UFCファイトナイト・グラスゴー見どころ:グンナー・ネルソンの格闘哲学

UFCファイトナイト 見どころ
日本時間7月17日(月)に開催されるUFCファイトナイト・グラスゴーのメインイベントには、現在5試合連続で一本勝ちと好調をキープするアイルランドのSBG所属、グンナー・ネルソンが登場する。



ネルソン、究極のポーカーフェイスの秘密

ヘンゾ・グレイシーから黒帯を授与され、21歳までに国際ブラジリアン柔術連盟(IBJJF)パン・アメリカン・チャンピオンシップ優勝、世界柔術選手権準優勝と、柔術の世界で大いに将来を嘱望されていたネルソンであるが、あっさりMMA転向を決意、MMA非合法の地であるアイスランドからダブリンに移住し、SBGに入団する。

SBGで同門のコナー・マクレガーとは親友でありトレーニングパートナーだ。ネルソンは「僕らはいいチームだよ。いろんな意味で正反対の僕らだけど、仲良くやっている。あいつは面白い男だし、いつも大口ばかりたたいているわけでもない」と語っている。

いつも感情を押し殺したような仏頂面のネルソンであるが、ある時、ファンから「あなたが口をいっぱいに開けて笑っているところを見てみたいのですが」と尋ねられたところ、無表情のまま「無理だ。それは来世に取っておく」と、絶望的なユーモアで答えている。

「ときどき僕は、みんなが僕のことを映画『ロッキー』シリーズの登場人物か何かと間違えているんじゃないかと思うことがある(注:敵役の冷血ボクサー、イワン・ドラゴのこと)」とネルソンは語っている。「確かに僕は感情を外に出さない。特にたくさんの人に囲まれている時や、ケージの中にいる時には感情を持たないようにしている。感情は友だちや家族のために取ってあるんだ」

試合はフィニッシュしないといけない、とネルソン

そんなネルソンは、ほとんどのファイターが目の色を変えて狙っているチャンピオンベルトにもとんと無頓着だ。

「MMAのことを考えるなら、タイトルマッチなんかのことよりも、もっと楽しいことを考える。それは技術であり、シークエンスであり、ドリル、ムーブ、戦術や戦術。つまりマーシャルアーツそのものを考えることが好きなんだ」

「もちろん、例えば今年はあと2試合して、うまくいけば来年早々にもタイトルショットということになるのかな、なんて算段をしてみることはある。でもそんなことにたいして興味はない。このスポーツではタイトルが最も重要なものではないんだ」

感情を押し殺し、タイトルにも無関心だと言うわりには、ネルソンの試合は目が覚めるような鮮やかでエキサイティングなフィニッシュに彩られている。現にネルソンはキャリア16勝のうち、1試合を除いて全てをフィニッシュで飾っているのだ。

「誤解しないでくれよ。僕はただの無名ファイターでいいと思っているわけでも、勝ったり負けたりの職人で終わっていいと思っているわけでもない。僕は毎回勝ちたいし、毎回強くなりたい。ただ、ベルトだけに執着しているわけではないと言うことなんだ。僕は自分が強くなること、自分の動きに磨きを掛けること、もっと技術を覚えて選手として進化していくことに執着している」

「中には各ラウンドの判定スコアで上回ることに必死の選手もいる。でも、本当のチャンピオンになりたいのなら、フィニッシュしなければならないというのが僕の持論だ」

そんなネルソンが今回フィニッシュを狙うのは戦績24勝3敗のうち19勝をフィニッシュで決め、さらにそのうち14勝を第1ラウンドのフィニッシュで飾っている現在4連勝中のストライカー、サンチアゴ・ポンジニッピオだ。試合は寝てネルソン、立ってポンジニッピオ、瞬(まばた)き厳禁のスリリングなスタイル対決となりそうだ。

地元出身コールダウッドが再び会場を揺らすか

UFCファイトナイト・グラスゴーのセミメインイベントには地元グラスゴー出身の女子ストロー級ファイター、ジョアン・コールダウッドが出場する。前回、グラスゴーにて行われた大会(2015年7月)で、コートニー・ケーシーとの一進一退の激闘を制した際のあの会場大爆発は、今でも忘れ難いシーンだ。また2016年6月のUFCファイトナイト・オタワでは、難敵ヴァレリー・レターノーを正確無慈悲なボディへの集中打で戦意喪失に追い込んだ。このパフォーマンスにはUFC会長のデイナ・ホワイトも「女子軽量級であんなふうにヴァレリーをフィニッシュできる選手はいない。ヨアンナ・イェンドジェイチェクもヴァレリーとは5ラウンド戦ったが、あんなことにはならなかった」と、コールダウッドの闘魂に脱帽の様子だった。

「悪いことがあったり、ついていない日があっても、ジムにいけば2時間後にはスッキリした気分になれる、流されそうになっても、MMAのおかげで物事を違った角度から、前向きに見ることができる」と語るコールダウッドが迎え撃つのは、23歳で離婚した後、かねての夢だったUFCファイターになることを目指してジムに入会したというシンシア・カルビーヨだ。パワフルな打撃が武器のコールダウッドと、グラウンドに引きずり込んだら極(き)めきるまで離さないカルビーヨ、女の生き様をかけた主導権争いは想像しただけで恐ろしい。

シーリー、万感のファイナルマッチへ

アンダーカードにはニール・シーリーも登場する。現在37歳、ネルソンが尊敬する選手として名前を挙げるこのUFCフライ級最古参ファイターは、この試合を最後に引退する意向を表明している。もともとは2016年11月に開催されたUFCファイトナイト・ベルファストでの引退を示唆していたのだが、対戦相手のイアン・マッコールが減量後に体調を崩し、試合が急きょ中止に。その後、2017年2月のUFC 208で同じ対戦が再度組まれたが、今度はシーリーの身内に不幸があり試合がキャンセルされていた。シーリーは、2016年5月、UFCファイトナイト・ロッテルダムで堀口恭司と対戦した際に、「あんなに強いフライ級ファイターと戦ったのは初めてだった。家族がいて、フルタイムの仕事があって、その他いろいろやるべきことのある私が、フルタイムのアスリートである彼らに追いつくのはもう無理だ」と潮時を悟ったと語っている。

とはいえ、引き出しの多いベテランのことだ。地元ファンの前で最後にどんなトリックを見せてくれるのか、アイリッシュファンならずとも見逃せない最後の勇姿となりそうだ。

【文 高橋テツヤ】

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