UFC 234見どころ:石原夜叉坊の起死回生、「生き様をぶつける。自分の拳で人生を変える」

UFC PPV 見どころ
UFC 234:石原夜叉坊
UFC 234:石原夜叉坊
日本時間2月10日(日)に開催されるUFC 234には石原“夜叉坊”暉仁が出場し、カン・ギョンホ(韓国)と対戦する。



対世界で生き残る! 石原の剣が峰

昨年はホセ・キノネスとピョートル・ヤンを相手に連敗し、しかもヤンにはキャリア初のTKO負けを喫して剣が峰に立つ夜叉坊。ここからの再浮上を期するためにも、どうしても勝ち星が欲しい7カ月ぶりの復帰戦となる。

試合前の調整を日本で行い、コンディションも順調だという石原は、「世界と闘う準備はできた。ここでUFCとの契約更新ができないような試合をしてしまった場合には、もはやこの先、格闘技を続けるつもりはない、と言えるくらいの準備はできています」と勝利への固い決意を力強く語っている。

戦績10勝6敗2分、10勝のうち8がノックアウト勝ちというストライカーの石原に対し、対戦相手のカンは戦績14勝8敗1ノーコンテスト、14勝のうち10が一本勝ちというグラップラーだ。UFCでは日本の田中路教と清水俊一に勝ったことがある。石原はカンについて、「何でもできるバランスのいいファイターだとは思いますが、自分の強い部分で闘えば問題ありません」と、自分の戦いを貫くことを宣言している。

“ミスター・パーフェクト”のニックネームの通り、なかなかにハンサムなビジュアルのカンであるが、この点がしゃくに障らないのかを尋ねたところ石原は、「どっちがかっこいいと感じるのは見てる人に委ねますが(笑)、ケージの中はオレの時間。オレはそこでオレらしく光ってみせるだけです」と、愚問だとばかりに余裕を持って受け流した。

奇しくもUFC 234の舞台となるメルボルンのロッド・レーバー・アリーナはつい先頃、大坂なおみ選手が全豪オープンテニスで優勝を飾った日本人にとっては験(げん)のいい会場だ。

「対世界の戦いはどんなスポーツでも盛り上がる。そこにたどり着くまでのプレーヤーたちの生き様のぶつかり合いだからだと思う」と語る石原は、自分の生き様もぜひ見届けてほしいと、ファンに次のように熱く語りかけてくれた。

「自分を信じて、すべてをぶつけて戦います。自分の拳で人生変える瞬間を見てほしい。何かが伝わると思う。応援よろしくお願いします」

日本のUFCファンは心をあわせて、石原の激闘に力を送ろう。

地元がい旋、ウィテカーの晴れ舞台

UFC 234のメインイベントを飾るのは、ロバート・ウィテカー(ニュージーランド)のミドル級王座防衛戦、迎え撃つ挑戦者はケルヴィン・ガステラム(アメリカ)だ。

2017年7月のUFC 213でヨエル・ロメロを下してミドル級暫定王者になったウィテカー。その5カ月後、ジョルジュ・サン・ピエールの王座返上を受けて、正王者にスライド認定された。2018年2月のUFC 211ではオーストラリアにルーク・ロックホールドを迎えての初防衛戦がマッチアップされたが、あいにくウィテカーがスタフ感染症、その後、続けて水ぼうそうを患い無念の欠場を余儀なくされた。2018年6月のUFC 225で行われたロメロとのリターンマッチは、ロメロの計量失格のため試合直前にノンタイトル戦に変更され、ウィテカーが判定勝ちを収めている。

ミドル級で無敗、現在9連勝中と絶好調のウィテカーであるが、そんなこんなで意外にも今回の試合が初の防衛戦となる。そして現在オーストラリア在住のウィテカーにとって、ベルトを巻いた晴れ姿を母国のファンにお披露目(ひろめ)できる機会がようやく来たのだ。

対するガステラムは、ブラジルでホナウド・ソウザ、ビトー・ベウフォートを平気でKOしてしまうという、アウェーでの戦いにも強いファイターである。「第1ラウンドでのKOを予告しておこう。サン・ピエールやら暫定王座やらのせいで荒れてしまったミドル級に、オレが秩序を取り戻す。試合後にはたくさんのオーストラリア人が怒り狂うことだろう」と自信を見せる。

ウィテカーは「この試合にたくさんの技術と熱意を持ち込むつもりだ。何しろ地元で負けるわけにはいかないからね」と、前回欠場の無念を晴らすべく腕を撫している。

変幻自在! 新旧格闘マエストロの激突

セミメインイベントには、超新星イズラエル・アデサニヤ(ナイジェリア)と、伝説の最強王者アンデウソン・シウバ(ブラジル)が拳を交えるドリームマッチが組まれている。

昨年、UFCデビューを飾るや、4戦4勝2KOの戦績でUFC公式サイト選定2018年ルーキー第1位を獲得したアデサニヤ。長い手足から繰り出される変幻自在でクリエイティブな打撃、底が見ないポテンシャルの高さ、磁力のようなカリスマ性を持ち合わせるアデサニヤは、今MMAファンの間で最も“バズっている”選手の1人だ。

一方、かつて実に2,457日間にわたってミドル級王座を守り続け、前人未踏の16連勝というUFCの連勝記録を保持しているシウバ。43歳になった今でも、何をしてくるのかわからない神秘性はかつてのままだ。強すぎて骨のある対戦相手に事欠いていた全盛期のシウバは、「自分のクローンと戦ってみたいものだね」とたびたび発言していたものだ。

「シウバのスタイルを真似(まね)ることから始めたことは確かだ」とアデサニヤは認めている。「クローンと戦いたいというなら、自分こそ適役だと思う。でも俺はクローンより強いよ。だって、シウバの研究をしすぎて、おそらく本人よりも俺の方がシウバの戦い方には詳しくなっているほどだからね」

「自分の伝記映画ができるとしたら、この試合がハイライトシーンになる。何しろ自分をこの道に招き入れた人を倒すんだからさ。ここからは俺がシウバ時代を引き継いでいく。今回の試合は自分にとってタイトル以上の意味がある」

現在はニュージーランドに移住しているアデサニヤにとっては、ホームゲームで出藍の誉れを果たす絶好のチャンス、他方でシウバにとっては、時計の針を巻き戻し、タイトル戦線に最後の名乗りを上げるチャンスだ。出会うべくして出会った両選手による戦いは、めくるめく魔法のような時間になることは間違いない。

地元の英雄のがい旋に、前売り券1万5,000枚が発売開始後8分間で完売したという今回のUFC 234。思えばUFC最多観客動員記録5万6,214人を動員した『UFC 193:ラウジー vs. ホルム』もこの地で行われており、メルボルンは今やすっかり世界有数のMMAシティの様相だ。猛暑が伝えられるオーストラリアからお届けする今年第一弾のペイ・パー・ビューイベントは見どころ満載、見逃し厳禁だ。

【文 高橋テツヤ】
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