UFC 237見どころ:世界を変えるための戦い、最若年王者ナマユナスの逆境からの反撃

UFC PPV 見どころ
UFC 217:ヨアンナ・イェンドジェイチェク vs. ローズ・ナマユナス【アメリカ・ニューヨーク州ニューヨーク/2017年11月4日(Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
UFC 217:ヨアンナ・イェンドジェイチェク vs. ローズ・ナマユナス【アメリカ・ニューヨーク州ニューヨーク/2017年11月4日(Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
日本時間5月12日(日)にブラジルのリオデジャネイロで開催されるUFC 237のメインイベントでは、チャンピオンのローズ・ナマユナス(アメリカ)が、挑戦者にジェシカ・アンドラージ(ブラジル)を迎え撃つUFC女子ストロー級タイトルマッチが行われる。

ローズがしかめっ面で戦い続ける理由とは

ナマユナスは2017年11月にニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで行われたUFC 217で、当時の絶対女王ヨアンナ・イェンドジェイチェクに挑戦し、圧倒的不利との下馬評をはねのけ、第1ラウンドでチャンピオンをノックアウト、女子ストロー級王座を獲得した。イェンドジェイチェクにとってはプロMMAファイターとして初の黒星、一方ナマユナスにとってはキャリア初のノックアウト勝ちという、UFC史上に残る大番狂わせだった。2018年4月のUFC 223での再戦でも、ナマユナスが危なげなくユナニマス判定勝ちで返り討ちにしてベルトを防衛している。首の古傷の治療とリハビリを経て、今回はナマユナスにとって13カ月ぶりの試合復帰となる。

26歳にして現役最年少UFCチャンピオンのナマユナス。父親は芸術家、母親はピアニスト、祖父はプロレスラーという芸術・スポーツ家系に育った(ナマユナスもピアノが達者だ)。ニックネームの“サグ・ローズ(殺し屋ローズ)”の由来について本人は、「子供の頃、私は近所でただ1人の白人の女子で、背も低くて、それなのに誰よりも強がっていて、いつもしかめっ面をしていたから、友達からそんなあだ名をつけられた」と明かしている。

しかめっ面ナマユナスはかねて、メンタルヘルスに問題を抱えていることを公表している。

「メンタルヘルスの問題は、物心がついた頃から私たち家族全員の問題だった。父は統合失調症で、私が16歳の時に自殺した。私も悪い夢や昔の記憶に苦しんだこともある。これまでの人生で、試合よりもうんとひどい経験を乗り越えてきた」

そしてナマユナスは自身の活動を通して、メンタルヘルスの問題がより広く社会で認知され、正しく理解されることを目指したいと語っている。

「私は悪魔に打ち勝ち、こうしてチャンピオンになった。だからこそ私は、同じ問題で苦しんでいる人たちに、そんなことはすべきではないと人から言われても、自分の好きなこと、自分が幸せになれることなら何でもやっていいのだ、ということを伝えたい。メンタル面で問題があることは、やりたいことをしてはいけないとか、人として成長してはいけない、という理由にはならない。UFCチャンピオンとして私に影響力があるのなら、試合をきっかけに、メンタルヘルスについて多くの人に知ってもらいたい」

「他人の足を引っ張るのではなく、他人の背中を押すことが重要だと思う。今は社会にも、格闘技界にも、ネガティブなことが多すぎる。私もかつては怒りを抱えていたけれど、他人を憎んだり、悪口を言ったりすることにはもうウンザリ。私は世界をもっとポジティブなものに変えていきたい。今の私には、戦うための理由がある。だからこそ、より自分らしくいられていると思っている」

あえて選んだ敵地での戦い、逆境を力に変えて

今回は、アメリカ人チャンピオンが敵地ブラジルに乗り込んでのタイトルマッチという、あまり前例のない設定となっている。ナマユナスは、もともとこの試合は3月にラスベガスで予定されたものだったのだが、本人の希望でブラジルでの防衛戦にシフトしたことを明かしている。

「私は国外で試合をしたことがない。ただ、試合というのは、不安のない環境でやるようなことではない。この方が私はいいパフォーマンスができる」

対戦相手のアンドラージは、ナマユナスが2回倒したイェンドジェイチェクに負けている選手だ。それなのに試合前の掛け率ではアンドラージ有利が予想されている。

「でも私の頭の中では常に、自分の方が有利だと思っている。自信もあるし、自分の能力も把握している。お互いに戦略を持って試合に臨むことになるけれど、私の戦略の方が優れていると思う」

ナマユナスはこれで、実に4試合連続で、アンダードッグ(下馬評不利)の評価だ。しかも初めての敵地での戦いである。しかし、逆境から反撃してくるのが、ナマユナスのやり方なのだ。世界を変えるための殺し屋ローズの戦いは、まだ始まったばかりだ。

アンドラージが若い王者を押しつぶす

挑戦者のアンドラージ(女子ストロー級ランキング1位)は現在3連勝中、前回はトップランカーのカロリーナ・コバルケビッチを、女子軽量級ではあまり見かけないメガトンパンチで文字通りぶっ飛ばして失神KO勝ち(2018年9月、UFC 228)、今回のタイトル挑戦にたどり着いた。

ノンストップでパンチを振り回しながら、ひたすら前進し続けるアンドラージ。強靱(きょうじん)な肉体と超攻撃的なファイトスタイルは、同郷の英雄ヴァンダレイ・シウバを彷彿(ほうふつ)とさせるものだ。ニックネームの“Bate Estaca”は、プロレス技の“パイルドライバー”を意味している。若い頃、柔術大会に出場したアンドラージが、試合の流れの中で思わず反則のパイルドライバーを出してしまったことがきっかけでついたあだ名だ。アンドラージはまた、かつては卓球で州チャンピオンになったり、女子サッカーチームでプレーした経験があったりとスーパーアスリートでもある。ちなみにサッカーチームからはいまだに勧誘があるという。

「ローズは打撃がすばらしい」とアンドラージは分析している。「スピードがあって、リーチも長い。だから私の作戦は、ローズを金網に押し込むこと。金網に押し込まれると、彼女はどんどん疲れていくし、強いパンチも当てられない。私にトラクターのようなプレッシャーをかけられ続ければ、ヨアンナ戦のようにうまくはいかないはず」だと作戦を明かしている。

UFC 237ではまた、ブラジルのレジェンドファイター、ジョセ・アルドとアンデウソン・シウバも登場し、アレクサンダー・ボルカノフスキー(オーストラリア)、ジャレッド・キャニノア(アメリカ)という新しいスター候補選手をそれぞれに迎え撃つ。次世代にバトンを受け渡すのか、それとも高い壁となって跳ね返すのか。特に年内引退を宣言しているアルドのリオデジャネイロ最後の降臨は、勝っても負けても感動のドラマになりそうだ。エモーショナルな試合満載のUFC 237をお楽しみに。

【文 高橋テツヤ】
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