UFC 147&UFC on FX4 回顧録

マイケル・ディサントが、週末に開催された2つのアクション満載の大会を振り返る……

37歳フランクリン、再びタイトル戦線復帰なるか?
 リッチ・フランクリンは、自らの選手生命がもう長くはないことは自覚している。10月には38歳になるし、肉体的なピークを過ぎているのは明らかだ。このため、引退するまでにもう一度タイトル戦線に復帰するには、ここから連勝記録を伸ばしていく必要がある。

 フランクリンは日本時間6月24日に開催されたUFC 147で、元PRIDE王者を相手に危険な場面こそあったものの、明白とも言える判定勝利を収めることで、タイトル奪回に向けて正しい道のりを歩んでいることを我々に印象づけた。“エース”はこの勝利により、いまだこの階級のトップクラスであることを証明したのだ。ただし、第2ラウンドにヴァンダレイ・シウバの猛攻を受け、あわやTKO負け寸前に追い込まれたことを思えば、その実力に疑問符がついたのも確かだ。

 正直に言えば、第2ラウンド終盤に審判のマリオ・ヤマサキが試合を止めたとしても、文句を言う人は少なかっただろう。シウバは強烈な右パンチをフランクリンにお見舞いしてダウンを奪うと、日本で彼を伝説にしたその獰猛さをもって、グラウンドで元UFC王者を滅多打ちにした。

 猛攻にさらされたフランクリンは、ぎりぎりのところで踏みとどまっていた。ヤマサキが試合を止めなかったのは、ラウンド終了が目前に迫っていたためだろう。ただ、過去に同じような場面で試合が止められたケースも少なくない。

 私はヤマサキの判断に異議を唱えるつもりはない。ラウンドがあと数秒という状況にあっては、ファイターには相手の攻撃の嵐から逃れるために抵抗する時間があって然るべきだ。フランクリンは確かに追い詰められていた。終了後のインタビューで、第3、第4ラウンドは意識がなかったと語ったことが、なによりの証拠だ。ただ、フランクリンが攻撃を避けるためにレッグロックをしかけたり、グラウンドでの防御体制をしっかりととっていたのもまた事実だ。

 ヤマサキの判断が正しかったことは、フランクリンが第3ラウンド以降も効果的な試合運びを見せ、さらに5ラウンドを戦い抜くことで3-0での勝利をもぎとったことが証明している。

シウバはまだやれることを証明した
 平均的なMMAのファンであれば、シウバが過去10戦で3勝しかしていないという事実を知れば、衝撃を受けることだろう。日出ずる国で活躍していた頃のような、“絶対王者”というポジションにもはや君臨していないのは明らかだ。ただシウバは、現在のUFCにおいても、いまだ競争力のあるファイターの一人である。

 シウバはフランクリンとの一戦でファイト・オブ・ザ・ナイトのボーナスを受賞。これでUFCでの8戦中、5試合でボーナスを受賞したことになる。もちろん、そのなかで3つの敗北を喫しているのだが……。それでも、シウバが自らの選手生命を賭して対戦相手に襲い掛かる様は、勝つにせよ負けるにせよ、ファンを魅了し続けている。

 シウバは2000年から2004年の間に18戦無敗を記録しているが、それを今後再現することはないだろう。それでも、今回はフランクリンをあと一歩というところまで追いつめ、まだその炎が消えていないことを満天下に知らしめてみせた。

グイダよ……ウソだろ!?
 日本時間6月23日に開催されたUFC on FXのメインイベントを飾ったグレイ・メイナードvsクレイ・グイダの一戦は、一進一退の攻防が展開される、2012年で最もエキサイティングな一戦になると私は予想していた。ところが蓋を開けてみると、この試合は2012年で最も眠気を誘う一戦になってしまった。グイダは5ラウンドの間、まるで自転車にでも乗っているかのような調子で、メイナードから逃げ回ったのだ。

 なぜだ?

 グイダは試合のおもしろさでいえば、UFCトップ10に入る存在だ。彼の平均的なファイトは、多くのファイターにとってのキャリア最高の一戦に匹敵する。ところが、どういうわけか、グイダはメイナードから走って逃げることを選択した。

 そう、私はそれを「走る」と表現する。彼の目的は距離をとってカウンターのチャンスを窺うことでもなかった。メイナードとの接触を避けることだけが目的だったと言わざるを得ない。このような戦い方を見せたUFCファイターが過去にどれだけいただろうか? 3人ほど思い浮かんだ。

 一人目はUFC 83でネイト・クォーリーと対戦したカリブ・スターンズだ。これは間違いなくUFC史上最低の一戦で、スターンズが3ラウンドを通して繰り出した打撃の回数は、10回以下だったと命をかけて断言できる。

 二人目はUFC 58でリッチ・フランクリンと対戦したデビッド・ロワゾー。ロワゾーはコーナーに追い詰められた時こそフランクリンと組み合ったが、対戦相手に背を向けて逃げたファイターは私が知る限り彼だけだ。それも2回も! ただし、この試合はスターンズvsクォーリー、グイダvsメイナードよりはましだった。

 三人目はいつぞやのアルティメット・ファイターのフィナーレでディエゴ・サンチェスと対戦したケニー・フロリアンだ。フロリアンは開始からケージの端から端をジョギングで駆け抜け、サンチェスが近づくと別の方向へと舵を切った。自分より体格で上回るサンチェスとの接触を避けたがっていたのは明らかだ。幸運にも、サンチェスは2分間でフロリアンを捕まえ、凄惨なグラウンド&パウンドで彼を罰した。

 私はグイダが何を考えていたのかは分からない。彼の戦略は足を使うことにあったようで、それはもちろん、戦い方としては受け入れられるべきものだ。フロイド・メイウェザーが「戦いとは相手を殴り、さらに相手に殴られることを避けることだ」と語ったとおり、距離をとったからという理由だけでファイターは罰せられるべきではない。ただ今回、グイダはその戦法を究極にまで発展させてしまった。ただ、グイダ自身がこの試合のビデオをみたら、その消極さに吐き気を催すこと必至だ。彼は二度とこのような戦い方を選択しないだろう。

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