UFCファイトナイト・フィラデルフィア見どころ:濃密な激闘の予感、ゲイジーが肉を切らせて骨を断つ

UFCファイトナイト 見どころ
UFC 218:エディ・アルバレス vs. ジャスティン・ゲイジー【アメリカ・ミシガン州デトロイト/2017年12月2日(Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
UFC 218:エディ・アルバレス vs. ジャスティン・ゲイジー【アメリカ・ミシガン州デトロイト/2017年12月2日(Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
日本時間3月31日(日)に開催されるUFCファイトナイト・フィラデルフィアのメインイベントでは、エドソン・バルボーザ(ブラジル)とジャスティン・ゲイジー(アメリカ)の一戦が行われる。

データが語るゲイジーの狂乱ファイト

2017年に17勝0敗(14ノックアウト)というMMA戦績をひっさげてUFC入りしたゲイジー。そのファイトスタイルは一言、殴る蹴るの激闘だ。

「ゴングが鳴ったらやることは2つに1つ。身体を丸めて自分を守るのか、命を投げ出して戦うのか。オレは戦うことを選ぶ」とゲイジーは語っている。

「オレは過剰で、濃い戦いをする。オレは相手に休む間を与えない。一息つきたいと思っている時ほど、一息つかせない。オレのプレッシャーの強さは、実際に戦ってみるまではけして分からない」

ゲイジーの過剰さは、データにも現れている。これまでの試合でゲイジーが打撃を相手にヒットさせた回数は、1分あたり実に平均8.53回だというのだ。UFC屈指の速射砲王者マックス・ホロウェイで6.90回、あのクリス・サイボーグで6.76回であることを考えると、ゲイジーの手数の多さと打撃の正確さが尋常ではないことが分かるだろう。

しかし、相手との距離を詰めて殴りに行く以上、殴り返されることにもなる。UFC参戦以降のゲイジーは、キャリア初の黒星も経験、UFC戦績は2勝2敗だ。ゲイジーも、「これまではこの戦い方でうまくやってきたが、UFCではやられてしまうこともある」と認めている。

これもデータが裏打ちしている。ゲイジーが相手から打撃をもらう回数は、1分あたり平均10.54回だ。自分が殴るよりも、2発多くパンチを食らっている計算になる。肉を切らせて骨を断つとはまさにこのことだが、相手がエディ・アルバレスやダスティン・ポワリエの場合には、これではさしものゲイジーも倒れてしまうのも無理はない。同じ統計が、ホロウェイの場合は4.03、サイボーグは1.92だ。やはりゲイジーは、もう少しディフェンスを固めて、慎重なファイトをする方がよいのではないのだろうか。

太く短く完全燃焼、ゲイジーイズム

そんなことはとっくに分かっているはずの、ゲイジーの長年の担当コーチ、トレバー・ウィットマンは、それでもゲイジーイズムを尊重するしかないのだという。

「確かに仕留められてしまうこともあるが、それもあえてやっていることなんだ。もし判定決着になったりしたら、ゲイジーは自殺してしまうかもしれない。ゲイジーの考え方は、勝ったとしても判定だけはダメ、どちらかが失神するのをお見せしないと、というものだ」

「チャンピオンを目指している選手もいるだろうし、人間として成長したくてマーシャルアーツをしている人もいるだろう。それぞれに目的や理由がある。ゲイジーの場合には、一番面白いファイターになることが目標なんだ」

まさに命を削る戦いを繰り広げるゲイジーは、それほど長く現役を続けるつもりはないことも明言している。2試合前のポワリエ戦後には、「残りは5試合だな」と語っている。

3月のUFCはウェルター級のビッグマッチが連打されており、先々週はホルヘ・マスヴィダル、先週はアンソニー・ペティスが、相手を硬直失神させるほどの猛烈なノックアウト勝利を飾っている。短く、太く、完全燃焼しようとしているゲイジーと、ありとあらゆる蹴り技で残忍なノックアウトの山を築いてきたバルボーザの一戦が、より壮絶でヤバすぎる幕切れを迎えないとしたら、その方が驚きであろう。

ファイティングママの矜恃(きょうじ)を胸に

UFCファイトナイト・フィラデルフィアのメインカードには、“カラテ・ホッティ”ことミシェル・ウォーターソン(アメリカ)が登場、カロリーナ・コバルケビッチ(ポーランド)を迎え撃つ。

前回の試合(2018年10月、UFC 229)で勝利を収めたウォーターソンは、娘のアラヤちゃんをオクタゴンに上げ、これまでずっと心に秘めてきた言葉を世界に向けて口にした。

「私は母親として初めてのUFCチャンピオンになりたいんです!」

UFC登録配下選手全585名のうち、女子選手は90名、その中でランキング10位内に入ったことのある“ママファイター”はキャット・ジンガノ、サラ・マクマンら6人いる。女子ストロー級ではウォーターソンが唯一のファイティングママだ。

「ファイターは、完璧に自分勝手でなければできない。でも母親は、完璧に無私無欲でなければできない」とウォーターソンは両立の難しさを語っている。

「だからファイターとママを両立しようとすると、マルチタスク人間になるしかないの。かつては練習中でも自分の気持ちが10カ所くらいに散らばっていることがあった。でも、それでは本当にチャンピオンを目指すことなどできない。だから私は考え方を変えたわ。今はとにかく、目の前のことだけに気持ちを集中させるようにしている」

2011年に出産した後は、プロボクサーだった夫が「ミシェルの方がファイターとしての才能が100倍あるから」として、ファイターとしてのキャリアを諦め、会社員になって安定した収入を得つつ、家事育児もシェアしながら、ウォーターソンの打撃のスパーリングパートナーを務め、試合ではセコンドとして付き添っている。夫のそんな犠牲的なサポートも得て、2013年にウォーターソンはInvicta FCのアトム級タイトルを獲得、そして2015年からはUFCに参戦している。

ウォーターソンは、娘には試合を全部見せているのだという。

「誕生会の日をずらしたり、学校行事に行けなかったりと、娘にも犠牲を強いている。だから娘には、試合を直接見せることで、私のしていること理解してほしいし、学んでほしい。幸い、娘は楽しんでくれている。学校の先生にも、私のことを”カラテ・ホッティ”ですと紹介してくれたしね(笑)」

8歳のアラヤちゃんは、いつもとは別人のママが、殺し屋のような表情で登場する入場シーンが大好きで、客席で絶叫して応援しているのだという。

現在ランキング9位のウォーターソンがチャンピオンになる道は現実的にはまだ遠い。しかも今回の対戦相手は、タイトル挑戦歴もある試合巧者、ランキングも6位と格上のコバルケビッチだ。それでも、まず目の前の試合に集中して勝ちきること、それがファイティングママの矜恃なのだ。

【文 高橋テツヤ】
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