UFC 230見どころ:手負いのコーミエか、一発逆転のルイスか、殿堂MSGでヘビー級タイトル戦!

UFC PPV 見どころ
UFC 226:ダニエル・コーミエ【アメリカ・ネバダ州ラスベガス/2018年7月7日(Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
UFC 226:ダニエル・コーミエ【アメリカ・ネバダ州ラスベガス/2018年7月7日(Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
日本時間11月4日(日)にニューヨークでUFC 230が開催される。この時期に格闘技の殿堂マディソン・スクエア・ガーデン(MSG)が舞台となるのは今年で3年連続であり、ファン垂涎(すいぜん)のビッグマッチとして今回のメインイベントに組まれたのはダニエル・コーミエ(アメリカ)対デリック・ルイス(アメリカ)のUFCヘビー級タイトルマッチだ。

コーミエが引退ロードに花を添えるか

UFCライトヘビー級王者でもあるコーミエは前回、UFC 226(2018年7月)でスティペ・ミオシッチを下してヘビー級ベルトをも奪取し、UFC史上2人目となる2階級同時制覇を達成した。試合後にはリング上でブロック・レスナーと大立ち回りを演じ、対戦機運を大いに盛り上げている。しかし、コーミエはこの試合で右手を負傷しており、レスナー戦実現まで治療に専念するものかと思われた。

「ケガの回復は100%とはいえないけれど、十分に戦えるよ」とコーミエは語っている。「正直、拳がまだしっかりとは握れない。人差し指がひどい突き指のような状態で、痛みもある」

それでも今回の試合を引き受けたことには、いくつかの理由がある。1つには、MSGという舞台の魅力だ。

「アマレス時代にMSGで戦ったことを覚えていてね。ほかの会場では感じられないような気持ちの高ぶりがあった。当時のニューヨークは何でも大きくて、街中が沸き立っているようだった。とても強い印象が残っている。だからMSGのメインイベントで戦うというチャンスは、逃すわけにはいかなかった」

さらに、自身の40歳の誕生日に当たる2019年3月20日をもって引退するとかねて明言してきたコーミエにとって、現役最後の1年を、確かな実績で締めくくりたいという気持ちもあるようだ。

「今回の試合で勝てば、今年はライトヘビー級王座防衛成功(1月にヴォルカン・オーズデミアの挑戦を退けた)、ヘビー級王座奪取、ヘビー級王座防衛を果たしたことになる。これで俺の年間最優秀選手受賞は間違いないだろう?」

そして、対戦相手がトップコンテンダーと目されるスティペ・ミオシッチではなく、ルイスだったことも理由の1つだったようだ。

「こんな短期間の準備では、スティペとの再戦は引き受けられない。スティペはどんな状況でも、いろいろな勝ち方を知っている男だからだ。ところがデリックが自分に勝つためには、ノックアウトするしかない。1つのやり方しかない相手に、俺は強いんだ。しかも、デリックにはスタミナ面で難がないとはいえない。今回は相手を見て試合を引き受けたという面はあることは認めざるを得ない」

「デリックはおそらく、早めに勝負をつけるべく、いきなりノックアウトしようと激しく攻め込んでくるだろう。勘違いしないでほしいのだが、俺だって試合ではケガなど気にせず、思い切りハードにパンチを打ちこむ。自分をごまかしてデリックとの試合に臨もうというわけではない。デリックのハートの強さは認めているからね。でも、ハートだけでは限界があるんだよ。上を目指すには、それ以上のものが必要なんだ」

パウンド・フォー・パウンドランキング1位、UFC重量級2冠王者のコーミエが、自信満々でルイスを手玉に取るべくMSGに降臨する。

反逆のブラックビースト、金星に虎視眈々

過去10戦で8つのノックアウト勝ち、今回、コーミエをノックアウトすればUFCヘビー級史上最多のノックアウト記録を打ち立てることになるヘビーヒッターのルイス。ほんの1カ月前のUFC 229では、アレクサンドル・ボルコフのスピードある打撃に苦しみ、打撃被弾数で82発の差をつけられながらも、最終ラウンド残り11秒で驚異の一発逆転ノックアウト勝ちを収めた。

試合後にはややお下品なコメントを含む、いつもながらの飾らない“ブラックビースト”節を全開に、くしくも次のように語っていたから皮肉なものだ。

「タイトルマッチにはオレにはまだ準備不足だと思う。だって5ラウンドもあるんだろ。オレは3ラウンドでギリギリのヘロヘロだ。もうちょっと長い時間、練習をしないといけないよな」

急きょ組まれたタイトルマッチについて、ルイスは次のように、ある意味とても冷静に分析している。

「ブロック戦が控えているなら、なぜその前にわざわざオレと戦わせるんだ? UFCも“DC(コーミエのニックネーム)”自身も、どうせDCが勝つと思っているからだろ。勝手にそう思っていればいい」

「オレの場合、はっきりいって、たったこの程度の練習で、ここまでやってこれたこと自体が驚きなんだ。何せ毎日、30分も練習したら、そのあと5分ほど休んで、5分ほどスマホをいじっておしまいなんだからな。腰の具合は悪いままだし、毎回太り直してほとんど糖尿病だが、それでも勝ち続けている」

「今回のような舞台には、本当はもっとふさわしいヤツがいるんだと思う。タイトル挑戦資格も、スティペの方があるんだろう。ただ、次にこんなチャンスがいつ回ってくるのか、分かったものではないからな。やれるときにやっておかないと」

「多くのファンがオレのことを信用していないことは知ってる。確かにオレにはテクニックはそれほどない。でもな、そもそもオレは自分をマーシャルアーティストだとは思っていないし、マーシャルアーティストのような練習もしていないし、実はマーシャルアーツをさほどリスペクトもしていない。オレはケンカ屋なんだ。サブミッションとか礼儀だとかリスペクトだとか、そんなことはどうでもいい。とにかく戦うだけなんだよ。オレの強みは、誰よりも強いハートなんだ」

この試合に向けて、ついに本気で1日中練習するようになり、スタミナを鍛えているというルイスは、不気味な自信をほのめかす。

「オレはDCに勝てる。何の疑いもなくそう信じている。第5ラウンドのラスト30秒になっても、そこからノックアウト勝ちしてやる。ベルトを奪取できれば、これ以上オレのパンツがずり落ちることを防止できるだろう。ベルトなんて、その程度のものだよ」

今回の大一番、信頼と実績のコーミエに一日の長があるという下馬評が一般的だ。しかし、手負いのコーミエの華々しい引退ロードが悪夢と化すのに必要なのは、たった一発のルイスの右だということもまた事実である。怒れる野獣は、どさくさ紛れに慢心と油断の王者を打ち砕かんと虎視眈々(こしたんたん)だ。

【文 高橋テツヤ】
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