ジョーンズvsベウフォート 青写真

UFC 152 - Jones vs. Belfort  ジョーンズは日本時間9月23日、そのライトヘビー級戦線における名声を不滅のものとするべく、オクタゴンに帰還する。挑戦者ビトー・ベウフォートを相手に防衛に成功すれば、連続防衛記録を4とし、チャック・リデルやフランク・シャムロックといったレジェンドと肩を並べるのだ。ジョーンズが昨年9月のクイントン・“ランペイジ”・ジャクソン戦で初防衛を果たしてからまだ1年すら経過していないことを考えれば、これは驚きの記録といっていいだろう。

 ただ、記録達成について今から考えるのは、早計に過ぎる。確かに下馬評では大きく上回ってはいるものの、勝利は確実ではない。元ライトヘビー級王者で、ヘビー級トーナメントの優勝者であるベウフォートは誰にとっても簡単な相手ではない。もちろんそれはジョーンズにとっても同様だ。さらにいうと、ベウフォートはジョーンズがこれまで対戦した相手のなかで、最も危険なストライカーであることをここに強調しておきたい。

 もちろん、ジョーンズはライトヘビー級史上最も才能に恵まれたファイターだ。しかし10年前は、ベウフォートこそが史上最高の天才だと評されていた。さらに5年さかのぼれば、このブラジル人ファイターはMMA史上最強の男になると期待されていたほどの才能の持ち主だった。

 UFC 12でベウフォートがデビューした時を思い返そう。彼はギリシャ神話の登場人物のような肉体と、マイク・タイソンばりのパンチ、そしてカールソン・グレイシーの黒帯を誇っていた。トレイ・テリグマンとスコット・フェロッゾを倒すのに合計で120秒しかかからず、楽々とヘビー級トーナメントを制してみせた。“天才”の異名も説得力のあるものだった。

 もちろん、ベウフォートがそのキャリアにおいて大きな浮き沈みを経験したのは周知の事実だ。勝てるはずだった試合をいくつも落とし、さらに競技に対する姿勢そのものを問われたこともあった。その潜在能力を最大限に発揮したとは言えないのが現状だ。

 しかし、そのキャリアが終焉に近づきつつあるとベウフォート本人が自覚したとき、すべてが変わった。過去の栄光を捨て去り、ミドル級へ転向する道を選んだのだ。それは疑いようもなく劇的な変化であった。彼は自らと同じ体格の選手たちの対戦を楽しんでいるようだった。それは最初の10年間、ヘビー級やライトヘビー級で戦っているときには味わえなかった感覚に違いない。

 この結果、ベウフォートは6戦で5勝を記録した。しかも、勝利した試合は相手を圧倒した。それは15年前にファンが夢見た彼の将来像と完璧に合致していた。そして再びミドル級王者アンデウソン・シウバと対戦する道を選ぶ代わりに、ダン・ヘンダーソンの代役としてライトヘビー級王者ジョン・ジョーンズに挑む道を選んだのだ。

 さらに言うと、ベウフォートは代替え出場のオファーを受け入れたというのではなく、ダン・ヘンダーソンの欠場が発覚したあとに、自らUFC側に出場を懇願した。リョート・マチダらライトヘビー級の有力ファイターが出場を断ったあととあって、UFC上層部もジョン・ジョーンズ自身も、快くその挑戦を受け入れた。

 そして、ジョーンズvsベウフォートの一戦が実現した。パウンド・フォー・パウンドに手をかける現王者と、その輝きを取り戻しつつある元王者。ここで再度強調させていただくと、私はベウフォートがこの一戦に勝つことは十分可能だと思っている。この一戦は宝くじのようなものではない。ジョーンズの欠場を狙って、王者の足元にバナナの皮をしかける必要もない。もちろん、ジャッジを買収する必要もない。私の言っていることの意味が分かっていただけるだろうか?

 ベウフォートはジョーンズのあごを狙うべきだ。これはシンプルな話だ。“天才”ベウフォートはその爆発的なパンチでジョーンズをキャンバスに沈めることが勝利への近道であることを、よくよくご承知のはずだ。リッチ・フランクリンを相手にそうしたように、パンチで相手の意識を奪うのか、それともアンソニー・ジョンソン戦のようにパンチからサブミッションへつなげるのか、とにかくスタンディングでの攻防が勝利へのカギを握るはずだ。

 ジョーンズがスタンディングの魔術師であることを考慮すれば、それは絶望的な作戦に聞こえるかもしれない。ジョーンズは破壊力にこそ欠けるものの、ライトヘビー級において最も予測不能かつ効果的な打撃を繰り出せる選手として名を馳せている。さらにジョーンズには大きなリーチのアドバンテージがある。言い換えれば、点数を稼ぐキックボクシングでは、ベウフォートは勝てないだろう。ダメージを受けずに相手にダメージを与えることは不可能だ。打ち合うのは得策ではない。

 だからベウフォートは、すっかりお馴染みとなった最近の彼の戦法に頼るべきだ。それは距離をとって、カウンターを狙うという戦い方だ。35歳で16年のキャリアを誇るベテランであるにも関わらず、ベウフォートは依然としてMMA界でも屈指のスピードを誇っている。つまり、ジョーンズの不用意なジャブや、長いリーチを誇る右ストレートをかいくぐって、決死の覚悟でカウンターパンチを繰り出すべきなのだ。

 そして一度でも効果的な打撃を命中させたら、そのまま一気呵成に攻め込む。ジョーンズはこれまで攻め込まれた経験がない。そのような状況にジョーンズがどのように対処するかは、ジョーンズ自身も含めて誰も知らない。これまでジョーンズはあまりに簡単に勝利を収めてきた。このため、劣勢に立たされた状況への対応力こそが、その能力に対する唯一の疑問符として残っている。

 ただ、ベウフォートは自らがパンチを繰り出す際にも用心を怠ってはいけない。ジョーンズもカウンターを合わせるのが得意だからだ。さらに言えば、ベウフォートはむやみにパンチを繰り出すべきではない。そうすれば、ジョーンズにクリンチするチャンスが生まれ、テイクダウンされる可能性が高まるだろう。ベウフォートはサブミッションの達人だが、ジョーンズにトップを取られたくないはずだ。誰だってその状況には耐えきれまい。

 つまり、ベウフォートはその位置取りに注意しなければならない。しかし、それはベウフォートにとっては難しいことではない。彼は常に慎重に戦ってきたからだ。アンデウソン・シウバに挑んだ際には、3分間は様子見に専念したほどだ。もしベウフォートがジョーンズにカウンターを当てることができれば、彼は2ラウンド以内に勝利することも可能だ。だが、試合が3ラウンド以上にもつれ込めば、勝利のチャンスは薄れるだろう。というのも、ベウフォートは過去10戦UFCで勝利しているが、そのどれもが最初の2ラウンド以内に記録したものなのだ。

 ベウフォートは確かにジョーンズに対して劣勢だ。10回中8回は負けるかもしれない。ただ、王者になるためにはたった1回の勝利で十分で、その1回が週末の一戦で巡ってくる可能性もある。



ジョン・ジョーンズ
・25歳
・193cm/93kg
・リーチは214cm
・16勝1敗
・7連勝中
・唯一の敗戦は圧倒していたマット・ハミル戦における反則負け
・現UFCライトヘビー級王者
・3試合連続で防衛中
・現王者、元王者を相手に4連勝中、そのうち判定勝利は一つのみ
・最近9試合のうち1試合のみが判定勝利
・KO/TKO勝利が50%
・サブミッションによる勝利が31.25%
・判定勝利が18.75%
・ファイト・オブ・ザ・ナイト受賞2回、サブミッション・オブ・ザ・ナイト受賞1回、ノックアウト・オブ・ザ・ナイト受賞1回
・154日ぶりの試合
・最長の休養帰還は188日

ビトー・ベウフォート
・21勝9敗
・35歳
・182cm/84kg
・リーチは187cm
・ここ6試合で5勝1敗
・ここ10試合で8勝2敗
・UFCでの10勝のうち判定勝利はなし(KO/TKOが8回、サブミッション勝利が2回)
・KO/TKO勝利が66.67%
・サブミッションによる勝利が14.29%
・判定勝利が19.04%
・元UFCライトヘビー級王者
・元UFCヘビー級トーナメント王者
・最近4試合でノックアウト・オブ・ザ・ナイト受賞2回
・252日ぶりの試合
・最長の休養帰還は504日

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