ルーク・ロックホールド:疾走する男

Strikeforceミドル級王者のルーク・ロックホールドが日本時間5月19日に開催されるUFC on FX 8でついにUFCデビューを果たす。新たな冒険のその先で、ロックホールドは再び“それ”をその腰に巻くのだろうか…?
ルーク・ロックホールドには挑戦を前にしてそれから目を背けることのできない癖がある。それこそがある晩、彼自身が気がついたときにはコスタリカ・アリーナで両中指を立てながら、1トンの雄牛を目掛けて全力疾走していた理由だ。

Strikeforceで6連勝を飾ったばかりのロックホールドは、彼の言葉で言うところの「リラックスして体を伸ばす」ためのサーフィンの為に南に向かった。しかしその予定は彼が友人たちと、観客が参加することのできるブル・ライディング(猛牛乗り)の祭りの会場にたどり着いたことにより変更になった。「その夜の終わりまでに、俺は“やらないわけには行かないな。今夜が唯一のチャンスだ。”って気分になっていたんだ。」

そこでロックホールドはフェンスによじ登るとためらう事無く会場に飛び降りたが、そこで彼は囲いの中には他の参加者が居ないことに気がついた。「いつの間にかその晩最後の雄牛の番になっていたんだ。そう、その晩のとびっきりの猛牛の番にね。」ロックホールドは語った。これと言った戦略もなしに、ロックホールドは他の誰もと同じように、“それ”に向かって一直線に走り始めた。「Vansの靴を裸足で履いて、フットボール・プレイヤーのようにソイツ目掛けて真剣に走ったよ。」ロックホールドはその一瞬を回想する。「雄牛は頭を下げると俺に向かって走り始めた。どうにか俺は身を翻し、突風が体の側を吹きぬけるのを感じた。俺の両足からほんの数インチってきわどさだったよ。」

自分の肉体を木っ端微塵にされる心配がもはや無くなった事を確信したロックホールドは勝利のダンスを踊ると、彼と共にその興奮を分かち合ってくれていた筈の友人たちのところに戻った。「ところが、彼らは囲いの外から俺にこんなことは二度とするな、と怒鳴りつけるだけなんだ。彼らは完全に真っ青になっていた。」ロックホールドは語る。最も残念だったことに関して、「俺の仲間たちは俺の事を心配するあまり、せっかくのサイコーの一瞬の写真一枚すら撮ってくれていなかったんだ。俺は何事も一度は経験してみたいんだよ。」とロックホールドは説明する。

ロックホールドが挑戦してきた“一度は経験してみたい物事”の数々とその放浪の履歴はまるで国際的な大型チェーン店の所在地リストの様だ。オーストラリア、コスタリカ、メキシコ。サンタクルーズの町で喧嘩をした後、崖から飛び降りたこともある。急遽決まったインド旅行のさなかに友人のセコンドに付いたりもした。東京では生の馬肉を食べ、地下鉄での揉め事の撮影もした。Strikeforceのベルトを獲得したのもオハイオ州コロンバスの大自然の中でのことだった。そして今、彼の目はメインイベントで元王者ヴィトー・ベウフォートと戦うブラジルのジャラグア・デル・ソルへと向けられている。

MMAへの旅
2006年、22歳だったロックホールドを友人がアメリカン・キックボクシング・アカデミーへと連れて行った。そこではMMAファイターにあこがれる人々が、そのMMAのスターダムに駆け上がると言う夢を最初のスパーリング・セッションであっと言うまに粉砕され、足取りもむなしくジムを後にする、と言うことが何度となく繰り返されてきた名門ジムの一つだ。しかしロックホールドにまつわる他の様々なエピソードと同じく、彼はここでも例外的なストーリーをつむぎ出した。マウスピースが必要だ、と告げられたロックホールドはジムを飛び出てマウスピースを一つ買ってくると、隣の寿司レストランから熱湯を拝借すると、マウスピースを自分の歯形に合わせて調整した。

「彼は“ノー”と口にすることを決して受け入れない、そのことに私はいつも感銘を受けました。」ロックホールドのヘッドコーチ、ハヴィエル・メレンデスは語る。「ここに来るほとんどの若者達がただ話をするだけだったり、“次のときにやってみます”と言うだけですが、彼はスパーリングをすることに非常にエキサイトしていました。」そこでメレンデスはロックホールドをリングに上げると、それまでに打撃の経験が皆無だったロックホールドの相手に、UFCでの試合に備えてトレーニング中だったヘビー級のクリスチャン・ウェリシュをあてがった。

「俺がハイキックを叩き込むと俺たちはレスリングの取っ組み合いになった。俺は本当にうまくやったよ。」ロックホールドは初めてのスポーツに挑戦する人々のほとんどがそうであるのが当然かのように語った。「そうしたら彼らは俺に次にマイク・スウィック、それからボビー・サウスワースを当ててきた。誰が相手でも俺はうまくやった。ハヴィエルにリングから下ろされると、彼は俺がこのスポーツで凄いところまで行ける、と言ってくれた。」

この短時間のオーディションを経て、ロックホールドはAKAに最も新しいルーキーとして迎え入れられ、そのことによりロックホールドの生活はトレーニングを中心にするものへと一変した。大学で受講するクラスの数を減らし、仕事を変え、そして時にはジムの天井裏に寝泊りさえして容易にトレーニングに集中できる環境を作りあげた。2007年7月、プロ初試合を迎えた。ロックホールドはプロ3戦目にして、デビュー後わずか7ヶ月しかたっていなかったが、Strikeforceの対戦カードに食い込み、そしてプロモーションが1月にUFCに吸収されるまで、そこでプロフェッショナルとしてのキャリアを重ねることになった。

豊かな才能
「MMAの試合を経験する前のルークにAKAジムで会ったことを私は覚えていますよ。」Strikeforceの創設者兼CEOのスコット・コーカーは語る。「彼は基本的にジュウジュツ・ガイ(訳注:しつこい寝技を主体とするタイプのファイターの意)でジムの皆さんは彼こそがStrikeforceミドル級の次の王者だ、と言っていました。私は彼を見て、そして彼にはとんでもない商品価値がある、と言うことに気が付きました。」その後ロックホールドのプロデビュー戦を観戦したコーカーはロックホールドとの契約を結んだのだ。

「アイツは何でも出来るんだ。」コーミエは語る。「アイツは素晴らしいバレーボール選手で、バスケットボールも出来る。サーフィンだってお手の物。野球に関しては信じられないレベルだ。チームの奴らとワイワイやると、俺は“なんてこった、ベストなアスリートは俺だと思っていたぜ…。”ってな気分になるんだ。」

その優れた身体能力と、強い競争心は彼の系譜に説明を求めるのが良いかもしれない。彼の父親はプロ・バスケットボール選手であったし、彼の母親はテニス・コーチをしている。兄弟の一人はプロ・サーファー、そして姉妹には柔術王者も居る。ロックホールドのアスリートとしての道のりは柔道への愛情と共に始まり、そのことは彼が高校でレスリングを始めたときに大きな助けとなった。しかし大学でレスリングを続けることよりも柔術にスリルを見出した彼は高校卒業後は柔術に専念。すぐにブラジリアン柔術のチェスのような要素が要求する長い手足と分析力の高い思考が自身に完璧に備わっていることに気づき、青帯、そして紫帯で世界王者に輝いた。

2009年は2度、そして2010年は3度、Strikeforceで試合を行ったロックホールドだが、当時のロックホールドのスケジュールには彼の冒険旅行以外の制約は何もなかった。「ルークが次に試合ができるのは何時か、と尋ねると、“分からない。ルークはメキシコかコスタリカにサーフィンに出かけている。”と言うんだ。私はサーファーであるファイターと言うものを聞いたことがなかったので、彼の背景を調べてみて、そして彼が偉大なアスリート達の系譜から生まれ出た男だと言うことを理解したのです。」とコーカーは当時を壊述する。

次なる舞台:オクタゴン
ロックホールドがアメリカ国内に居るときは、その生活はAKAを中心に回っている。週に3日のスパーリング・デイ、火曜日にレスリング、木曜日に柔術、さらにカーディオ・トレーニングに夜練習。ロックホールドのチームにはヴェラスケス、スウィック、カイル・キングスブリーと言った、Zuffaの強豪ファイター達が勢ぞろいしている。そしてロックホールドは特にコーミエのトレーニングを助けることに傾注している。「彼は俺を助けてくれた。だから俺は彼を助けている。」ロックホールドは続ける。「俺たちは互いに頂点に相手を押し上げようとしているんだ。」

また、ロックホールドはUFCのスター選手の中でついに自分を試すチャンスを得たことに興奮を隠さない。「最高の大会で戦っているのを見てきた連中と自分が試合をするようになる、と言うのは全く違う話だ。俺は彼らのことをリスペクトしている。だけど俺はベストになりたい。だから彼らと戦わない訳にはいかない。」

このインタビューはUFC 360に掲載されたものです。
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写真:ジョディ・モリス、トニー・ロバーツ

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