UFC 213見どころ:アマンダ・ヌネス、新時代を切り開けるか?

UFC PPV 見どころ
UFC 213:アマンダ・ヌネス【Photo by Brandon Magnus/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images】
UFC 213:アマンダ・ヌネス【Photo by Brandon Magnus/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images】
日本時間7月9日(日)に開催されるUFC 213のメインイベントでは王者アマンダ・ヌネス(ブラジル)と挑戦者ワレンチナ・シェフチェンコ(キルギス)によるUFC女子バンタム級タイトルマッチが行われる。



前回はヌネス勝利も、スタミナに課題を残す

両者は昨年3月のUFC 196でも対戦しており、その時にはヌネスがユナニマス判定勝ちを収めている。第1ラウンドと第2ラウンドを圧倒していたヌネスは、第3ラウンドに入ってスタミナ切れから急失速、シェフチェンコの猛烈な逆襲に遭い、あわやフィニッシュ寸前まで追い込まれるというスリリングな展開の試合だった。

この試合で初めてフルラウンドを戦い抜いたと明かすヌネスはサウスポーとの対戦も初めてだったとし、「今後の参考になる試合だった」と語っている。

ヌネスは2014年のキャット・ジンガノ戦でも、序盤の猛攻をしのがれた後、スタミナが切れて逆転負けを喫しており、このことから「序盤の強さは随一だが、やがてガス欠を起こす選手」という評判が定着してしまっている。ヌネスはその後、ミーシャ・テイト(UFC 200)、ロンダ・ラウジー(UFC 207)というレジェンドを連続で下したわけだが、いずれも短い時間でフィニッシュしてしまったため、強さが際立った一方で、課題のスタミナ不足が改善されたのかどうかはいまだに証明されていない。

女王攻略に自信を見せるシェフチェンコ

キルギス出身ながらチリを本拠地とし、練習の半分はタイで行い、UFCの試合前にはヒューストンやデンバーでキャンプを張る世界放浪ファイター、シェフチェンコ。ムエタイ、キックボクシングで17の世界タイトルを獲得(ムエタイ戦績は52勝6敗)したほか、テコンドー黒帯、空手、柔道、サンボ、ボクシング、射撃を経験してきたキャリア20年の万能マーシャル・アーティストだ。ちなみに、ニックネームの“ザ・バレット(弾丸)”は射撃経験から取られている。

そんなシェフチェンコは「前回の試合は時間が足りなくてヌネスをフィニッシュできなかった。あと1分あれば、結果は違っていた」と振り返りつつも、「今の私なら全く違う戦い方をする。前回の続きのような試合にはならない。私はコーチと、いろいろな面からヌネスを研究していて、戦略も練ってあるし、技術も磨いてある」と女王攻略に自信を見せる。

ベストファイターを証明し、ヌネス時代を作り出す

一方、ティーンエイジャーの頃から運動能力が抜群で、ブラジリアン柔術、サッカー、乗馬、カポイエラ、柔道に取り組んできたヌネスはシェフチェンコの言い分に耳を貸さない。「私はもう、彼女には勝っている。それを変えることなどできない。スタミナ切れだ、何だと言っているけれど、なぜそんなナンセンスを言い続けているのか、意味が分からない。自分が負けたことがそんなに分からないのなら、もう一度教えてあげるしかない。今回は私が完勝する。完勝して言い訳できなくしてやる」

ホリー・ホルム、ジュリアナ・ペーニャを下して、実力でヌネスへの雪辱戦の権利を得たシェフチェンコは、「私はこれまでの格闘家人生の全てを今回の準備に費やしてきた」と必勝を期す。テイトとラウジーを連破し、女子バンタム級の風景を塗り替えても、知名度や注目度ではまだまだ及んでいないことを自覚しているヌネスは、「これからも自分の力を証明し続けないといけない。みなさんから本物だと認めてもらうのは簡単なことではないし、時間がかかることだけれど、いつか、私こそがベストファイターだと思ってもらえるようにしていく」と試合への決意を語る。

女子バンタム級トップ同士の実力者対決、今回は逃げも隠れもできない5ラウンド戦での決着戦となる。

ミドル級暫定王座戦、ロメロ対ウィテカー

UFCミドル級戦線は昨年10月に王者マイケル・ビスピンがダン・ヘンダーソンを下して初防衛を飾って以来、ビスピンの負傷もあって、タイトルマッチが行われていない。ジョルジュ・サンピエールが復帰戦でビスピンに挑戦するプランもあったが、白紙に戻されている。

そんな中、UFCはミドル級暫定王座を制定すると発表し、その決戦がUFC 213のセミメインイベントで実現する。対戦するのはランキング1位につけるヨエル・ロメロ(キューバ)と、3位のロバート・ウィテカー(ニュージーランド)だ。

シドニー五輪フリースタイルレスリング銀メダリストのロメロはUFC戦績8勝0敗、うち6勝をノックアウトであげている。前回は昨年11月にニューヨークで行われたUFC 205で元王者クリス・ワイドマンを豪快なヒザ蹴りで流血葬、トップコンテンダーの地位を確立させた。

ニュージーランド生まれ、オーストラリア育ちのウィテカーは2013年に2連敗を喫したことを契機に、モントリオールのトライスタージムを離れ、故郷シドニーのPMA Mixed Martial Artsに拠点を移し、あわせて階級をウェルター級からミドル級に変更した。それ以降は6連勝、うち4勝がノックアウトで、試合のたびに成長した姿をみせつけている。特に今年4月にホナウド・ソウザを第2ラウンドにテクニカルノックアウトで下した試合では、ウィテカーが次期王者の器であることを多くのファンに知らしめた。

若さと勢いのウィテカーか、ようやくタイトルマッチにたどり着いた感のあるパワーと経験のロメロか。どちらが勝っても、それぞれの母国にとって初のUFCチャンピオンの誕生となる。そしてこの試合の勝者が、正王者ビスピンとの王座統一戦に臨む運びとなることが濃厚だ。

アリスター・オーフレイム、アンソニー・ペティスも登場

UFC 213にはこのほか、日本でも人気が高いアリスター・オーフレイム(オランダ)と元ヘビー級王者ファブリシオ・ヴェウドゥム(ブラジル)との一戦に加え、“ショータイムキック”のさく裂に期待がかかるアンソニー・ペティス(米国)も出場する。期待のローラー対セラーニ戦が再延期されてもなお、見どころ満載のUFC 213をお楽しみに!

【文 高橋テツヤ】
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