UFCファイトナイト・ノーフォーク見どころ:不死身の男マット・ブラウン、万感の引退マッチへ

UFCファイトナイト 見どころ
UFC 216:ドナルド・セラーニ対マット・ブラウン【Photo by Vaughn Ridley/Getty Images】
UFC 216:ドナルド・セラーニ対マット・ブラウン【Photo by Vaughn Ridley/Getty Images】
日本時間11月12日(日)に開催されるUFCファイトナイト・ノーフォークのセミメインイベントで、“ジ・イモータル(不死身)”の愛称で知られるベテランのマット・ブラウンが、同じく歴戦の猛者ディエゴ・サンチェスと対戦する。ブラウンはこの試合が自身のラストマッチとなることを明らかにしている。



ブラウンはTUF(ジ・アルティメット・ファイター)シーズン7出演をきっかけに、2008年にUFC入りし、MMA戦績22勝16敗、UFC戦績12勝10敗。2012年から2014年にかけて、破竹の7連勝でランキングを駆け上がっていた頃は相手の魂を吸い取って抜け殻にしてしまうような容赦のない勝ち方でカルト的な人気を得た。そんなブラウンもここ6試合では5敗、現在3連敗中だ。

ドナルド・セラーニにハイキックでノックアウト負けを喫した前回の試合(2016年12月、UFC 206)を振り返って、ブラウンは次のように語っている。

「セラーニ戦の前、ロッカールームに座ってオレは、ああ、試合をしたくないなあ、と思っていたんだ。このままフラッと外に出て、タクシーを捕まえてホテルに戻り、そのまま姿を消してしまおうかと思ったほどだった。怖かったわけでも、緊張していたわけでもない。ただ、とにかくテンションが上がらなかった。ある意味、疲れていたし、退屈していた。自分でも、格闘技を本当にやりたくてやっているのか、分からなくなったんだ」

「オレは職人になりたいわけでもないし、2番になりたいわけでもない。チャンピオンになるためにやっているんだ。オレは自分に問いかけてみた。自分はもう、ピークを越えたのか? これ以上はもう無理なのか? ランキングは5位までいった。あと1ラウンド頑張れれば、ロビー・ローラーを倒してタイトル挑戦権を得るところまでいったこともある。ところが今は、あの頃のハングリーさはなくしてしまった。ピークを越えたなら、もう身を引く時期だ」

同士サンチェスに同時引退を呼びかけ

引退を決意したブラウンは、今回の試合がどんな試合になろうとも決意が揺るがないようにするために、事前に発表することにしたのだという。家族や友人、プロモーターから引退を勧告される前に自分の意志で辞める。これがブラウン流の美学なのだ。格闘技人生をブラウンは次のように振り返っている。

「格闘技のおかげで、オレは人として成長できたと思っている。何の希望もない、薬物中毒者だったオレでも、強くなれたし、自信も持てたし、賢くもなった。弱みをさらすことも、感じたことを口にするのも構わないということにも気がついた。ファンの人から、絶望して死のうと思っていた時に、あなたの試合を見て元気が出たというメッセージをもらったこともある。これ以上のことってあるかい」

第2の人生は、フルタイムでMMAのコーチ業に専念する意向だ。先ごろ開催されたUFC 217では、自身の試合前だというのに、バンタム級王座を奪還したT.J.ディラショーのセコンドでディラショーに気合いを入れているブラウンの姿が見られたものだ。

対戦相手のサンチェスについてブラウンは次のようにエールを送る。

「ディエゴも素晴らしいキャリアを歩んできた。階級変更を繰り返し、タイトルを目指して最善を尽くしてきたんだと思う。ただ、彼ももう、これから本気でタイトルにたどり着けるとは思っていないだろう。それなら、2人で最後にものすごい試合をして、一緒に引退しないか。試合はお互いのクビを取り合う最高の乱打戦になるだろう。ディエゴもそろそろ引退すべきだと思うし、オレが今回、引退させてやろうと思っている」

常在戦場、サンチェスの辞書に引退の文字はなし

一方のサンチェスはブラウンとは対照的に、引退について考える能力が欠けているのではないかと思われるほど、今でも貪欲(どんよく)に格闘技を突き詰めている。前回、アル・アイアキンタに第1ラウンドでのノックアウト負けを喫しても(2017年4月、UFCファイトナイト・ナッシュビル)、すぐに『Instagram(インスタグラム)』で次のようなメッセージを発信している。

「負けることも格闘技の一部だ。神に与えられた自分の能力と、努力して獲得した才能を信じる。自分の夢を信じる。自信がある。俺には経験がある。まだ健康で、身体は若く、ハングリーさはこれまで以上だ」

サンチェスは米国で2005年に放映されたTUFシーズン1の優勝者だ。同期生でいまだに定期的に試合をしている選手はもういない。これまでのキャリアで、時に弱々しい負け方を見せ、もうダメかと思われたこともあったが、そのたびに次の試合ではゾンビのように力強く復活してきた。階級変更は実に6回。ニックネームも“ナイトメア(悪夢)”、“ドリーム(夢)”を経て、前回の試合からは“ライオンハート”に刷新している。

「これまでにきつい敗戦も味わってきたけど、敗戦でダメになるヤツもいれば、そこから作り直してくるヤツもいるんだ。オレはいつも、敗戦から復活してやるという気持ちでやってきた。35歳になって正直、肉体も精神も、25歳の時より調子がいい」と語るサンチェスにもまた、意地の美学が伺える。ブラウンとの試合は、あたかも生き様を巡る頑固オヤジ同士のイデオロギー闘争の様相を呈している。

ポワリエ対ペティス、正念場の戦い

UFCファイトナイト・ノーフォークのメインイベントでは、ダスティン・ポワリエ対アンソニー・ペティス戦が行われる。ペティスは前回、ジム・ミラーを相手に得意のボディへのキックを軸としながら、ライト級王者だった頃に戻ったかのような強い戦い方で白星を得た。

一方、ポワリエの前戦は前ライト級王者エディ・アルバレスを大いに苦しめながら、反則の頭部へのヒザ蹴りをもらって無念のノーコンテスト裁定となっている。共に上り調子の人気者対決、勝者がタイトル戦線に大きな一歩を刻むことになるであろう見逃せない一戦だ。

【文 高橋テツヤ】


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