UFC 231見どころ:ホロウェイ対オルテガ、ただならぬ決闘で新時代を拓く

UFC PPV 見どころ
UFC 218:マックス・ホロウェイ vs. ジョゼ・アルド【アメリカ・ミシガン州デトロイト/2017年12月2日(Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
UFC 218:マックス・ホロウェイ vs. ジョゼ・アルド【アメリカ・ミシガン州デトロイト/2017年12月2日(Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
日本時間12月9日(日)に開催されるUFC 231のメインイベントでは、UFCフェザー級タイトルマッチ、王者マックス・ホロウェイ(アメリカ)対挑戦者ブライアン・オルテガ(アメリカ)が行われる。

ホロウェイ、長期政権確立へ

2017年に絶対王者と言われたジョセ・アルドを2度にわたって下し、アルド時代を完全に終わらせ、その実力をもって“The Blessed Era(ブレストの時代)”を到来させたホロウェイ。ブレストはホロウェイのニックネームで“祝福された者”の意だ。UFC公式サイト選出2017年ベストファイターにして現在12連勝中という、見るだけでヤケドをしそうな今最もホットなファイターの1人である。

そんなホロウェイも2018年は災難続きで、実に3度の試合欠場を余儀なくされた。まず、3月のUFC 222(フランキー・エドガー戦)ではファイトウイークに足首を負傷し、そのケガも癒えきっていないであろう翌4月には、UFC 223でハビブ・ヌルマゴメドフと対戦予定だったトニー・ファーガソンが負傷したため、その代打としてライト級王者決定戦へのスクランブル出場を狙ったものの、急激な減量による体調不良でドクターストップ。そして7月のUFC 226(ブライアン・オルテガ戦)では、試合前に突然言葉のもつれなどの神経症状が現れ、またしても無念のドクターストップとなり、結局、1年間にわたるキャリア初の長期欠場に追い込まれてしまったのだ。

なお7月の発症については、その後の検査で脳障害や脱水症状ではなかったことが明らかになったものの、原因はいまだ不明だという。ただ確かなことは、今回のイベントに先立つメディカルチェックにはことごとく合格していること、そして本人がコンディションの良さを実感していることだ。

「今回のキャンプは本当にすばらしかった。各種の測定値で自己ベストを出したし、すごいニンジャムーブもマスターしたし、スパーリングも十分だ。成果を披露するのが待ちきれないよ。“ブレスト時代”の勢いをみせつけて、オレのことを忘れているファンの目を覚ましてやる」

挑戦者のオルテガについてホロウェイは、「全局面で危険な男だ。パンチでもキックでもヒザでも、相手をノックアウトできる。相手の関節を自在に取り外してしまうこともできる。そして打たれ強いアゴの持ち主でもあり、メキシコ人らしい血の熱さもある。しかも彼にはグレイシー柔術の生き様が染みついているから、死ぬまで戦うハートもある」と究極の激戦を覚悟している。

その一方で、「オルテガのことはリスペクトしているけど、ちょっとみんなが褒めすぎのような気もする。まずは実力をテストしてみたい。誰もが、今回の試合はこれまでで最も厳しい試合になるというんだけど、そんなヤツらを『え、もう終わり?』と驚かせることが、今回のオレのゲームプランだ」と、あふれる自信を隠しきれないホロウェイ。そして、オルテガ戦の先を、次のように見据えているのだ。

「オレはもうベルトは取ったので、次の目標はパウンド・フォー・パウンド・ランキングで1位になることだ。そのために2階級制覇をしろというのなら、やってやる。ヘビー級に転向しろというならそれでも構わない。オレには長きにわたって、王としてどう猛に君臨し続けるつもりなんだ」

オルテガ、捨て身の決意

MMA戦績15勝0敗のオルテガは、現在6試合連続でKOか一本で相手をフィニッシュして勝利を飾っており、触れれば斬れるような鮮烈な試合を連打している。前回は2018年3月のUFC 222に急な代打で出場し、これまでフィニッシュされたことがなかったフランキー・エドガーを第1ラウンド、ものの見事なアッパーカットでノックアウトしてみせた。

「判定には興味がない。僕の目的はただ1つ、相手をフィニッシュすること。僕はUFCでは、判定決着なしをモットーにしている」と語るオルテガは、今回のホロウェイ戦を次のように展望している。

「僕たちはどちらも好戦的だ。誰も判定決着など望んでいない。お互いをフィニッシュしあうことになる。つまり、お互いを痛めつけあうことになる。僕にとっては、それこそが最高の試合なんだ。彼は王者だけど、それでもガンガンくる。中にはベルトを取ると、安全運転の試合しかしない選手もいるけれど、ホロウェイは全力でくる。こちらも全力で行く。クレイジーファイトになるケミストリーがあるんだ」

「彼の強みは打撃と、レスリングの防御、そして弱みはグラウンドだ。彼は柔術もできるが、寝技となると少しピンとこない。最初からMMA用の柔術、相手が殴ってくることを前提とした柔術をやってきた自分とは違っている」

「今回の試合では、何か良くないことが起きてしまうかもしれないし、これが僕の最後の試合になるかもしれない」と壮絶な決意を口にするオルテガ。ここまで無敗でタイトルショットまで上り詰めてきたオルテガにとって、勝てば念願のベルト奪取、負ければ初黒星の屈辱という剣が峰だ。

7月に1度組まれ、延期されて今回ついに実現をみる旬の2人によるフェザー級最高峰の戦いは、歴史に残るヤバい激戦となる公算が高い。ファイトファンもそうでない人も、決して見逃してはならない戦いになりそうだ。

フライ級の女帝は拳が決める

UFC 231では新たな女子フライ級チャンピオンも誕生する。元女子ストロー級クイーン、5回連続防衛の絶対王者ヨアンナ・イェンドジェイチェク(ポーランド)と、フライ級トップコンテンダー、ワレンチナ・シェフチェンコ(キルギス)による王者決定戦だ。

両者の間には、約10年前にムエタイで3試合を戦い、3回ともシェフチェンコが判定勝ちを収めた歴史がある。イェンドジェイチェクは、当時の自分と今の自分はもはや生物として全く別物だと主張しているが、シェフチェンコは「すべての過去の経験は今につながっている。今回の試合にも影響は生じる」と自信を見せる。

イェンドジェイチェクにとって今回が、ストロー級からフライ級に階級を上げての初戦になる。逆にシェフチェンコはフライ級創設と同時にバンタム級から階級を下げており、すでにフライ級で勝利も収めている。減量苦から解放されてコンディション万全だとするイェンドジェイチェクに対して、重い選手と戦う苦しさを経験させてやると腕を撫すシェフチェンコ。両者の言い分がことごとく反発しあったまま、UFC女子部門屈指のストライカー同士の対決は運命のゴングを迎えることになりそうだ。

【文 高橋テツヤ】
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