UFCファイトナイト・サンアントニオ見どころ:トップコンテンダーの実力証明へ、レオン・エドワーズの正念場

UFCファイトナイト 見どころ
UFCファイトナイト・ロンドン:公式計量セレモニーに登場したレオン・エドワーズ【イギリス・ロンドン/2019年3月15日(Photo by Jeff Bottari/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
UFCファイトナイト・ロンドン:公式計量セレモニーに登場したレオン・エドワーズ【イギリス・ロンドン/2019年3月15日(Photo by Jeff Bottari/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
日本時間7月21日(日)に開催されるUFCファイトナイト・サンアントニオのメインイベントでは、ランキング4位のハファエル・ドス・アンジョス(ブラジル)と、ランキング12位のレオン・エドワーズ(ジャマイカ)が対峙(たいじ)するウェルター級トップコンテンダーのサバイバルマッチが行われる。

7連勝中エドワーズ、タイトル奪取に本腰

27歳のエドワーズは現在7連勝中で、ウェルター級の赤丸急上昇株だ。先ごろ、ブライアン・バーバリーナ、ドナルド・セラーニといった難敵を乗り越え、ロンドンでの前戦(2019年3月)はブラジリアン柔術黒帯のグンナー・ネルソンをグラウンドでも制して判定勝ちを収めている。現役ウェルター級ファイターの連勝記録は王者カマル・ウスマンの10連勝だが、エドワーズの記録はそれに次ぐ第2位だ。これほどの実績にもかかわらず、昨今のエドワーズの話題といえば、そのロンドンのバックステージでホルヘ・マスビダルに張り倒されたことばかり・・・。現在、最も過小評価されている選手の1人とも言われるエドワーズにとっては、今回の試合はトップランカーのドス・アンジョスを相手に、オールラウンドな実力を見せつけるチャンスに他ならない。

「ドス・アンジョスは前回、ケビン・リーに強い勝ち方をした」とエドワーズはドス・アンジョスを評している。「この試合を見ていて、オレは彼と戦わないといけないと思った。彼は元(ライト級)チャンピオンだ。オレはこれからチャンピオンになる。だから彼を倒すことは、タイトル戦線への宣戦布告になる。オレの実績にとって大きな勲章になるんだ。オレはこういう試合を待っていた。自分の実力を証明することが本当に楽しみだ」

そんなエドワーズの前回の黒星は遡ること3年半前の2015年12月、ウスマンに判定負けを喫したものだった。そのウスマンは今ではウェルター級のチャンピオンになっている。

「今のオレは、あの時のオレとは全くの別人に生まれ変わっている」とエドワーズはウスマン戦を振り返る。「当時のオレはただの子供だった。UFCに入ったばかりの若造だったんだ。でも今のオレはUFCのベテランで、歴戦の勇士だ。ウスマンと比べても、格段に大きく進化している」

「ウスマンがベルトを取ったことで、オレのモチベーションも大いに高まっている。オレはこれからも勝ち星を重ねてタイトルマッチにたどり着き、ウスマンにリベンジしたい。そのことを本当に楽しみにしているんだ。3年前に負けて以来、オレもウスマンも負け知らずだ。そしてリマッチでオレはベルトを奪い取り、勝ち星も取り戻す。こんな完璧なストーリーがあるかい。だからオレが挑戦するまで、ウスマンにはベルトを持ち続けていてほしいんだ」

「オレは勢いが大事だと思っている。勝ったり負けたりしている選手もいる中で、UFC最激戦階級で7連勝していることには、なにがしかの意味があると思っているんだ」とエドワーズは将来のタイトル獲得に自信を見せる。「7連勝していてタイトルに挑戦したことがない選手など、他にいるかい」

関節技の鬼 vs. プロボクサーの異色対決

UFCファイトナイト・サンアントニオのセミメインイベントでは、アレクセイ・オレイニク(ロシア)対ウォルト・ハリス(アメリカ)の米露ヘビー級対決が行われる。

この試合はもともと、2019年5月にカナダ・オタワで実現するはずだった。しかし、4月にロシア・サンクトペテルブルクで行われたUFCファイトナイトのメインイベントに出場予定だった選手の負傷欠場が明らかになると、オレイニクは急きょサンクトペテルブルクの試合にスライド出場(アリスター・オーフレイムにKO負け)することとなり、残されたハリスはオタワで代役の新鋭セルゲイ・スピバックと対戦したのだった(50秒でKO勝ち)。

今回は仕切り直しの一番となる。

オレイニクは現在、ヘビー級現役選手の中では最年長の42歳。キャリア戦績は実に70戦を誇る大ベテランである。オールラウンダーの全盛期にあって、しかも強打者の多いヘビー級で、寝技の職人としていまだに勝利を積み重ね続けている珍しい存在だ。何しろキャリア58戦のうち53勝でフィニッシュ勝利、うち45勝で一本勝ち、さらにそのうち37勝が第1ラウンドでの一本勝ちだというから、まさに秒の殺し屋、関節技の鬼である。

オレイニクのニックネームはボアコンストリクターという。これは胴体で獲物に巻き付いて絞め殺す大蛇の名称だ。そのニックネーム通り、オレイニクの得意な関節技はチョークである。これまでのフィニッシュホールドには、リアネイキドチョーク(裸締め)、トライアングルチョーク(三角締め)はもちろんのこと、エゼキエルチョーク(袖車締め)、スカーフホールドヘッドロック(けさ固め)といった秘技がずらりと並ぶ。今のところ、UFCではエゼキエルチョークで勝ったことのある唯一の選手がオレイニクなのだ(しかも2勝している)。

ランキングでもヘビー級トップ10常連のオレイニク(現在9位)、前回こそオーフレイムに不覚を取ったものの、過去6試合で4勝と、いまだ衰えは見せておらず、すぐにでもタイトル戦線に浮上してくる可能性のあるダークホース的な存在なのだ。

対照的にハリスのバックグラウンドはボクシングだ。元ゴールデングローブ(アマチュアボクシングのトーナメント)チャンピオンで、最近でもデオンテイ・ワイルダーやタイソン・フューリーといった、ヘビー級プロボクサーのトレーニングパートナーを務めているというから、実力は折り紙付きである。ハリスは現在36歳だが、ボクシングからMMAに転向したのが28歳の時、つまり、MMAキャリアメイクはまだまだこれからだというところだ。

寝業師対プロボクサーの究極のスタイル対決を制するのはどちらか、目が離せない一戦だ。

UFCファイトナイト・サンアントニオではこの他、白熱の熱戦必至の実力者対決ダン・フッカー(ニュージーランド)対ジェームス・ビック(アメリカ)戦や、お騒がせフットボーラーのグレッグ・ハーディ(アメリカ)が注目のオクタゴン第3戦に挑む。さらにアンドレイ・アルロフスキー(ベラルーシ)対ベン・ロズウェル(アメリカ)戦ではベテラン同士の滋味あふれる騙(だま)しあいも堪能できそうだ。

【文 高橋テツヤ】
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