UFCファイトナイト・ナッシュビル見どころ:トンプソン対ペティス、再び輝くための闘いへ

UFCファイトナイト 見どころ
UFC 209:タイロン・ウッドリー vs. スティーブン・トンプソン【アメリカ・ネバダ州ラスベガス/2017年3月4日(Photo by Brandon Magnus/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
UFC 209:タイロン・ウッドリー vs. スティーブン・トンプソン【アメリカ・ネバダ州ラスベガス/2017年3月4日(Photo by Brandon Magnus/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
日本時間3月24日(日)に開催されるUFCファイトナイト・ナッシュビルのメインイベントでは、ウェルター級ランキング3位につけるスティーブン・トンプソン(アメリカ)とライト級ランキング8位ながらウェルター級に挑戦するアンソニー・ペティス(アメリカ)の一戦が行われる。

トンプソン、ノーモア判定決着宣言

トンプソンとペティスの間には共通点が多い。まず、両者とも前回は敗戦を喫しており、連敗を避けるためにも今回は何としても勝ちたい状況に置かれていること。2人とも、独創的な立ち技の名手で、記憶に残るフィニッシュを量産してきた人気者であること。そしてどちらも勝ち星に恵まれない時期を経て、今また、かつての鮮烈な輝きを取り戻そうと苦闘していることだ。

トンプソンは前ウェルター級王者タイロン・ウッドリーに2度にわたって挑戦したものの、UFC 205(2016年11月)ではドロー、UFC 209(2017年3月)でのリマッチではマジョリティ判定負けでベルト奪取に失敗。前回の試合(UFCファイトナイト・リバプール、2018年5月)でもダレン・ティルに判定負けを喫している。

ドローの試合も判定負けの試合もいずれも大変な僅差で、トンプソンに軍配が上がっていてもおかしくはない内容だったことは確かだ。ただ、最近はトンプソンお得意のカウンター攻撃中心のスタイルが対戦相手に研究されてしまったのか、鮮やかな空手殺法は影を潜め、にらみ合いの神経戦が増加、最近5試合はいずれも判定決着となっている。

「最近の敗戦には納得し難い面がある。これ以上、勝敗をジャッジの手に委ねるわけにはいかない」とトンプソンは語っており、鮮烈な打撃を再びさく裂させるべく、カウンターの技術をグレードアップ中なのだという。

「“もっと前に出て、根性でパンチを出しまくらないと”と言ってくる人もいるけど、それは自分のスタイルではない。でも、カウンターを待つだけでなく、もう少しアグレッシブに対戦相手を迷わせ、エサをまかないといけないと思って、技術を磨いているところだ。今後、俺と戦う相手は“おや、スティーブンは攻め込まれると弱いのかな”と勘違いして無防備に突っ込んでくることになる。そうすれば相手を仕留めることができる」

メンタル面もリフレッシュしたペティス

一方、”ショータイム”キックとよばれるケージを駆け上がっての三角蹴りや、目にもとまらぬ高速アームバーなどの派手な妙技で2013年にライト級タイトルを奪取、ペティス時代が当面続くと思わせるほど強く輝いていたにもかかわらず、ペティスの在位は思いのほか短命で、2015年にはハファエル・ドス・アンジョスにノックアウトされてタイトルを奪われてしまう。そしてその敗戦から精神的に立ち直るのに時間がかかったとペティスは告白している。

「あの日はドス・アンジョスの方が強かった・・・、それだけのことを認められるようになるまで、ずいぶん時間がかかった。当時はすっかり有頂天になっていたし、基本的にはパンチを当てられたことすらなかった。だから実際にはやられたというのに、自分を過信しているから負けを認められず、メンタル面で思考停止に陥っていた」

「チャンピオンの頃には、これからはアルドやディアスやマクレガーを相手に、どんどんスーパーファイトをしていくんだ、と考えていた。だから、自分抜きで次々にビッグマッチが行われていくのを見ているのはフラストレーションがたまったよ」

ベルトを失ったペティスは、そこから1勝4敗とスランプに陥る。エディ・アルバレス、エドソン・バルボーザに連敗を喫すると、そこからいったんフェザー級に階級を下げたが、マックス・ホロウェイのタイトルに挑戦した試合では計量に失格した上にKO負けを喫するなど精彩を欠く。しかし2017年7月にライト級に復帰、ジム・ミラーを下すと、その後はダスティン・ポワリエとファイトオブザナイトを演じ、さらにUFC 226のマイケル・キエザ戦では見事な三角締めで勝利、かつての輝きを垣間見せた。

そして前回、UFC 229でのトニー・ファーガソン戦では、残念ながら試合中に手を負傷してしまい、2ラウンド終了時点でセコンドが試合を止めたが、年間ベストバウト級のスリリングな熱戦で、3試合連続でのファイトボーナスを獲得した。過去9戦で3勝6敗といぜん星には恵まれていないペティスだが、そのパフォーマンスは高いレベルに戻ってきている。

体格差もお構いなし、ペティスの勝算

今回の試合は、ペティスが1階級上のトンプソンにソーシャルメディア上で挑戦状をたたきつけたことに端を発している。「スティーブンは1度は戦っておきたい選手の1人だったんだ」とペティスは述べている。

「俺のバックグラウンドはテコンドー、彼は空手がベースだ。伝統的なマーシャルアーティスト同士の、手のあう面白い試合になると思う。自分のキャリアを代表するような試合になる可能性もある。もちろん、彼がウェルター級のランカーであるという事実も好都合だしね」

「体格的には俺の方が不利だということは分かっている」と語るペティスだが、勝算は十分だ。「彼は相手をレスリングで押さえ込むような選手ではないし、そもそもグラウンドでは俺の柔術の方が強い。だからこの試合は打撃戦になる。体格差があっても、クリーンなパンチがヒットすれば、結果は同じなんだ」

実は、ウッドリーが2度にわたってトンプソンと戦った際、試合前の練習で仮想トンプソンを演じたのが、ウッドリーの同門のペティスだったのだ。

「彼の動画はチームぐるみでさんざん研究してきた。彼の能力や技術については情報をたくさん持っているんだよ」

しかし、この点についてトンプソンは意に介さない。

「タイロンとアンソニーはそもそも全然別の選手だし、しかもタイロンには俺の倒し方はまだ分かっていないよ。彼はずっと戸惑いながら戦っていた。俺はアンソニーよりもたくさん動くし、いろんな角度からの攻撃を使う。キックの多彩さでは俺の方が勝っている。パワーでもスピードでも負けない。ストライカーとしては俺が数段上なんだ」

ますます競争が過熱するウェルター級戦線で、本来の強さとかつての輝きを取り戻すのは果たしてどちらなのか。存在を賭けたスター選手同士の戦いのゴングは間もなく鳴る!

【文 高橋テツヤ】
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