UFCファイトナイト・メキシコシティ見どころ:躍動する若きメキシカンファイティングプライド

UFCファイトナイト 見どころ
TUFフィナーレ:ブランドン・モレノ vs. ライアン・ブノワ【2016年12月3日(Photo by Jeff Bottari/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
TUFフィナーレ:ブランドン・モレノ vs. ライアン・ブノワ【2016年12月3日(Photo by Jeff Bottari/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
日本時間8月6日(日)に開催されるUFCファイトナイト・メキシコシティは、2014年11月にUFC 180(ファブリシオ・ヴェウドゥム対マーク・ハント)が行われて以来、5回目のメキシコでのイベントである。ボクシングやプロレス(ルチャ・リブレ)を中心に、格闘技に歴史と伝統を持つメキシコでも近年はMMA人気、UFC人気が高まりを見せている。今大会では、メインイベント、セミメインイベントに登場する2人の若きメキシコ人ファイターが、熱い戦いでUFC人気にさらに火を付ける。



「メキシコ人はハートで戦う」とモレノ

メインイベントを飾るのはともに23歳のトップファイター、地元メキシコはティファナ出身のブランドン・モレノと、セルジオ・ペティスの対戦だ。

「子どもの頃、暇な時間を何か有益なことをして埋めようと考えた」というモレノは、カポイエラ(ブラジルの格闘技)を習おうと思い立ったものの、ティファナでカポイエラ教室を見つけることができず、「代わりにたまたま街で見つけたMMAジムで、ブラジリアン柔術とキックボクシングを習ってみることにした」のが格闘技を始めたきっかけだったという。

2016年のTUF(ジ・アルティメット・ファイター)シーズン24がUFC入りにつながったモレノだが、そのUFCデビューは異例の形となった。というのも、自分が出演しているTUFがまだ放送中だった2016年10月、急な欠場者の代打として、わずか8日前の急な打診を受けて、トップ10ファイターのルイス・スモルカと戦うことになったのだ。この試合でモレノは、第1ラウンド2分23秒、ギロチンチョークでアップセット勝利を飾り、パフォーマンスボーナスまで獲得してしまう。

勝利者インタビューで、UFCデビュー戦にしていきなりランカーとの対決に緊張はしなかったのかと聞かれたモレノは、あどけなさの残る表情で次のように答えたのだった。

「だって僕はメキシコ人ですから」

この試合は、UFC公式サイトの2016年アップセット試合ランキングで、ネイト・ディアスがコナー・マクレガーをチョークでタップさせた試合を抑えて第4位に選出されている。モレノはまた、UFC公式サイト2016年新人ランキングでも5位に選ばれた。

現在UFC3連勝中、MMA8連勝中、5年間無敗のモレノは、強さの秘訣(ひけつ)について次のように語っている。

「特に秘訣(ひけつ)なんてないよ。メキシカンファイターなら、ハートで戦わなくちゃ。僕らのテクニックや練習設備は、世界最高ではないかもしれない。でもそこをハートで補うんだよ。それがメキシカンファイターのすべてなのさ」

メキシコのファイティングプライドを背負ったモレノにとって地元で負けるわけにはどうしてもいかない。

同年代対決に腕を伏すペティス

一方、アンソニー・ペティスの6歳年下の弟で、現在3連勝中のセルジオは、ファイターとしてのキャリアについて次のように大人びた見解を述べる。

「自分はUFCで2敗している。UFCに来た頃は、ここに来ることができただけで、やったぜ、という感じだった。でも歳(とし)をとり、格闘技こそが自分の情熱であること、この先10年、15年と取り組んでいけることだと気がつくようになった。もともと練習熱心だし、技術も運動能力もある。これに加えて、こうした信念を持つようになれたのも、2つの敗戦があったおかげなんだ」

「かつてはキャリアを甘く見ていた。当時はまだ若気の至りでイケイケだったんだ。でも、もうそんなことは卒業した。周囲には立派な大人がたくさんいるから、自分自身も大人になっているし、キャリアのことを真剣に考えるようになっているんだ」

いくら真面目に語ってみても、兄のアンソニーから「子どもの頃は、外に出かけることやら虫やらを怖がっていたものだけれど、それが今では、金網の中で大人の男性と戦っているんだからねえ」とちゃかされてしまうセルジオではあるが、敵地でのメインイベント、ましてや同年齢の対決に簡単に屈するわけにはいかない。フライ級ランキングではセルジオが6位、モレノが7位と互角。周囲の期待を大きく上回る、みずみずしい名勝負の予感に満ちた一戦だ。

スター候補生、つまずきからの復帰を目指すグラッソ

セミメインイベントに登場するもう1人の若きメキシコ人ファイターも、やはり23歳、グアダラハラ出身のアレクサ・グラッソだ。2012年のプロデビュー以来、9連勝の快進撃を続けている。Invicta FCでは激闘の末に日本の魅津希に土を付けたこともあり、スピードのある打撃が持ち味のスター候補選手だ。しかし、前回の試合(2017年2月)でベテランのフェリス・ヘリグにキャリア初黒星を喫してしまった。

ヘリグ戦の後、グラッソは『Instagram(インスタグラム)』で次のようにファンにメッセージを発信している。

「試合映像を見直してみて、自分がどれほどたくさんのミスをしていたのか、なぜ負けたのかがよく分かりました。応援してくれたみなさんに感謝し、毎日もっと練習することを約束します。早く練習に戻りたい。やるべきこと、修正すべきことがたくさんあります」

対戦相手は今年2月に元女子ストロー級王者、カーラ・エスパルザを下している難敵、ランキング9位のランダ・マルコス(イラク)。地元のビッグネームを倒すことのインパクトやメリットを知り尽くしている歴戦のベテランだ。ノンランカーのグラッソにとって、勝てば大きな飛躍のきっかけになる一方、リスクも大きい試練の一番になる。地元の熱い応援を味方に付けて乗り切りたいところだ。

エバンス、なるか徳俵からの逆襲

このほか、元ライトヘビー級チャンピオンで3連敗中のラシャド・エバンスが、笑顔の強打者“スマイリング”ことサム・アルビーと対戦するサバイバルマッチも注目だ。メキシコ人ファイター総勢8名が出場し世界を迎え撃つUFCファイトナイト・メキシコシティをお楽しみに。

【文 高橋テツヤ】
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