熟考、UFC on FOX2

マイケル・ディサントが土曜の夜に行なわれたUFC on FOXのエヴァンスxデイヴィス、ソネンxビスピン、そしてワイドマンxマイア戦を解説。

エヴァンスが失望したことは疑いようがない、しかし正しいアプローチだった

フィル・デイヴィスを相手にほとんどワンサイド・ゲームで試合に勝利したものの、その内容が素晴らしいものとは程遠かったと最初に認めるのはラシャド・エヴァンスその人だろう。エヴァンスは若くてより大きな対戦相手を試合開始のベルから試合終了のベルが鳴るまで、より素早い打撃、より効果的なテイクダウン、そしてはるかに優れたグラップリングでコントロールした。問題はエヴァンスがその実力差のあった対戦相手を仕留める事ができなかった、ということだ。そして試合をフィニッシュすることができなかった事は、最近ティト・オーティス戦でノックアウト勝利を収めたにも関わらず、エヴァンスの不安材料となった。

チャンスはあった。エヴァンスは彼のスタンドを強化し、パンチにこだわりながら観客をゾクゾクさせるようなノックアウトのチャンスを作り出すためにその手数を増やすことができたはずだった。またグラウンドでもサブミッションやパウンドアウトの機会をもっと作り出し得たはずだった。しかし彼はそういったことは一切しなかった。その代わりエヴァンスは本当にチャンスを掴もうとはせず、攻防を完全にコントロールすることに集中し続けた。その結果それは試合を実戦と言うよりはスパーリングといった感じのものに変質させた。

私は元王者の保守的な試合に対するアプローチをこれまでに何度か批判してきたことを隠し立てするつもりはない。だが、今回は批判ではない。実際のところ、私は彼のパフォーマンスに正反対の視点を持っている。私はエヴァンスの賢い勝利に賞賛を送りたい。それは何故かって?なぜなら彼はファンに最大のライトヘビー級の試合を与えるために必要なことをしたからだ-長らく待望されてきた-
421日に実現する王者ジョン・ジョーンズとの因縁の試合を…。

エヴァンスは試合に勝利した場合、怪我を治し、肉体を再生させ、彼のキャリアで最も意義のある試合になりうる一戦にしっかりと備えるための時間はわずか
84日しかない、と言うことを念頭においてデイヴィスとの試合を行なった。また、もしデイヴィス戦で”小さな怪我”以上の負傷を負ってサスペンションを受けたりすれば、わずかな空白期間の間にジョーンズと対戦するチャンスは誰か他のファイターの、おそらくはダン・ヘンダーソンの手に渡ってしまうだろうということも理解していた。そのためエヴァンスは2012年最初の本当のメガ・ファイトの、そして彼のキャリアでおそらく最も豪華な決算日の舞台を整えるために必要なことを遂行したのだ。

もちろん皆さんが思うところは判っている。土曜日は確かにエヴァンスがこれまで試合をした中でも最も大きく、そして最も輝かしい舞台だった。”シュガー”にとってこれは自身を伝説のファイターに成し得る黄金のようなチャンスでもあった。しかしそれら全てはジョーンズとの垂涎のマッチアップと比べれば色褪せる、というものだ。多くの人々が反対の視点を持っていることだろう。しかし私が彼が試合で保守的なアプローチをとった決断を完全に支持するのはこの一度きりだ。さすがだ、チャンプ!


デイヴィスは様々な教訓を得た

カレッジ・レスラーとしてはフィル・デイヴィスはラシャド・エヴァンスよりもはるかに優れたレスラーだった。その多くは彼らの尊敬に値するビッグ10での戦績を見れば明らかだ。しかしエヴァンスははるかに優れた
MMAレスラーなのだ。そのことは土曜日の試合を見れば同じように明らかだった。

デイヴィスはレスリング・エリートのスキルをどのように効果的なファイティング・スキルに変貌させるのかを学ぶ必要があるようだ。彼がまさにそのことをするだろう、ということに私は疑問を持ってはいない。しかしその作業では時として彼がラシャドの洗礼を受けたように、彼のアマチュア・チョップと言う現実に目を向けるために、レスリングのリアリティ・チェックが必要になる。デイヴィスは彼のパワー・ダブル(ダブル・レッグ・テイクダウン)をセットアップするためにどのように打撃を活用するべきなのかを学ぶことに集中する必要がある。彼は柔道スタイルの投げを遂行できるように、そしてハイ・クロッチ・テイクダウンに変化できるようにクリンチの攻防をより発展させる必要がある。そして彼は効果的にタックルを切ることができるようにバランスを保ちながら打撃を繰り出す術を学ぶ必要がある。ひとたびこれらのことを学べば、この男にとって限界はまさに”天”だけだ。

ところでデイヴィスがエヴァンスよりも丸々一階級ほど体が大きく見えたのは私だけだったのだろうか?金網の中の彼は絶対的に巨大に見えた。彼がどれほどの減量をしたのかは知らないが、それが著しい重量だったろうと思わざるを得ない。数年以内にデイヴィスが束のように筋肉を身につけ、ヘビー級でアリスター・オーフレイム戦を引き当てるのを見たとしても私に驚きはないだろう。


ソネンはプレッシャーに囚われた?

単刀直入にいこう。チェール・ソネンはマイケル・ビスピン戦でのパフォーマンスは一晩限りの不調だったと願った方が良いだろう。さもなければ今度の夏に彼はアンデウソン・シウバにむごたらしい敗北を喫することになるだろう。ソネンは
1ラウンドの終わりにはガス欠しているように見えた。試合を通じて彼のテイクダウンは予測しやすくそして無気力に見えた。そして彼の打撃はいつものようにぎこちなかった。

これらが辛らつな言葉だということは分かっている。だがこの男はこの試合に向けて彼こそが”無敗”で
"正真正銘”のファイターだと主張してきたのだ。彼は偽者のチャンピオンベルトと共に歩き回り、さらに、まさしくWWEスタイルで悪役レスラーのような情緒と抑揚をこめ、脅迫的な装いをとりながら”棄権者”に関するメッセージを発信した。それは楽しいものだった。ビスピンでさえ、その冗談は楽しいものだったと語っていた。

そのような大言壮語は「印象的なパフォーマンスを見せなくてはいけない」というとんでもないプレッシャーを生み出すことになる。ソネンは勝利した、しかし彼は自身の言葉を裏づけするこはできなかった。実際、名コメンテイターのジョー・ローガンを含む何人もの人々がビスピンこそが勝者として評されるべきだと感じていた。念のために言えば、私も同感だ。しかし試合は接戦極まりなくジャッジのスコアに心底本気で不満を述べることは誰にも出来ない。
3027をつけたソネンに好意を寄せていたかと思われる一人のジャッジ以外に関しては、だが。

元タイトル挑戦者のビスピンに対する苦戦は完全に予想外だった。”ザ・カウント”はミドル級屈指のテイクダウンの難しいファイターで、さらに彼を押さえ込むことは困難を極める。
1ラウンドの終わりにはソネンがどうやらガス欠に陥っていたということも完全に予想外だった。

チーム・クエストの傑物はエナジャイザー・バニーに惑わされることなどは決してなく、燃料タンクの容量が小さなファイターとして知られている訳でもない。私はこれまで彼のカーディオは平均よりも優れている、と見ていた。しかし土曜の夜にその考えは彼をはっきりと裏切った。

TV
放映の中で闘うプレッシャーが彼のコンディショニングをあっという間に食いつぶしたのかもしれない、と悩まざるを得ない。さらにソネン自身の大言が更なるプレッシャーをもたらしたのか、と悩まざるを得ない。公表されていないトレーニング中の負傷で最高のシェイプを作り出すことができなかった、そんな原因も有るかもしれない。もしそうだとしたら、ソネンはその手のプレッシャーを克服する術を見つけ出さなくてはならない。なぜなら彼の次の試合はさらに大きな大会でのものとなるだろうからだ。そしてシウバがアバラを負傷した状態で金網に入ってくることはもはやないだろうからだ。


ビスピンのパフォーマンスには好材料以外見つからず

私の試合前解説をお読みになった方は私がマイケル・ビスピンがチェール・ソネンを打ち負かす可能性はほとんどないと見ていたことをご存知だろう。それの理由は私がソネンの方がより優れたファイターだと信じていたからではない。私の意見はビスピンのアマチュア・レスリングの血統の欠落と、
11日間と言う期間はソネンのテイクダウンを防ぐ準備をするには十分な時間ではない、と言う考えに強固に基づいていた。

英国人は最終的には試合に敗北した。なぜなら彼はそれぞれのラウンドでテイクダウンされたからだ。にもかかわらず、彼はとんでもないテクダウン・ディフェンスを見せ、そして一度テイクダウンされてもそこから再び立ち上がるという印象的な能力さえ見せ付けた。ここで皆さんに思い出して欲しい、ソネンは元
USオリンピック・レスリングチームの補欠選手でビスピンにはアマチュア・レスリングの経験は全く無い、ということを。そのフィルターを通して土曜日の試合を見てみると、彼のパフォーマンスは驚異という他に言うことが無い。


ワイドマンのギャンブルは成功

クリス・ワイドマンがリスクをとることを恐れていないことは明らかだ。二週間にも満たない準備期間でワイドマンは
UFCの二度目のFOX放映となる大会でビスピンの代役を務めてデミアン・マイアと対戦することに合意した。ワイドマンの様な若いファイターにとって、それは正にのるかそるかのキャリアの分かれ目となるチャンスだった。

TV
放映の中でコンテンダーに勝利することは若い有望選手の商品価値にとっては最高の起爆剤になる。ただし間違いなくMMA史上最大規模になる視聴者達の眼前でマイアに一方的に粉砕される事でもあれば、それがノックアウトであれサブミッションであれ彼の将来の試合に興味を持ってもらうことは難しくなるだろう。二つ目のシナリオこそが現実的なリスクだった。なぜなら1ラウンドに試合をフィニッシュできなければワイドマンがガス欠するだろうことは確実だったからだ。それは単に二週間にも満たない期間で適切なシェイプを得る現実的な方法などは存在しないからだ。

ワイドマンは意に介さなかった。彼はとにかく挑戦するために歩を進めた。彼は
2ラウンドの序盤に予想通りの巨大なカーディオの壁に突き当たったが、このスポーツで間違いなく最も危険なサブミッション・アーティストを相手に明確な勝利を収めるために彼が奮闘することを止めることができるものは何も無かった。

マイアとの対戦を受ける、と言うワイドマンの決断は彼のキャリアを急発進させる輝かしい道筋へと変貌した。私にはそれがマッチアップの相性からくるリスクを計算した上での決断だったのか、それともワイドマンの自身のスキルに対する揺らぎ無い自信に基づいたものだったのか知る由は無い。いずれにしても、この青年は自身が
185ポンドの階級にふさわしいファイターだと証明したのだ。


マイアは彼のルーツに戻る必要がある

マイアのこの数年のグラップラーからストライカーへのドラマチックなスタイルの変更はファイターとしての彼の向上になんら寄与するものが無かった。全く正反対、というのが現実だ。マイアは非常に予想のしやすいストライカーで、ワイドマンのようなファイターにとってはたとえショート・ノーティスでもその対戦の受諾には何の躊躇も無いだろう。対照的にマイアはこのスポーツでは比類ない危険なグラウンド・ファイターだ、と言うのが私の意見だ。チェール・ソネンを頭から投げ落とし、完璧なトライアングル・チョークに捕らえた彼のことを思い出して欲しい。その時の対戦相手はアンデウソン・シウバをあわやと言うところまで追い込んだ、あのチェール・ソネンなのだ。

私はワイドマンが二度マイアを相手にグラウンドに持ち込んだときに、なぜマイアがサブミッションの攻防ではなく立ち上がることを選択したのかを永遠に疑問に思い続けるだろう。私の意見では、あの二つのテイクダウンはワイドマンが試合中に犯した唯一の、そして明らかなミステイクだ。あれはブラジル人にとって疲労困憊した対戦相手を相手に目の覚めるようなサブミッションを極める完璧なチャンスだった。だがマイアはそのチャンスに何もしなかった。

2008
年のマイアがあんなチャンスをみすみす逃すことを想像できるかって?私にだって想像できない。

マイアのチームの誰かが、この男の横に座って腹を割って話すべきだ。
34歳、もはやその打撃をアンデウソン・シウバやビトー・ベウフォートのようなレベルまで改良する時間は彼のキャリアには残されていない。マイアにそんなことは起こらない。もちろん彼がその階級の頂点まで登り詰めたいと願うのであれば全体のスキルを改良し続ける必要があるだろう。しかし彼は何が彼をトップ中のトップにならしめたのか -異次元のレベルのサブミッション・ゲーム- を忘れるべきではない。

マイアのゲームを最大化する最良の方法を提案する、と言う私のうぬぼれを少しの間ご容赦いただきたい。まず最初に、そしてなによりも彼は右のパンチの打ち方を覚える必要がある。そのたった一つの改良だけでも彼のスタンドアップ・ゲームはより効果的になるはずだ。次に彼は打撃をテイクダウンのセットアップに使う方法を学ぶ必要がある。三つ目に彼はテイクダウンの後に即座に次のテイクダウンに入る練習をそれが彼のゲームの一部として信じきることができるまで行なうべきだ。

前述したとおり、マイアがスタンドでのホームランバッターに変革を遂げることはないだろう。有り得ないことだ。そして彼が近い将来スティック・アンド・ムーブ(くっついては離れる)系のファイターになることも無いだろう。つまりソネンと呼ばれてはいないシウバ、ベウフォート、ビスピン、ムニョス、そして岡見といったミドル級の他のトップファイターの様にスタンドでポイント・アウトをする戦い方、というのはおそらく選択肢にはない。

彼のゲームプランはどの試合でもグラウンドに持ち込むことに集中するべきだ。彼の打撃はテイクダウンのセットアップにのみフォーカスされるべきだ-これに尽きる。彼の世界レベルのサブミッションの攻防を放棄している行いは現在の
UFCが犯している最大の犯罪だ。相手をグラウンドに引きずりこむ、このことがマイアに勝利への最高の機会をプレゼントする。私なら世界中のどのミドル級のファイターが相手でも、もちろんアンデウソン・シウバも含めて、彼には一日中、いや、毎日でもグラウンドに重点を置いた試合をさせるだろう。スタンドの攻防に重点を置いた試合には全く正反対に感じている。

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