UFCファイトナイト・ボストン見どころ:ワイドマン再始動! ロドリゲス対スティーブンス因縁決着へ

UFCファイトナイト 見どころ
UFC 230:公式計量セレモニーに登場したクリス・ワイドマン【アメリカ・ニューヨーク州ニューヨーク/2018年11月2日(Photo by Jeff Bottari/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
UFC 230:公式計量セレモニーに登場したクリス・ワイドマン【アメリカ・ニューヨーク州ニューヨーク/2018年11月2日(Photo by Jeff Bottari/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
日本時間10月19日(土)に開催されるUFCファイトナイト・ボストンのメインイベントでは、クリス・ワイドマン(アメリカ)対ドミニク・レイエス(アメリカ)のライトヘビー級戦が行われる。

ワイドマンが再び世界を驚かせるか

2015年12月のUFC 194でルーク・ロックホールドにタイトルを譲り渡して以来、過去5戦で4敗と負けが込む元ミドル級チャンピオンのワイドマンが、階級をライトヘビー級に変更して11カ月ぶりに戦線に復帰する。対戦相手は、いまだ負け知らずの急成長株、レイエスだ。

レイエスについて、「彼が今、どれほど自信を持っているのかはよく分かる。自分にも無敗の時期があったからね。自分が負けるなんて思いも寄らないのだろう。でも、誰しもいつかは負けるんだよ」と語るワイドマンは、今回の試合を次のように分析している。

「彼はこれまでレスラーとは対戦してきていない。自分のようなレベルのレスラーとの試合を味わったことがないんだ。前回のオーズデミア戦では4度もテイクダウンを取られている。今回は自分のレスリングと柔術が決め手になると見ている。彼にとっては痛い現実を知ることになるんじゃないのかな」

「ライトヘビー級初戦で、いきなり将来のチャンピオン候補と目されている選手と当たれることは、自分にとっても大きなチャンスになる。勝てば早速にもタイトル戦線で自分の名前が挙がってくるだろうからね」

2013年7月開催のUFC 162で、当時連続防衛記録を保持していたミドル級王者アンデウソン・シウバをノックアウトし、世界を驚かせたワイドマン。今度はライトヘビー級王者ジョン・ジョーンズを倒すことで、あの時の衝撃波を再現することが、今のワイドマンのたくらみになっているのだ。

「世界を驚かせることでおなじみの自分としては、1度ならず2度も、絶対王者を倒してみたいんだ。それが自分の作りたいレガシー、今の自分をかき立てている目標だ」

過小評価を吹き飛ばせ! レイエス

レイエスは2017年のUFCデビュー以来6戦全勝、ジャレッド・キャノニア、オヴィンス・サン・プルー、ヴォルカン・オーズデミアらを下して、一気にこの階級のトップコンテンダーの1人として頭角を現してきた。

「次戦の対戦相手としてワイドマンの名前が出てきた時には驚いたよ。予想もしていなかったからね。俄然(がぜん)やる気がわいたよ。ワイドマンに勝てば、タイトルに挑戦できるはずだ。何せ相手は元世界王者なんだからね」

すでにライトヘビー級ランキング4位のレイエスが、どこかインパクトが薄い気がするのは、必ずしも本人のせいだけではない。2018年10月のUFC 229でサン・プルーに勝った際には、試合後にハビブ・ヌルマゴメドフとコナー・マクレガーが巻き起こした大乱闘で、それ以外の試合の印象は吹き飛んでしまった。2019年3月にロンドンでオーズデミアに勝った際にも、試合後バックステージでホルヘ・マスヴィダルがレオン・エドワーズを殴りつけるという騒ぎが勃発、ファンの注目がさらわれる格好となった。

「自分はいまだに過小評価されていると思っている。というか、ほとんど注目されていないよね」とレイエスもいら立ちを隠さない。「ライトヘビー級全体をきちんと見ている人はいないのではないかな。とはいえ、自分にできることといえば、最高のパフォーマンスをすることだけだ。この階級では若い選手の台頭も著しいし、激しくて楽しい試合が多い。これから、自分がチャンピオンになるという道筋がどんどんクリアに見えてくることになるから、ちゃんと見ていてほしい」

遺恨清算戦! ロドリゲス対スティーブンス

セミメインイベントでは因縁のあるヤイール・ロドリゲス(メキシコ)とジェレミー・スティーブンス(アメリカ)が激突する。

両者は9月22日に開催されたUFCファイトナイト・メキシコシティのメインイベントでも対戦している。その際には、ロドリゲスがパンチを放った際に、スティーブンスの目を突いてしまうアクシデントが発生、第1ラウンド15秒、ノーコンテストという不完全燃焼決着で試合は終了した。

試合後、病院に直行したスティーブンスは深夜になってようやく視力を回復、検査の結果も比較的軽い裂傷ですんだことが明らかになった。

誰のせいでもない、不運なてん末だったはずのこの試合は、その後意外な展開をみせる。ロドリゲスがイベント後に「ジェレミーがもしウソをついていたのなら、今回の件は彼だけが一生背負っていくことになる」などと発言、あたかもスティーブンスが試合を投げたといわんばかりの発言をしたのだ。

これにはスティーブンスも「オレがフェイクをしたというのか? 目潰しをしてきたのはお前だろうが。いつでも構わない。リマッチだ!」と病院からソーシャルメディアを通じて怒りの反論に打って出た。メキシコシティでの試合に先立ち、標高に慣れるために5週間前から自腹で現地入りしていたという戦歴45戦の大ベテラン、スティーブンスが、故意に試合から逃げたと考えにくいことは確かだ。

その後、投宿先ホテルでも両者は一もんちゃくを起こしている。スティーブンスの説明によれば、「ヤイールがサムズアップしながら近づいてきたので、謝罪でもしてくれるのかと思ったら、『目をどうかしたのかい』と言うんだ。だからオレは、『は? お前が突いたんだろ? この野郎』と、ヤツのママの目の前でヤツのことを突き飛ばしてやったんだ」

ロドリゲスもこのホテル事件について、「あいつがアホみたいに突き飛ばしてきたので、『お前は試合を続けられたのにやめた。その事実を抱えて余生を過ごせ』と言ってやったんだ」と毒づいていた。

あれから3週間、現地時間で火曜日に行われた公開練習後に記者会見に応じたロドリゲスは、驚いたことに、この件はもう水に流したと語っている。

「あれ以来、めい想したり、読書したり、友だちと過ごしたりしているうちに、起きたことをありのまま、受け入れることができるようになったんだ。過去に生きる人は憂鬱になる。未来に生きる人は不安になる。今を生きることが幸せの秘けつだ。僕は今この時だけに集中している」

一方のスティーブンスは、「ヤツを殺してやる。それしか考えていない」と憤まんやるかたないテンションのままだ。因縁の決着戦は壮絶な果たし合いとなること必至だ。

【文 高橋テツヤ】
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