UFCファイトナイト・ブラジリア見どころ:チャールス・オリベイラ、ここから始まるトップコンテンダーへの道

UFCファイトナイト 見どころ
UFCファイトナイト・サンパウロ:チャールズ・オリベイラ vs. ジャレッド・ゴードン【ブラジル・サンパウロ州パライーゾ/2019年11月16日(Photo by Alexandre Schneider/Zuffa LLC via Getty Images)】
UFCファイトナイト・サンパウロ:チャールズ・オリベイラ vs. ジャレッド・ゴードン【ブラジル・サンパウロ州パライーゾ/2019年11月16日(Photo by Alexandre Schneider/Zuffa LLC via Getty Images)】
日本時間3月15日(日)に開催されるUFCファイトナイト・ブラジリアのメインイベントでは、チャールス・オリベイラ(ブラジル)対ケビン・リー(アメリカ)のライト級戦が行われる。

オリベイラ、母国で飾る初のメインイベント

2010年に20歳でUFCデビューを飾ったオリベイラは、初戦でいきなりダレン・エルキンスを41秒で切って捨て、その6週間後の第2戦ではエフレイン・エスクデロを締め落とすという鮮烈パフォーマンスを見せつけ、次世代の大物、すい星のごとく登場という強い印象を与えた。

しかしランカーとの対戦に駒を進めると、上位陣の壁に阻まれ、思うように勝ち星をあげられなくなった時期もあった。繰り返し計量に失格し、ファンからの信頼を損ねた時期もあった。

「全てのことは起きるべきして起きたんだと思う」とオリベイラは浮き沈みのあったキャリアを振り返る。「ビッグネームファイターや元チャンピオンに負けたこともあった。今振り返れば、受けるべきではなかった試合もあった」

「でもそのおかげで、自分はたくさんのことを学び、進化することができたんだ」

30歳になったオリベイラは、まさに今が全盛期と思わせる活躍ぶりだ。2017年にライト級に復帰すると、2018年には3連勝3フィニッシュ、2019年にも3連勝3フィニッシュ、現在は6連勝中、この間5度のファイトボーナス獲得と、手が付けられないほどの好調ぶりだ。

10年間のUFCキャリアで積み重ねてきたサブミッション勝利数13は、ホイス・グレイシー、デミアン・マイアを抑えて歴代1位。そして合計15回受賞したファイトボーナスのうち、鮮やかなフィニッシュの技能に対して与えられる”パフォーマンス・オブ・ザ・ナイト”をUFC歴代最多となる9回も受賞している。

「リーは口も達者だし、試合も本物だ。ブラジリアのファンは喜ぶだろう。自分も彼との試合はかねて希望していた。きっちり仕留めて、いいショーをお見せしたい」と、今回初めてのメインイベントを母国で務めるオリベイラは、ここにきてついに、かつての“次世代の大物”の称号にふさわしい才気を煥発(かんぱつ)させようとしている。

「ここからは一歩一歩だ。まずリーを倒す。すると次は、トップ3クラスの選手と対戦するしかなくなる。そして年末までに私はトップコンテンダーになる。間違いない。2020年はいい年になりそうだ」

復活劇は本物か、リー

一方、過去5戦で2勝3敗、昨年はウェルター級に転向するも、ハファエル・ドス・アンジョスに力負けし、わずか1試合でライト級に復帰するなど、やや迷走気味だったリー。時折見せる輝きに秘められたポテンシャルは、もはや十全に発揮されないままになるかと思われた時期もあった。

しかし、カナダのトライスタージムに移籍後初戦となった前戦、ニューヨークで行われたUFC 244で、地元出身の無敗の猛者グレゴール・ガレスピーを戦慄ハイキック一閃(いっせん)KO、静まりかえるマジソンスクエアガーデンの大観衆に、自身の完全復活を強く印象づけた。

「オレは相手の晴れ舞台を台無しにするのが大好きなんだ」とリーは豪語する。「今回も、ブラジルの観客をものすごく静かにしてやる」

「オリベイラの勢いを消してやる。オレはこれからも、他の選手が対戦を嫌がるような難敵を、敵地で倒し続ける。キャリアの作り方としては遠回りなのかもしれないが、それがオレのやり方なんだ」

ブラジルトップグラップラーの闘魂伝承戦

UFCファイトナイト・ブラジリアのセミメインイベントには、デミアン・マイア(ブラジル)対ギルバート・バーンズ(ブラジル)が組まれている。

タイロン・ウッドリー、コルビー・コビントン、カマル・ウスマンに3連敗した際にささやかれた引退説も、ベン・アスクレンを下すなど2019年を3連勝で駆け抜けることですっかり払しょくされている。

42歳のマイアは今回がUFCで実に32戦目、UFC勝利数22はセラーニの23勝に次いで歴代2位、そして過去25試合でフィニッシュ負けがないというUFCレコードの持ち主でもある。特にグラップリングの世界からMMAに転向してくるブラジルの選手にとっては、マイアかホナウド・ジャカレイの影響を受けていない人を探す方が難しいというほどのレジェンドな存在なのだ。

対するバーンズも、柔術で何度も世界を征しているグラップラーで、マイアと同じく2019年を3連勝で駆け抜け、現在は4連勝中、過去7戦で6勝と好調だ。UFCでの試合の合間には、グラップリング大会にも積極的に出場しており、試合数が非常に多い選手として知られている。

特に2019年は、まず8月に試合直前のオファーを受けてライト級からウェルター級に転向し、今回のイベントにも出場するアレクセイ・クンチェンコ(ロシア)を下すと、翌月、コペンハーゲンでは欠場選手の代打でまたも試合直前の出場要請を受諾してグンナー・ネルソンと対戦、寝業師同士の殴り合いを制してKO勝利を収めている。ライト級でも好成績だったのに、あえてウェルター級に転向した理由は、いちいち減量しなくても、緊急の代打出場ができるので便利がいいから、なのだという。

「いつまでもできる仕事じゃないからね。練習は常時している。自分を試すのが好きなんだ。終わりのない旅だね。おかげさまで大したケガもない」と語る脂ののりきったバーンズにとって、マイア戦は一気にトップ10入りを狙うチャンスであるだけでなく、レジェンドからの闘魂伝承戦の意味合いも帯びている。

人気者ウォーカー復帰戦は激戦必至

ブラジリアでのイベントにはまた、人気者ジョニー・ウォーカー(ブラジル)も参戦する。試合が楽しくて仕方ないといった大きな笑顔、飛び跳ねるような入場、跳びヒザ蹴りやバックフィストといった派手なフィニッシュ技、そして勝利の芋虫ダンスで、今やライトヘビー級随一の人気者だ。

前回はUFC 244(2019年11月)でコーリー・アンダーソンにKO負けを喫し、勢いをそがれたが、今回地元での復帰戦を契機に、ジョン・ジョーンズへと続く白星街道に戻りたいところだ。ウォーカーはMMA戦績17勝のうち16勝でKOもしくは一本勝ちを収めているフィニッシャーだが、対戦相手のニキータ・クリロフ(ウクライナ)もキャリア25勝の全てがフィニッシュ勝利となっている。壮絶なフィニッシュ決着が見られる期待大だ。

【文 高橋テツヤ】
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