人々に希望を与える43歳の“老犬”ハント

UFCファイトナイト
UFCファイトナイト・オークランド:マーク・ハント【ニュージーランド・オークランド/2017年6月8日(Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
UFCファイトナイト・オークランド:マーク・ハント【ニュージーランド・オークランド/2017年6月8日(Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
日本時間6月11日(日)にニュージーランド・オークランドのスパーク・アリーナを舞台に行われるデリック・ルイス対マーク・ハント戦の様子がハリウッド映画の題材だとしたら、こんなオープニングになるのではないだろうか。

フェードインで画面に現れたのはロッカールームに座るベテランファイター。うつむく戦士の手にはテープが巻かれ、その上からグローブをつけていく。テレビから流れるのは、アナウンサーが興奮気味にメインイベントの開始を告げる声。

アナウンサーはこの試合がもう決して若くない地元スターの凱旋試合だと場内に伝える。前戦での苦い敗戦を払拭するためにも勝利を必要とするこのファイターの対戦相手は、その驚異的な破壊力で直近6試合に勝利し、うち5試合でフィニッシュを決めている強敵だ。

さらにアナウンサーは、これが地元の英雄にとって最後の試合になってしまう可能性について推測する。15年にわたり50試合以上に出場してきた彼にとって、この試合が友人や家族の前で引退を表明する機会となるのだろうか?

テレビの音は次第に観客の声援によってもみ消されていく。地元スターの登場を待ちわびる観客の声援は、その名前を呼ぶたびに大きくなる。

ついに腰を上げた男は、もう一度戦うために熱狂状態のアリーナへ足を踏み入れた――(暗転)。

年齢、アリスター・オーフレイム戦でのKO負け、強敵との対戦、そして引退にまつわる疑問、これらの項目はすべて今週末に行われるUFCファイトナイト・オークランドのメインイベントをより興味深くさせるストーリーの数々だ。ルイスとの決戦を前に、ハント自身もこれらのことを考えただろう。

UFCでの15戦目を目前に、ベテランKOアーティストは自分の置かれている状況や引退に関する質問をこころよく受ける一方、今後の具体的なプランについては明確な答えを示していない。引退という一筋縄ではいかない概念をあらゆる側面から検討したというハントだが、まだ判断は下していないという。

「これが最後の契約になると思っている。でも、今も世界トップクラスの選手と戦えているし、オレはまだまだやれる。歳をとってきたからといって引退するのは違うと思う」とハントは話した。

「ニュージーランドで戦うのは最後になるかもしれないな。これが引退試合になる可能性もある。誰にもオレが引退する時期を指図されたくないし、引退する時は自分の好きなようにやらせてもらう」

続けてハントは興奮を抑えながらこう述べている。

「戦っている時ほど気持ちが良いことはない。精神的や肉体的な過労、選手としての浮き沈みも含めて、戦うこと以上にリアルなものはないんだ」

ケージの中で戦うことに対する愛着は十分にあるものの、43歳のハントは決して勝ち負けにこだわらない男だ。そんなハントは自身の年齢や、いかに長期にわたって巨大な拳を振りますことで生計を立ててきたかについて冗談まじりに語っている。

本人言うところの“老犬”が世界最高峰の団体で戦い続けることで、どれだけ難しい状況に置かれても必ず打開策はあることを人々に示したいというのがハントの考えだ。

ハントは自伝の『Born to Fight(ボーン・トゥ・ファイト)』でも生きることの難しさについて触れている。

「オレはしっかり証明してきた。神にどんなカードを与えられようと、人間は変わることができるんだ」

「何か変えたいと思うことがあるなら、自分から変えるための努力をしないといけない。オレはそうやって自分を変えた。これは証明済みだ。女だろうと男だろうと、誰でも変わることができる。格闘技を通してじゃなくてもいい。何を使うかは自分で探すしかない。自分に与えられた才能を発掘して利用するんだ」

身をもって人が変われることを証明し、多くの人の手本となっていることに対してハントは次のようにコメントした。

「すごく良い気分だ。理にかなっていると思うし、価値のある行動ができていると思う。お金のためではないんだ。他人を助けるのは恩返しの一環。それをやり続けることに意味があると思う」

さらなる高みを目指すことに集中するハントは、プレッシャーを感じることなくオクタゴンに上がれるという。それは今週末、 生まれ故郷オークランドで熱狂的なファンの前で試合をする際も変わらない。

「自分の生まれた場所で試合するなんてな。まったくプレッシャーを感じていない。ひたすらワクワクしているくらいだ。この年齢まで戦えていることに感謝している。勝っても負けても、最高の試合ができればオレは幸せだ。試合の結果がどうなろうと関係ない」

「世界を良い方向に変えようとすることは、すごくポジティブなことだ。ネガティブなものをすべてポジティブに変えながら人々を助けていけたらいいなと思っているよ」
Facebook X LINE

オクタゴンガール
オフィシャルショップ
FANTASY