはこれが初めてではない。ケルビン・ガステラムがそうだった。今回も、俺が若い選手の野望を台無しにして王座に座り続けてやる」

「ティルの挑戦を受けて気持ちが高まっている。おかげで俺もハードな練習ができている。まさに狂気のトレーニングを積んでいるんだよ」

女子フライ級タイトルマッチ! 試練のモンターニョ

UFC 228のセミメインイベントではUFC女子フライ級王者ニコ・モンターニョ(アメリカ)がワレンチナ・シェフチェンコ(キルギス共和国)を相手に防衛戦に挑む。

格闘技を辞めようかとも考えていたモンターニョが「せっかくだから一応最後に挑戦しておこう」というスタンスで臨んだのが女子フライ級初代女王決定トーナメントとなったジ・アルティメット・ファイター(TUF)シーズン26だ。チーム分けで指名順14位(全16選手中)と、注目度の低いスタートを切ったモンターニョだったが、フタを開けてみればローレン・マーフィー、モンタナ・デ・ラ・ロサ、バーブ・ホンチャックというベテランを連破して決勝戦に進出し、2017年12月に開催されたTFU 26フィナーレでは、指名順1位だったロクサン・モダフェリを下して優勝を遂げ、晴れて初代UFC女子フライ級チャンピオンの座に就くシンデレラストーリーを演じ切った。モンターニョはネイティブアメリカンとしての初のUFC王者である。

今回の対戦相手となるシェフチェンコは1階級重いバンタム級で実績十分の強豪だ。ホリー・ホルム、ジュリアナ・ペーニャらに勝利し、女子バンタム級王者アマンダ・ヌネスには僅差の判定負けを喫したものの、一歩も引かないスリリングな試合をやってのけた。30歳にして格闘技歴20年を誇り、ムエタイなどでこれまで獲得したベルトは17本にのぼる。

前回から適正階級のフライ級に転向、その初戦ではプリシラ・カショエイラを敵地ベレムで一方的に血の海に沈めた。なぜもっと早く試合を止めないのかと、カショエイラ陣営のセコンドがネット上で炎上したほどの圧倒的な力量差だった。

『デイナ・ホワイトのチューズデーナイト・コンテンダーシリーズ』で先頃UFCとの契約を獲得した姉のアントニーナとトレーニングを積んでいるシェフチェンコは、フライ級でのコンディションを「バンタム級時代と変わらないパワーのまま、スピードが全開になった。絶好調そのものだ」と語っている。

試合前の賭け率は挑戦者が圧倒的に有利だ。あるブックメーカーは、モンターニョ4.6倍、シェフチェンコ1.18倍という歴史的な大差をつけている。挑戦者の勝率が85%とみられていることになる計算だ。

試合前に実施された電話インタビューで、どのようにシェフチェンコに勝つのか、ノックアウトか、一本勝ちかと聞かれたモンターニョは「両方よ。一本とKOを同時に極(き)めてやるわ」と半ばヤケクソにも聞こえる答えを返している。しかし、モンターニョには下馬評を吹き飛ばしてきた実績がある。シンデレラストーリーは誰にでも演じられるものではないのだ。

「私はチャンピオンなんだから、これ以上証明したいことは何もない。ただ今回の試合では下馬評がどうであろうとも、結果としてしっかり勝ち切って、みなさんに勇気を与えたい」と語るモンターニョが、キャリア最大の難敵を迎えて勇気を振り絞る。

【文 高橋テツヤ】
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