己の道を突き進む人気ファイター、デリック・ルイス

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UFCファイトナイト・ハリファックス:デリック・ルイス vs. トラヴィス・ブラウン【カナダ・ノバスコシア州ハリファックス/2017年2月19日(Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
UFCファイトナイト・ハリファックス:デリック・ルイス vs. トラヴィス・ブラウン【カナダ・ノバスコシア州ハリファックス/2017年2月19日(Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
日本時間6月11日(日)にニュージーランドで開催されるUFCファイトナイト・オークランドのメインイベントでマーク・ハントとの対決に挑むデリック・ルイスは、ガブリエル・ゴンザーガやトラヴィス・ブラウンからフィニッシュを決めた試合を含め、現在6連勝中だ。

ルイスはヘビー級ランキングでハントより1つ順位の高い6位につけている。前王者ケイン・ヴェラスケスの復帰がいまだ決まっていないことを考えると、今回、ルイスが見事な試合内容でハントに勝利すれば、今年終盤にもタイトル挑戦権が与えられる位置まで順位を上げることは十分に可能だろう。

トップレベルで戦うプロアスリートとして成長を続け、白星を重ねるごとに知名度や注目度を高めるルイス。本来ならば子どもたちから“スーパースター”として認められてもおかしくないはずなのだが、ルイス家の事情は異なるようだ。

子どもたちは今までも自身のすごさを認めてこなかったと穏やかな口調で語るルイスによれば、先月に『Fox Sports PROcast(Foxスポーツ・プロキャスト)』で息子の顔を誕生日ケーキに押し付ける動画が紹介されたことが子どもたちのさらなる不満につながっているようだ。

イタズラ動画が人気を集めていることについて、ルイスは「息子にはもうパーティーには招待しないと真面目な顔で言われたよ。本気で怒っているみたいだ。でもオレたちはいつもお互いにイタズラを仕掛けあっているからね」と話している。

今回のイタズラ動画は3年の間に無名の存在から一気にスター選手に急成長を遂げたルイスがここ数カ月で生み出してきた数あるソーシャルメディア人気作の1つに過ぎない。そんなルイスは今週末、スパーク・アリーナを舞台にハントとの大一番に挑む。

2014年4月にオクタゴンデビューした当初は強力ながらも能力に限りがあるファイターと評価されていたルイスだが、地元ヒューストンで行われたビクトル・ペスタ戦(UFC 192)では2ラウンド終了まで圧倒されながらも3ラウンドで一気に巻き返し、圧巻のフィニッシュで評判を上げた。

2016年12月にニューヨーク州オールバニでシャミル・アブドゥラヒモフと激突した際にも、ルイスはレスリング技術を駆使されて試合のほとんどを相手の優勢で進められてしまったが、わずか数分で形成逆転する能力を発揮。メインイベントデビューを飾ったこの一戦の序盤15分は完全に相手ペースだったものの、4ラウンド残り2分でケージ際でのテイクダウンを成功させたルイスは序盤の損出を取り返すかのようにマウントからの連打で一気に攻め込み、フィニッシュを決めてみせたのだ。

ルイスはカナダ・ハリファックスで挑んだブラウン戦でも、1ラウンドから強烈なボディキックにより肋(あばら)の骨を2本骨折しながら、3ラウンドでブラウンからノックアウトを奪うという果てしない底力を披露している。

試合を重ねるごとに自信をつけている様子のルイスは、ブラウン戦での一進一退を次のように振り返った。

「結局のところはハートが全て。どれだけ危険な状況にいようとも、勝つ方法はあるということを教えてくれた試合だった。オレには常に一発がある」

現在、ルイスが保持する6連勝の記録はヘビー級トップとしての実力を証明するのに十分な数字だと言えよう。

連勝記録などの栄誉がファイターのモチベーションになることは多いはずだが、32歳のルイスにとって記録や称号はまったく意味を成さないという。ルイスが気にかけるのは、家族を養っていくことだけなのだ。ジョーク混じりのトーンで話をすることが多いルイスも、ここばかりは真剣な眼差しで語った。

「最強でいようなんて正直考えていない。ヘビー級最強になろうなんて考えていないし、オレが欲しいのは金だけだ」

少しでも多くの賞金を獲得するために強敵を倒していくのがルイスの考え方のようだ。ルイスが今後もヘビー級の強者を次から次へとなぎ倒していけば、交渉を有利に進めるための立場を手に入れられるだろう。

「ランキング上位の選手と試合をしておけば、ファイトマネーを交渉する時に自分が提示した金額を承諾してもらえる可能性が上がるはずだ。オレがトップランキングの選手と戦いたい理由はそれだけ」

「ハント戦の後にタフな選手と試合できるチャンスがあれば、試合は受けるよ。でも、ハント以上にタフなファイターはいないと思うけどな。(アリスター)オーフレイムは前戦に勝ったけど、打たれ弱い」

真面目な顔をしたルイスは個人的として、そしてプロとしての人生についてこう述べている。

「毎日オレは座って自分の周りを見渡すんだ。正直まだ自分の置かれている現実が信じられないくらいだ。感謝の気持ちを忘れないようにしている」

「自分の子どもを見ながら、前までの暮らしを考えたりする。歩いての移動だったり、他人に生活費を払ってもらったりな。それが今は世界最大の格闘技団体で戦うことができている」

「これ以上オレに必要なものはない」

いや、ひとつだけあるだろう。そう、来年の息子の誕生日パーティーの招待状だ。
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