UFC 246見どころ:コナー・マクレガーはオクタゴンで再び魔法を見せてくれるのか

UFC PPV 見どころ
UFC 246:イベント前記者会見でフェイスオフに臨んだコナー・マクレガーとドナルド・セラーニ【アメリカ・ネバダ州ラスベガス/2020年1月15日(Photo by Jeff Bottari/Zuffa LLC via Getty Images)】
UFC 246:イベント前記者会見でフェイスオフに臨んだコナー・マクレガーとドナルド・セラーニ【アメリカ・ネバダ州ラスベガス/2020年1月15日(Photo by Jeff Bottari/Zuffa LLC via Getty Images)】
日本時間1月19日(日)に開催されるUFC 246のメインイベントでは、コナー・マクレガー(アイルランド)対ドナルド・セラーニ(アメリカ)のウェルター級5ラウンド戦(ノンタイトル戦)が行われる。

2020年シーズン開幕戦! マクレガー復帰

「今回の試合は“2020年シーズン”の開幕戦だ。今年は少なくとも3試合したい」と高らかに宣言し、MMA最大のスター、“ザ・ノートリアス”ことコナー・マクレガーが戦線に復帰する。

マクレガーの試合は、2018年10月のUFC 229でハビブ・ヌルマゴメドフの持つライト級タイトルに挑戦するも退けられて以来となる。またマクレガーは、2016年11月にエディ・アルバレスに勝って以来、勝ち星から遠ざかっている。

2017年に実現したフロイド・メイウェザーとのボクシングマッチ(第10ラウンド、メイウェザーのTKO勝ち)が記録的な収益を上げ、富と名声をほしいままにしたマクレガー。あとは落ちていくしかないほどの高みに達したマクレガーは、一時はセレブとしてのライフスタイルに浸っていると報じられ、昨今では酒場でのもめ事など、ネガティブなニュースばかりが漏れ伝わってくるようになってきていた。

「名声の落とし穴に落ち、集中力をなくしてしまっていた。時には感情に駆られて、思ってもみないことをしてしまうこともあった。格闘家としての自分のこれまでの成功は、コンスタントに格闘技にコミットしてきたからこその結果だった。そして今、俺はやっと格闘技に全力を注(そそ)ぐことができるようになった」とマクレガーは復帰に向けて意欲を見せている。

復帰戦でセラーニと戦う意味合い

セラーニのモットーは「いつでも、どこでも、誰とでも」戦うことであるが、一方のマクレガーといえば、対戦相手にはこだわることでおなじみだ。あえて難敵を選び出して、高い壁を越える姿をファンに見せるのが、これまでのマクレガーのやり方だったのだ。だからマクレガー流に従えば、復帰戦がいきなりヌルマゴメドフとの再戦や、今最も輝いている男、ホルヘ・マスビダルに狙いを定めたとしても不思議はなかった。しかし、マクレガーが選んだのは、現在2連敗中、36歳のセラーニだった。

「セラーニとは何年も前のジョゼ・アルド戦前の記者会見で言葉の応酬があった。ファンが見たい試合の筆頭だろう」とマクレガーはセラーニという選択について多くを語らない。

もちろん、UFC最多勝利記録男であり、マクレガーがMMAをわずか1試合しかしていないここ3年半の間に実に11試合を戦ってきたセラーニが簡単な相手であるはずもないのだが、いつものマクレガーらしいスリルとサスペンスに比べれば、やや物足りなさを感じるファンもいるかもしれない。しかし、実力を発揮できれば十分に勝つことが可能な相手だからこそ逆に、マクレガーにとって今回の試合は、ここからの復活ロードが本当に始まるのかどうかを占う残酷なリトマス試験紙になるという意味合いを帯びる。マクレガーも謙虚にこの試合を受け入れており、セラーニに対するトラッシュトークは(今のところ)まったく発せられていない。

「ドナルドには感謝している。試合数も多いし、家族を大切にしている男だ。リスペクトしているよ」

ここで敗れるようでは、マクレガーの年内3試合計画など絵に描いた餅になってしまうだろう。マクレガーの傍若無人な億万長者のような振る舞いを快く思っていないファンの心は、敗戦とともにすっかり離れてしまうかもしれない。

問われる今のマクレガーの“リアル”

そして勝敗もさることながら、この試合でマクレガーがどのような姿を見せてくれるのかも決定的に重要だ。アルバレスをいとも簡単に料理した時のキレキレのマクレガーなのか、あるいはヌルマゴメドフ戦で見せたどこか覇気のないマクレガーなのか。長い欠場期間とセレブのライフスタイルが、マクレガーの心と身体、勝負勘にどのような影響を与えているのか。そして、もはや一生働く必要がないほど稼いだマクレガーに、まだ闘魂の炎は燃えているのか。マクレガーの言葉に耳を傾けてみよう。

「調子はとてもいい。自分の声に耳を傾け、ジムの中でも外でも、自分でやると決めたことができている。エネルギーに満ちているし、集中力も出てきた。それに、いろんなことを経験してきて、自分でも大人になったと思う」

「もう3、4カ月にわたって禁酒している。実はヌルマゴメドフ戦の前には、直前まで浴びるように飲んでいた。どうしてそんなことをしたのかは分からないが、やるべきではなかった。今は過去の間違いを認め、正すことができている」

「かつての自分に戻って、コンスタントに練習ができている。心も身体もいい状態だ。俺は試合がしたいんだ。次に誰と戦うとか、そういう細かい計画はUFCに任せる。とにかく、まずは万全の姿をお目にかけて、2020年のシーズンに突入したいと思っている」

「俺にとって格闘技はカネの問題ではない。カネならもう永久にある。戦いに飢えている。そして、自分の理想の生き様を全うしたいんだ」

セラーニも試合の意味はよく分かっている。

「オレはスタンドで勝負する。みんなそれを見たいんだろ。それでは勝てないというヤツがいるが、オレは退屈な試合で勝つくらいなら、歴史に残る最高の試合で負ける方がいいんだ。マクレガーが昔のようなハングリー・キッドで出てきてくれることを期待しているし、そうなると思うよ」

例によってマクレガーからは、「できるだけ速い時点で、ノックアウトで勝つ。決着はすぐに付くと思っている。セラーニをノックアウトする」とKO宣言も飛び出している。そしてマクレガーは勝つだけではなく強さを見せる決意を次のように表現している。

「復帰できてうれしいし、俺のシーズン開幕戦をドナルドと戦えることは楽しみだ。これまでに何度もお見せしたとおり、またオクタゴンの中で魔法を見せる。今回は特別な魔法を見せるつもりだ」

【文 高橋テツヤ】
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