UFCファイトナイト・ノーフォーク見どころ:ベナビデス、3度目の正直で戴冠なるか!

UFCファイトナイト 見どころ
UFCファイトナイト・ミネアポリス:ジュシー・フォルミーガ vs. ジョセフ・ベナビデス【アメリカ・ミネソタ州ミネアポリス/2019年6月29日(Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
UFCファイトナイト・ミネアポリス:ジュシー・フォルミーガ vs. ジョセフ・ベナビデス【アメリカ・ミネソタ州ミネアポリス/2019年6月29日(Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
日本時間3月1日(日)に開催されるUFCファイトナイト・ノーフォークのメインイベントでは、ジョセフ・ベナビデス(アメリカ)とデイブソン・フィゲイレード(ブラジル)がUFCフライ級王座をかけて対戦する。

フライ級創世記からトップを張り続けるベナビデス

フライ級王者ヘンリー・セフードが、今後はバンタム級での戦いに集中するとしてベルトを返上したことを受け、空位となったフライ級正王者を決定するのが今回の試合である。

オクタゴンで行われた初のフライ級戦は2012年3月にオーストラリアで実現し、初代UFCフライ級チャンピオンを決定すべく開催された4人参加のトーナメントだった。1回戦の組み合わせは、ベナビデス対漆谷康宏、デメトリアス・ジョンソン対イアン・マッコールという顔ぶれだった。WECバンタム級時代の活躍でよく知られていたベナビデスの力が頭1つ抜き出ているとの下馬評がもっぱらだった。

しかしながら、結局、1回戦を勝ち抜いたジョンソンとベナビデスによる決勝戦(UFC 152、2012年9月)を制し、初代王者に輝いたのはジョンソンの方だった。

両者のリマッチがその15カ月後となる2013年12月に行われるも、ベナビデスは第1ラウンド2分8秒、ノックアウト負けで返り討ちにあってしまったのだった。

こうしてフライ級創世記からコンスタントに戦い続けてきたベナビデスのキャリア13年間にわたるMMA戦績は28勝5敗、UFCフライ級戦績は13勝3敗だ。フライ級での勝利数13はジョンソンと並んで歴代最多である。黒星はWECバンタム級王者ドミニク・クルーズ、UFCフライ級王者ジョンソンという2人の絶対王者に2敗ずつ、そしてヒザ前十字じん帯断裂による18カ月間の長期欠場明けに行われたセルジオ・ペティス戦での僅差すぎる判定負けだけである。それ以外は、前王者セフードを含めたフライ級トップファイターを軒並み下し、いまだにランキングは1位、長きにわたり一貫してトップを張り続け、おそらくチャンピオンになっていない選手の中で最強といえる存在、それがベナビデスなのである。

長すぎたタイトルショットへの道

ベナビデスにとって不運だったのは、強すぎる王者ジョンソンが実に5年にわたってベルトを保持し続け、11回という連続防衛レコードを達成してしまったことである。当時のジョンソンの無双ぶりを思えば、2度にわたって敗れているベナビデスに、3度目のチャンスが巡ってくるのは無理な相談だった。それでもベナビデスは淡々と勝ち続け、チャンスの到来に腕を伏した。だからこそ、2018年8月のUFC 227でセフードがジョンソンを下した際には、ベナビデスにいよいよ3度目のタイトルショットが回ってくるはずだと誰もが思ったのだ。

しかし、セフードはフライ級での防衛戦を行うことなく、バンタム級タイトルを奪取すると、肩の負傷で長期欠場に入ってしまった。宿敵ジョンソンも他団体にトレードされてもういない。その上、UFCフライ級の存続そのものが危ぶまれるといったウワサが飛び交った時期もあった。こうして、せっかく見えかけたベナビデスのタイトル再々挑戦は、不透明な状況の中で放置されることとなった。

「俺はもう、ベルトへのこだわりを捨てたんだ」とベナビデスは語っている。「最初にタイトルに挑戦したときには、ベルトを取りたくて取りたくて仕方がなかった。自己確認のために、そして最強の証(あか)しとして、どうしても必要だったんだ。これさえあれば、全てが変わると思っていた。今ではもう、そんなこだわりはない。こだわりを捨ててみれば、いろいろとうまく行くようになったんだ」

「今は自分が勝つことで喜んでくれる人たちのことをモチベーションにしている。勝つための過程で、自分のために自己犠牲を払ってくれた人たちのことだ。昔は自分のことばかり考えていたけれど、今の俺に大事なのは過程そのもの、そして周囲の人が喜んでくれることなんだ」

「これまでもすばらしいキャリアを過ごしてきたし、勝利もたくさんあげてきた。将来、ファンのみなさんにも、あいつは強い選手だったと思い返してもらえると思うんだ。それ以上の意味がベルトにあるかい?」

ベナビデスがそれでも「自分は運がいい」と語る理由

ベナビデスのベルトに対する冷静な姿勢は、長すぎた待機期間にフラストレーションと戦ってきた者だけが至る境地にも見える。このような状況でも腐ることなく、長きにわたり勝ち続けることができたのはなぜなのであろうか。

「正直、運が良かったんだと思う」とベナビデスは述べている。「俺はね、何事も運だと思うんだ。みんな、自分にはこんなことができるとか、すごく頑張ってうまくいったとかいうけど、そんなことは成功の方程式ではないんだ。そういう人はただ、運が良かったんだと思う」

「自分の選手寿命が長いのは感謝の気持ちを忘れないからだと思う。本心から、こんなことを毎日できて運がいいなあと思っているんだ。運がいいと思えば、それを続けようと思うものだよ」

「例えばシングルマザーの人に比べれば、俺なんて全然ラクなものだと思っているんだ。彼女たちはご飯を作り、子どもを学校に送り、スーパーのレジで働いて、失礼な客の相手もしないといけない。それなのに自分は毎日ジムに行ってトレーニングして、楽しいことばかりしているんだよ」

ちなみにベナビデスはファイター以外にもいろいろな顔を持っている。ファッションに熱心で、ドレスアップしたMMAファイターの写真だけを集めたインスタグラム『Dapper Scrappers』は1万6,000人のフォロワーを抱えている。映画マニアでもあり、評論家顔負けのハイクオリティな映画ランキングを毎年発表している。愛犬家であり、愛妻家でもある。奥様はUFC中継でもよく登場する美人キャスターのミーガン・オリビだ。

「今回のタイトルマッチがフライ級のどんな未来につながっていくのかは自分でも分からない」とベナビデスは、MMA戦績17勝1敗と勢いに乗るフィゲイレード(ランキング3位)との試合を展望している。「ただ今の自分にとってベルトはボーナスのように思える。かつてはすごく欲しかったけれど、今はなくてもいいやと思っているものだ。だからこそありがたいと思っているよ」

(文 高橋テツヤ)
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