UFCファイトナイト・ニューメキシコ見どころ:闘魂開花コーリー・アンダーソン、燃えさかるジョーンズ包囲網

UFCファイトナイト 見どころ
UFC 244:コーリー・アンダーソン vs. ジョニー・ウォーカー【アメリカ・ニューヨーク州ニューヨーク/2019年11月2日(Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC via Getty Images)】
UFC 244:コーリー・アンダーソン vs. ジョニー・ウォーカー【アメリカ・ニューヨーク州ニューヨーク/2019年11月2日(Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC via Getty Images)】
日本時間2月16日(日)に開催されるUFCファイトナイト・ニューメキシコのメインイベントでは、コーリー・アンダーソン(アメリカ、ライトヘビー級ランキング5位)対ヤン・ブラホビッチ(ポーランド、同6位)の一戦が行われる。

覚醒アンダーソン、迎えた充実の時

アンダーソンは2014年に開催されたジ・アルティメット・ファイター(TUF)シーズン19で優勝してUFCに参戦。今回の相手、ブラホビッチとはUFC 191(2015年9月)にも対戦している。当時まだキャリア7戦目だったアンダーソンだが、自分の3倍も戦績のある元KSWチャンピオンのブラホビッチにユナニマス判定勝ちを収めた。

キャリアの浅い時期からUFCでトップファイターにもまれ、黒星が先行する時期もあったアンダーソンだが、現在は4連勝中と波に乗る。

「初期の頃には、UFC入りしたのは時期尚早なのではないかとも言われた。実際、俺はアマチュアも経験していないし、ろくに技術指導を受けることないままプロになって、オオカミの群れにいきなり放り込まれたようなものだったんだ」

「ここに来て自分の戦い方がつかめてきたように感じている。やっとコーリー・アンダーソンに出会えた感じなんだ。以前は大型版のフランキー・エドガーになろうとしていた。フランキーは自分にとってアイドルであり、先生でもあるからね。でもこれからは、自分なりの戦い方でUFCチャンピオンを目指していくよ」

かませ犬扱いに反逆! ウォーカーに劇勝

ライトヘビー級新世代ファイターの1人として、ヴォルカン・オーズデミア、ドミニク・レイエス、チアゴ・サントス、アンソニー・スミスらに勝るとも劣らない成績を残しながらも、話題性やタイトル挑戦機会で先んじられたアンダーソン。長時間まじめに練習に取り組む姿から、“オーバータイム(残業)”というニックネームを付けられているアンダーソンだが、努力をしても報われないのならいっそ引退してしまおうと真剣に考えたこともあったという。

しかし、妻に引退を打ち明けたところ、「本当に後悔しない? 続けていたらチャンピオンになれたかもしれないと、後になって思わない?」と問われ、もうしばらく現役を続けてみることにしたのだ。

そんな折に組まれた試合が、マディソン・スクエア・ガーデンが舞台となったUFC 244でのジョニー・ウォーカー戦だった。自分とは正反対に人気者のウォーカーが相手とあって、アンダーソンは「試合の意図はよくわかった。自分はかませ犬なんだ」と感じたという。捨て身の男がいよいよ牙を剝(む)いた。ライトヘビー級歴代1位のテイクダウン53回という記録を持つアンダーソンだが、いつもの塩漬け戦法を返上、序盤から打撃の猛攻でウォーカーをわずか2分でノックアウト、勝利の咆吼(ほうこう)をあげたのだった

アンダーソンが自身初のメインイベントでタイトルショットに王手を掛けるか、それとも過去7戦で6勝、ルーク・ロックホールド、ジャカレ・ソウザを下して現在2連勝と絶好調のブラホビッチが5年前の雪辱を果たすか。いずれにしても、先週辛勝したばかりのジョン・ジョーンズ包囲網はますます狭まっていくことになりそうだ。

狂乱のサンチェスが四次元殺法のペレイラを迎撃

UFCファイトナイト・ニューメキシコのセミメインイベントでは、ディエゴ・サンチェス(アメリカ)対ミシェル・ペレイラ(ブラジル)のウェルター級戦が行われる。

サンチェス(38)は、TUFシーズン1(ミドル級で優勝)出場選手の中で唯一の現役ファイターである。今回がUFCで31試合目、これまでにフェザー、ライト、ウェルター、ミドルの4階級で戦い、タイトル挑戦歴もある。2019年のUFC殿堂では、2009年6月に行われたクレイ・グイダ戦が“ファイトウィング(名勝負部門)”で殿堂入りを果たした。このほかにも、ギルバート・メレンデス戦、カロ・パリジャン戦など、年間最優秀試合級の名勝負をたくさん残している。

ブレーキが壊れたかのような狂乱ファイトでおなじみのサンチェスは「雨の中でめい想し、雷に打たれることが俺のアンチエイジング手法」と言ってみたり、「自分はMMAに命をささげている。ケージの中で死んでもかまわない」などと真顔で語ったり、その発言もいささか変人めいていて、カルト的な人気を博しているが、今回は久々のセミメインイベントへの抜てき、しかも地元開催のホームゲームとあって、強い姿をファンに見せたいはずだ。

対するペレイラは、UFCデビュー戦となった2019年5月のダニー・ロバーツ戦で、スピンルーニーやバックフリップ、サマーソルト、大車輪キックなどのアクロバティックな動きを連発、最後は跳びヒザ蹴りと右パンチのコンビネーションでノックアウト勝ちを収め、大いに話題を呼んだ。ただ、9月のトリスタン・コネリー戦では計量に失格したあげく、派手な動きをやり過ぎてガス欠を起こし、黒星を喫している。

それでもペレイラは大ベテランを相手に、ファイトスタイルを変えるつもりはサラサラない。

「オレはやるよ。批判も随分受けている。普通のことじゃないからね。でもこれが自分のスタイルなんだ。オレにとっては、バックフリップはジャブを打つのと何ら変わらない。フルラウンド動き続けても、スタミナ面で何の問題もないということを証明するよ」

ペレイラは決してすい星のごとく登場してきたラッキーボーイではない。26歳にして戦績23勝10敗という若きベテランである。デビュー戦では、長年の夢だったUFC入りをついに実現させ、入場花道で落涙する一幕もあった。

「楽しいショーをお見せすること、お代の分だけ楽しんで帰っていただくこと、そういう考え方が今の選手に欠けているんじゃないかな。アンデウソン・シウバは激しく戦う一方で、MMAのショーマンとして人気を博した。俺も新世代の1人として、アンデウソンの仕事を引き継いでいきたい。ニュー・アンデウソン・シウバになりたいんだ」

今イベントにはまた、マーク・デ・ラ・ロサ(フライ級13位)、モンタナ・デ・ラ・ロサ(女子フライ級12位)が、UFC史上初めて夫婦で同じイベントに出場を果たす。さらにジム・ミラーが、ドナルド・セラーニと並んで歴代1位の最多出場試合数、UFCで34試合目の試合に臨む。ベテランから新星まで、多彩な顔ぶれが楽しいUFCファイトナイト・ニューメキシコをお見逃しなく。

(文 高橋テツヤ)
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