ステファン・トンプソン、MMA次世代の旗手

『僕が戦いで見せたいものは、ただ単に技術や三歳の時からトレーニングしていることじゃない。空手がもたらしてくれるものを見せたいんだ』-ステファン・トンプソン
 新鋭UFCファイターの中でまず名前があがるのは、このステファン・トンプソンだろう。彼はキックボクシングの戦績においてプロアマ通算で57戦全勝、MMAでは6戦全勝という実績を誇り、なおかつUFCデビュー戦ではノックアウト・オブ・ザ・ナイトを受賞、そしてUFCウェルター級チャンピオン、ジョルジュ・サンピエールが“ワンダーボーイ”と呼び、自身が見たなかでは史上最高のストライカーだと称している。これに加え、トンプソンとその他大勢の選手を区別しているのは、彼が単にMMAのスターになることを目標に掲げているではなく、次世代の旗手となることを夢みていることだ。

 「僕が戦いで見せたいものは、ただ単に技術や三歳の時からトレーニングしていることじゃない。空手がもたらしてくれるものを見せたいんだ」とトンプソンは語る。「空手が自分のライフスタイルを向上させ、ポジティブさをもたらし、そして人への敬意を教えてくれるという事を、僕は見せたい。UFCはすでに巨大な産業だけど、これからはお母さんやお父さんが是非息子に見て欲しいと思うようなスポーツにならなければならないと思う。だから僕はMMAのロールモデルになりたい」

 現在29歳、自身を「道場ねずみ」と語るサウスカロライナ出身のトンプソンは、UFCでの試合を控えるなか、彼の父が経営する道場のキッズクラスのヘッドインストラクターとなった。「サウスカロライナ一タフな男」の異名を持つレイ・トンプソンを父に持ち、二人の兄弟・姉妹とともに拳法空手を学びながら育った。戦う事だけでなく「礼儀、敬意、不屈の精神、忍耐力を学んだ」という。

 彼が地元の近く、ジョージア州で行われるUFC 145でその才能を披露する時がきた。「自分の故郷の近くで試合をすると、より多くの人が自分の試合を見に来てくれるから、特にうれしい。地元の人にも世界の人にも自分が何をしているか見せたい。急速な発展を遂げているこのスポーツを自分の地元にも広めたい」

 「最初たくさんの人に期待されるのはすごくプレッシャーだった」彼はそう言った。しかし、父からの言葉が彼を勇気づけた。「父は僕に、デビュー戦でオクタゴンに入る前に『周りのことは気にするな。ただ自分のすべきことをしろ』と言ってくれた。これを心に刻んだんだ」

 トンプソンの次の相手はTUF 7卒業生の一人、“不死身”のマット・ブラウンだ。ブラウンはトンプソンと同じく、UFC 143でTUF13卒業生、クリス・コープを相手に2ラウンドTKO勝ちを収めている。ブラウンは首相撲からの膝や、肘の巧みさを武器にしたムエタイスタイルのファイターだ。

 「マット・ブラウンはタフだよ」トンプソンは語る。「彼はベテランだし、正直に言うと、彼と戦うことに興奮している。こういう機会がすぐに巡ってきたことに感謝している。この前の試合はダメージの残る試合ではなかったし、2日後にはトレーニングに戻った。そして、このブラウンとの話をもらい、すぐにOKした。彼の打撃が気に入っている。彼はムエタイ技術だけでなく、グラウンドも得意だと聞いた。これはステップアップするのにいい機会だと思う」

 トンプソンのトレーニングは拳法の練習からはじまる。拳法は打撃だけでなく、柔術やレスリングの要素もあり、それがトンプソンの強みにもなっている。また、彼はテキサスにいる彼の義兄であり、ブラジリアン柔術の達人であるカルロス・マチャドの元でも練習している。足りない時はさらに、ラシャド・エヴァンスといったスター選手達と練習する。しかし、彼の一番の強みは、彼がもっとも馴染んだ空手である。

 「拳法空手では、自分の動きや速さをうまく使うことができる。自分のスタンスとして、普通の人よりも少し横に構える。こうすることで自分の前足をうまくいい角度で使える。自分の打撃の根本は他の人と同じだと思う。でも、彼らよりいい動きをしていると思うしノックアウトされる事はないと思う。自分の距離で自分のしたい事が出来る。もし、彼がその距離から外れようとしても、そのための手は打ってあるし、もし近づいてテイクダウンしようとするなら、その時はレスリング技術を使う。彼がどんな事をしてこようと対処法は考えてあるよ。ただ、相手がスーパー・タフであるというのも理解している」

 この戦いを制することが出来れば、彼の衝撃的なデビューはフロックでなかったと証明できるだろう。「時々、あれはラッキーショットだった、っていう人がいる。デビュー戦はたった4分だったし、みんな僕の力を測りかねていると思う。でも、次の相手が有名で実績もあるブラウンだからこそ、ステップアップにつながると思う。僕は自信があるし、とてもいい試合になると思うよ」

 日本時間の4月22日、テクニカルなトンプソンは攻撃性のあるブラウンと対戦する。「空手を復活させるよ」そうトンプソンは言う。「UFC初期に空手はボコボコにされた。でも、空手から学ぶべきことはたくさんある。この事をみんなに見せたいんだ」

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