UFCファイトナイト・オタワ見どころ:タイトル奪取に本腰、“カウボーイ”セラーニのファイナルラップが加速する!

UFCファイトナイト 見どころ
UFCファイトナイト・デンバー:ドナルド・セラーニ vs. マイク・ペリー【アメリカ・コロラド州デンバー/2018年11月10日(Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
UFCファイトナイト・デンバー:ドナルド・セラーニ vs. マイク・ペリー【アメリカ・コロラド州デンバー/2018年11月10日(Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
令和を迎えて第一弾となるUFCイベントは日本時間5月5日(日)に開催されるUFCファイトナイト・オタワだ。メインイベントでは“カウボーイ”ことドナルド・セラーニ(アメリカ)と“レイジング”ことアル・アイアキンタ(アメリカ)のライト級マッチが予定されている。

“いつ何時、誰とでも”は返上、息子に誓う王者への道

現在35歳、MMA戦績47戦35勝11敗1ノーコンテスト、UFC戦績30戦22勝8敗を誇る大ベテランのセラーニ。UFCでの試合数30はジム・ミラーの32に次いでUFC史上第2位、勝利数22はジョルジュ・サン・ピエール、マイケル・ビスピンを抑えてUFC史上第1位というレジェンド中のレジェンドだ。前回の試合では、新進気鋭のアレックス・ヘルナンデスを下してライト級復帰戦を白星で飾っている。

「記録ならいろいろ作ってきた。ただ、オレはまだベルトを取っていない。それが引退までにやり残していることだ。オレは本気だぞ」

多くのファイターが年間2、3試合出場が普通であるところ、セラーニといえば年間12試合出場を理想に掲げ、タイトルマッチにたどり着くための計算や戦略も全く無頓着なまま、とにかくたくさん試合をしてたくさん稼ぐことをテーマにキャリアを歩んできたことでおなじみだ。しかし昨年、マイク・ペリー戦に向けたキャンプでセラーニは、“いつ何時、誰とでも戦う”ポリシーを棚上げし、これからはタイトルマッチにつながる試合だけを厳選して行うことを宣言している。

「このことはコーチやチームメイト、UFCのデイナ・ホワイト会長にも伝えてある。みんな、えっ、今なんて言った? という感じで絶句していたよ」

「チャンスはなかなか来ないからね。仮にオレがライト級で3連勝して、ランキングで2位くらいになって、その時にチャンピオンがケガで来年まで戦えない、というのなら、オレは待つことにする」

セラーニのこんな心境の変化には、息子デンジャー君の誕生も大きく関わっている。

「ペリー戦直前に、息子がカウボーイの格好をしている写真を見せられてね。あれにはやられた。完全に火がついたんだ。子供ができると戦う理由が増えると聞いてはいたが、これほどまでとは思わなかったよ。今のオレは猛烈にハングリーになってる。もう後戻りはしない。オレに目にはもう、暖炉の上に飾られているベルトが見えているんだ」

対するは、かつての悪童ぶりは影を潜め、すっかり大人になったアイアキンタだ。前回はランカーのケビン・リーに完勝、安定した強さを満天下に見せつけたアイアキンタは、「セラーニのキャリアが終えんに向かっていることを露呈させてやる。それがこの試合の目標だ」と意気込んでいる。男同士の意地の張り合いと、ベテラン同士のだまし合いがせめぎ合う、大人の怖い戦いを堪能できそうだ。

意識高すぎセオドル、母国で真価を問われる一戦

カナダの首都オタワを舞台とする今回のイベントに出場する11人のカナダ人ファイターのトリを務める格好でセミメインイベントに登場するのは、“ザ・スパルタン”のニックネームを持つギリシャ系カナダ人、エリアス・セオドルだ。これまでのMMA戦績18戦のうち12戦をカナダで戦い、しかもカナダでは負け知らずである。エリック・アンダーズを下した前回の試合も、自らの出身地トロントで開催されたUFC 231でのことだった。

対戦相手を惑わせる一見ぎこちないような動き、そして変則的なタイミングの攻撃が印象的なセオドルは、自ら「相手が予測できないことを目標に練習をしている」と語る変幻自在のファイトスタイルが持ち味だ。

広告マーケティングを専攻していた大学生時代にMMAのレッスンに参加したことをきっかけにプロファイターに転じたセオドルは、他の格闘技のバックグラウンドを持たない、いわゆる“MMAネイティブ”の選手だ。担当コーチは、「彼の強みは、伝統的なマーシャルアーツの基盤がないところにある。だからこそ、学習のスピードが速いんだ。そして現時点では、これまでにマスターしてきた技術を1つにまとめる段階に来ている」と語っており、独自のセオドル流スタイルが完成の域に達していることを示唆している。

TUF(ジ・アルティメット・ファイター)ネーションズ優勝、現在3連勝中で、UFCミドル級13位にランクインするなど、MMAファイターとして確かな実績を上げてきたセオドルだが、ハンサムな顔立ち、美しい長髪を存分に生かし、シャンプーのブランドアンバサダーを務めたり、映画やリアリティショーに出演したりと、タレント活動にも積極的に取り組むなど、活動の幅もまた変幻自在だ。加えて、ハーレクイン・ロマンス小説の表紙モデル、スタンドアップ・コメディアンにも挑戦、サムスン、アンダーアーマー、おもちゃ会社のマテルといった多様な企業とスポンサー契約締結など、まるで意識高すぎビジネス系タレントのような多動力を発揮している。

2018年には、アメリカの女子格闘技団体Invicta FCで、ラウンドガールならぬラウンドボーイを務めたことで話題を呼んだ。

「ラウンドボーイの活動については、正直、7対3で応援してくれる人が多かったという印象だった。僕はいつもそんな感じで楽しんでやっている。ただ、見ていて落ち着かない気持ちになる人がいることは想定内だった。僕としては、ラウンドガールが良くて、ラウンドボーイが良くないのはなぜなのかを考えるきっかけにしてほしいんだ。人は自分のコンフォートゾーンを超えていくことで、成長できるからね。僕は自分でも、そんなふうにしているつもりだ」

「男性の格闘家が美容的な意味で髪の話をするというのは、スキンヘッドにタトゥーというステレオタイプに対する僕なりの差別化戦略だ」「僕は格闘技の先のキャリアを見ている。試合で勝つことは、次のスポンサーとのミーティングにつながる」「試合で鼻を折られたりしたら、映画の仕事が台無しになるだろ」などとあっけらかんと語るセオドルには、もっと格闘技に真剣に取り組むべきだと批判の声もある。しかしセオドルの素顔は、これまでに顔面を合計95針も縫っているという、被弾をいとわない激闘派なのだ。連敗脱出を期すランキング8位、強敵デレク・ブランソン(アメリカ)を母国に迎えて、セオドルがどんな多動力を発揮するのか、興味は尽きない。

【文 高橋テツヤ】
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