UFCファイトナイト・フェニックス見どころ:ヴェラスケスが満を持して復帰戦、注目のクロン・グレイシーのデビュー戦!

UFCファイトナイト 見どころ
UFCファイトナイト北京:カーティス・ブレイズ vs. フランシス・ガヌー【中国・北京/2018年11月24日(Photo by Jeff Bottari/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
UFCファイトナイト北京:カーティス・ブレイズ vs. フランシス・ガヌー【中国・北京/2018年11月24日(Photo by Jeff Bottari/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
日本時間2月18日(月)に開催されるUFCファイトナイト・フェニックスのメインイベントで注目のヘビー級マッチ、フランシス・ガヌー(カメルーン)対ケイン・ヴェラスケス(アメリカ)戦が行われる。

2度のチャンピオン、2年半ぶりの降臨

これまで2度にわたってUFCヘビー級王座を戴冠、王座在位日数は歴代1位の1,281日間という、ヘビー級を代表する選手であるヴェラスケス。UFC入りした2008年から2013年までの5年間に12戦10勝9ノックアウトと猛威を振るうも、これ以降は度重なる負傷に悩まされてきた。2013年10月にジュニオール・ドス・サントスをKOしてタイトルを防衛した後、右ヒザのケガで1年8カ月の欠場を余儀なくされる。2015年6月の復帰戦でファブリシオ・ヴェウドゥムに敗れてベルトを失うと、再びケガで1年を棒に振った。そして2016年7月、UFC 200でトラビス・ブラウンを退けるも、三度(みたび)の長期欠場に入り、今回は実に2年半ぶりの復帰戦を迎えることとなるのだ。

無尽蔵のスタミナを武器に、ひたすらプレッシャーをかけ続け、ノンストップで攻撃し続ける超攻撃型のファイトスタイルを貫く。1分間の打撃ヒット数6.49はヘビー級第1位である。オールアメリカンに2回選ばれたレスリング力でテイクダウンをとると、柔術黒帯の本領を発揮するまでもなく、強烈なグラウンド&パウンドで相手の意識を飛ばしてしまうのがヴェラスケス流だ。

欠場期間が長かったこともあり、現在はヘビー級ランキングには名を連ねていないものの、度重なる負傷欠場がなければ、ヴェラスケスこそヘビー級でMMA史上最強戦士であると指摘する向きも多い。UFC解説者を務めるジョー・ローガンもその1人だ。

「個人的には、これまでに見てきたヘビー級ファイターの中で最強なのは、ブロック・レスナーでもエミリャーエンコ・ヒョードルでもなく、ケインだと思う。ケインには超人的な忍耐力と、相手を自分のペースに巻き込む力があって、対戦相手はプレッシャーをかけられるだけで疲弊(ひへい)してしまうんだ」

「ただ、本当にケインが最強なのは気持ちの面だと思う。彼の身体はボロボロだ。腰にも肩にもヒザにもメスを入れている。あんなにボロボロになってしまうのは、普通の人なら耐えられないような痛みにケインは耐えてしまうからなんだ。野獣だよ」

ヴェラスケスは今回の長期欠場について、次のように説明している。

「いろんなケガが癒えるのに半年かかったが、それ以降は体調万全だ。実はこの間に家族が1人増えたんだ。妻の妊娠中から息子が1歳になるまで、ずっとそばにいてやることにした。長女の時には忙しくてできなかったことだったからね」

「ただ、オフの間にも常に練習して進化し続けている。MMAはまだ歴史の浅いスポーツだから、俺たちはいつも新しいテクニックを研究している。ファンも対戦相手も、俺がこんなことをするとは思いも付かないようなテクニックを身につけているよ」

地元アリゾナ州での復帰戦に、ヴェラスケスの思いはひとしおだが、さしものヴェラスケスも、“乗用車の衝突事故”クラスの破壊力だとされるガヌーのメガトンパンチの恐怖に常に最大限の警戒を強いられる厳しい戦いとなる。長い欠場期間明けのヴェラスケスが一体どんな戦いを見せてくれるのかが、この試合のキーポイントとなろう。

ガヌー復活への咆吼(ほうこう)

2017年に、コミックヒーローのような肉体とモンスター級のパワーでノックアウト劇を連発して人気急騰、UFC会長のデイナ・ホワイトが「この男はやがて、世界的なロックスターのような選手になる」と太鼓判を押していたのがガヌーだ。

UFC初のアフリカ出身王者の誕生か、と期待が高まった2018年1月、当時のヘビー級王者スティペ・ミオシッチに挑戦した試合で思わぬ大差の完封負けを喫すると、続く7月のデリック・ルイス戦では3ラウンドにわたって攻撃を全く繰り出すことができず、ガヌーはふがいない醜態をさらしてしまった。試合後には「前回のミオシッチ戦の恐怖が抜けなかった」と告白しており、もはやガヌーから闘魂が失われてしまったのかとファンを心配させた。

しかし、前回のカーティス・ブレイズ戦(2018年11月)では、第1ラウンドわずか45秒で鮮烈なノックアウト勝ちを収め、「2018年は厳しい学びの1年だった。つらいことも多かったけれど、たくさんのことを学んだ。そして俺は別人として生まれ変わったんだ」と力強いコメントで復活を宣言している。

最近、母国カメルーンに初のMMAジムを開設したことを自身のソーシャルメディアで報告するなど、公私ともに充実のガヌーではあるが、正真正銘のトップファイターであるヴェラスケスを相手に、生まれ変わった強い姿を見せてくれるのか、それとも弱々しいガヌーが顔を出してしまうのか、ガヌーの今後を占う重大な試金石となる。

現ヘビー級王者ダニエル・コーミエが年内引退を示唆する中、この試合の勝者が次期王者に最も近い存在の1人となることは間違いない。試合が終わった時、オクタゴンで勝利の雄たけびをあげ、復活を証明してみせるのは果たしてどちらなのか。今後のヘビー級の行方を見据える決定的に重要な一戦だ。

クロン・グレイシー、UFC初見参

UFCファイトナイト・フェニックスにはまた、日本でもおなじみ、クロン・グレイシー(ブラジル)が待望のUFC初登場を果たす。400戦無敗の男ヒクソン・グレイシーの息子であり、19歳でブラジリアン柔術黒帯取得という格闘サラブレッドだ。柔術で多数の選手権を制覇した後、日本でMMAデビューを飾り、戦績は4戦4勝4フィニッシュのパーフェクトレコードを残す。前回は2016年12月に元UFCランカーの川尻達也に一本勝ちを収めており、実力は証明済みだ。グレイシー直伝の寝技に、ディアス兄弟仕込みの打撃を携えて、いよいよクロンが世界の舞台に歩みを進める。

これまでUFCと交わったことのないヒクソンがセコンドとして姿を見せたり、入場シーンでグレイシートレインと呼ばれる独特の隊列が見られたりすれば、格闘技ファンにはたまらない刺激的な場面となることだろう。ネイト・ディアスがクロンのセコンドに付くという情報もある。胸をアツくしてじっくり堪能したい一戦だ。UFCファイトナイト・フェニックスをどうぞお楽しみに。

【文 高橋テツヤ】
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