山本”KID"、とうとうオクタゴンに

「過去は振り返らない。全部忘れた。頂点に立ちたい。ベルトが欲しい、それだけ。」
楽しめるうちに山本”KID”徳郁を楽しもう。なぜなら日本を興奮の坩堝に巻き込んだこの男にはランディ・クートゥアのようなキャリアやチャック・リデルのような長い選手生活を送る計画は頭にないからだ。

 それどころではない。

 47歳になるクートゥアはまだ試合を続けている。41歳になったリデルは最近になって引退した。33歳、バンタム級で戦う山本はUFCのタイトル奪取を狙い、そして母国で彼を有名にしたこのスポーツから、あと2~3年で去ることを考えているからだ。

 「歳をとっても戦えるけど、そんな歳では戦いたくない、」山本(18勝3敗1ノーコンテスト)は続けた。「あと2~3年やって、それで辞めると思う。ずっとアメリカで試合がしたかったし、今はUFCには俺の階級(135ポンド)があるからちょうど良いね。これで最後のシーズン。」

この超アグレッシブなノックアウト・アーティストがとうとうオクタゴンに足をん踏み入れるまでずいぶんと長い間、ほとんど10年近くもの間待たなくてはならなかった。あまりにも長い間、米国のファンがバンタム級のトップ選手たちについて議論するとき、その議論は”たら?れば?”の力を借りざるを得なかった。(その結果、その議論は論じる意義の乏しいものとなってしまった。)5年ほど遡ったころには、もし日本の”KID”がカリフォルニアの”KID”(ユライア・フェイバー)とスーパーファイトで試合をしたらどうなるか、とかミゲール・アンヘル・トーレス対”KID"ヤマモトをやったらどっちが勝つか、といったような議論がいたるところで論じられていた。

 近年になりその競技的な地平は群雄割拠の状態になり、他のファイターたちはその差を埋めつつある。UFCバンタム級王者のドミニク・クルーズを筆頭に、他にもジョセフ・ベナヴィデス、英国のブラッド・ピケット、そしてスコット・ヨルゲンセンなど、山本の対戦相手として興味をそそるファイターには事欠かない。フィルターを通さず、いつでも思ったことをそのまま口にする山本は日本のデイリー・スポーツ誌の記者に「UFCの135ポンドの階級には俺のレベルの奴は一人もいない。」と発言して周囲を驚かせたと噂されている。

 またメディア関係者によれば山本は、正当な王者であるドミニク・クルーズについて尋ねられると「特別なところは何もない。」と答えさらに「俺がぶっ倒すよ。」と加えたと言う。

 コメントの真意を尋ねられると山本は自身の発言をすべてのトップファイターはそのように考えるべきなだけ、と説明した。彼はコメントを発しながら度々微笑み、外見上は彼の発言を人々が注目に値する非凡なものと捕らえる様子を楽しんでいるようでもあった。 「すべてのファイターはそんな風に考えているよ。それが自然なこと。」山本は語った。「俺はなんて言えばいいの?”彼は俺よりすごい”とか”彼は俺より強い”って言えばいいの?ありえない、俺は誰にだって勝つよ。すごい面白いね。たいしたことじゃないよ(笑)。みんなにあんまりエキサイトしないで頭を冷やせ、って言っておいてね。みんな自分がベストだって考えないとダメだよ。」

 今度の試合は山本にとって絶対的なチャンスであり、今回彼は他の135ポンドのファイター達の中で彼がどのポジションにいるのかを測られることになる。この階級の栄華に達するために、この凍りつくような髪型の日に焼けたショーマンはラスベガスで行われるUFC 126でデメトリオス・ジョンソン(12勝1敗)を先ずは撃退しなくてはならない。

自身もかつてはプロのファイターとして戦い、日本でジャッジを務め、そしてジョンソンのコーチであるマット・ヒュームは山本のこれまでのキャリア全てを研究し、そしておそらくその選手としての傾向をいかなる米国のコーチよりも知り尽くしているだろう。ヒュームは山本vs.ジョンソンの試合が世界最速の選手同士の試合になると信じている。そしてそれはおそらく正しいだろう。

 「”KID”はデメトリオスと多くにおいて同じ特性を持っている。彼らは両者ともにとんでもなく爆発的なアスリートで、すばらしいスピードとパワーを有している。」ヒュームは語った。「彼らの対戦は本当にすばらしいことだ。」

2月5日の対戦相手について聞かれても、山本は簡潔に答えるだけだ。 「彼は良いファイターだよね。」山本は語った。「良い動きをしている。」 スピードで対抗されると思いますか?  「やってみないとわからない。」山本は語った。

UFCは数年にわたって日本のエリート選手達、桜井速人、秋山成勲、そして五味孝典 を招聘してきた。世界ランカーといえる前田吉郎、水垣偉弥はズッファの運営するワールド・エクストリーム・チャンピオンシップで戦い、勝敗を重ねた。オクタゴンの中で戦績に苦しむファイター達が少なからずいる、と言うこの傾向は日本最上のMMAファイター達を蝕んできた。しかしながら山本こそ、米国に上陸する最高の日本人ファイターと言えるかもしれない。

 「俺は日本のために戦うよ。」山本は語った。 プレッシャーは無い、と彼は加えた。高校時代は3度州のレスリング王者に輝いた山本はすでに金網での試合経験があり、その試合でも勝利を収めている。実際のところ、彼の過去の戦績の大半はリングの上でのものだが、広大な金網は彼の才能を発揮するにはより適した場所だと彼は感じている。 ほんの数年前に日本で行われた天皇杯で4位に輝いた世界レベルのレスラー、山本はそのMMAキャリアの大半を一階級、または二階級も上の階級で戦ってきた。そしてそのことは155ポンドや143ポンドの対戦相手たちを常にハイライト映像のような方法で葬ることの妨げにすらならなかった。

驚くべきことに、山本がMMAのトレーニングを始めたのは24歳の時だ。彼はそのレスリング能力と身体能力で瞬く間に頭角を発揮した。彼の犠牲者リストには須藤元気、ホイラー・グレイシー、ジェフ・カラン、宇野薫、ハニ・ヤヒーラそしてビビアーノ・フェルナンデス達が名を連ね、さながらMMA界の大物達の紳士録と言った様だ。最初の6年間の彼の試合はほとんど全てがリングで行われ輝かしいものになった。彼は生まれながらの壊し屋で14連勝を挙げたこともある。彼こそが-全ての階級の中で-世界最高の選手かもしれないと語る人間もいるほどだ。

しかしこの3年の間、山本は雪崩のように次々と押し寄せる不運に見舞われ、本来の姿を失っていた。2008年には膝のACL手術を受け、そして17ヶ月もの間競技生活から遠ざかることを余儀なくされた。復帰戦ではグレコローマンスタイルの世界王者、ジョー・ウォーレンにスプリット判定で敗北。そして妻との離婚。その後の復帰戦でも日本の金原正徳に3-0の判定で敗北した。

「ファイト・スタイルも変えてたし、膝が信じられなかった。」山本は彼の連敗をそう説明した。「フットワークを使わなかったのがマズかった。」

山本はフェデリコ・ロペスを相手に101秒のノックアウト勝利で復活した。にもかかわらず、彼の株は落ち始めているのではないか、とか、かつての”KID”に本当に戻っているのか、と言う疑問はある。

「そう思う人は相手に賭ければ良いよ。」彼は語った。「全財産を俺の相手に賭ければ良いじゃん。で、全額失うの。」 彼は再び微笑んだ。

”KIDはこれまで”説には乗らない人間が二人いる、デミトリオス・ジョンソンとヒュームだ。特にヒュームは5月の金網での試合で”KID”の仕上がりはこれまでで最高だったと考えている。

「本来彼は膝の負傷から完全には回復していなかった。だけど彼は最後の相手を粉砕し、今は多くのことをより良く行えるようになった。」ヒュームは語った。「彼はより賢く、冷静なファイターで、試合中ずっと相手を粉砕するためにラッシュを仕掛けるような選手ではない。彼はうまく距離を判断し、そしてもはやその身体能力に任せるだけの戦い方はしなくなっている。最高の”KID”がやってくるだろうと予想している。」

試合の2週間前、日本で山本は11年連れ添った愛犬、ソニーと死別し悲しみにくれた。

「癌だったんだ。凄いキツかった、あの時は悲しかったよ。」彼は語った。「二十歳のときに俺のオフクロも死んじゃって…。でも身近な人が死んでしまっても彼らはそばで見守ってくれている。生きているときは俺がどこかに行ってるときは会うことはできない。でも死んだ後はずーっと俺を見守ってくれているんだ。だから強くなくっちゃね。」

彼の肉体には無数のタトゥーが掘り込まれ、その左の前腕には彼をその様な考え方に至らせた哲学が掘り込まれている。その言葉の意味は”本当の力が与えられることは無い、奪い取らなくてはならない。”と言うものだ。映画ゴッドファーザー三部作の最終話が有名にした金言だ。山本はその言葉が彼がその家族の系譜に属することを当たり前のことだとは考えないように己を戒めることを助けてくれたと語る。彼の父親は1972年のオリンピックで日本を代表して戦い、そして二人の姉妹はレスリングの世界タイトルを獲得している。

「みんなが言うんだよね、”お前は生まれつき強い、なぜならお前の家族はみんなファイターだから。お前の父親はオリンピック・レスラーだ、お前の姉妹は世界チャンピオン達だ。”ってね。でもそうじゃないんだよね。」山本は続ける。「プロ・アスリートを両親に持っている人なんてたくさんいるよ、でもその子供はうまくいかない。だからそれは生まれつきじゃないの、トレーニングをして、トレーニングし続けて、それでその力を手に入れるの。」

彼のキャリアの黄昏になって、ようやく山本はユライア・フェイバーや他のトップ・ファイター達と戦えると言うことを思い描く。そして彼は最高の状態、これまで以上に面白く、そして爆発的なコンディションで試合を向かえることを約束する。

「過去は振り返らない。全部忘れた。頂点に立ちたい。ベルトが欲しい、それだけ。」

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