UFCファイトナイト上海:ついにUFCが中国本土上陸! ビスピンが男気の再登板

UFCファイトナイト 見どころ
UFC 217:マイケル・ビスピン vs. ジョルジュ・サン・ピエール【アメリカ・ニューヨーク州ニューヨーク/2017年11月4日(Photo by Jeff Bottari/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
UFC 217:マイケル・ビスピン vs. ジョルジュ・サン・ピエール【アメリカ・ニューヨーク州ニューヨーク/2017年11月4日(Photo by Jeff Bottari/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
UFC初の中国本土開催となるUFCファイトナイト上海が日本時間11月25日(土)に行われる。

ビスピン「試合を受けない理由があるかい」

メインイベントでは当初、アンデウソン・シウバ対ケルヴィン・ガステラムが予定されていたが、米アンチ・ドーピング機構(USADA)が実施した競技外の抜き打ち検査でシウバに潜在的なアンチ・ドーピング規則違反が確認されたため、UFCではシウバの欠場を決定。その翌日、シウバの代役として前ミドル級王者、マイケル・ビスピンが出場することが発表された。

ビスピンといえばわずか3週間前、日本時間11月5日にマディソン・スクエア・ガーデンで開催されたビッグイベント、UFC 217でジョルジュ・サン・ピエールと戦い、ミドル級のベルトを失ったばかりだ。

まだ激闘の傷跡も癒えきらないであろうビスピンにとって、ガステラムは決して簡単な相手ではない。ましてミドル級ランキング2位のビスピンにとって、同9位のガステラムに勝ったとしても、タイトル再挑戦に近づくわけでもない。なぜこんなに短い間隔で、リスクしかないような試合を受けることにしたのだろうか。

米国時間15日(水)に行われた電話インタビューで、ビスピンは質問が間違っているといわんばかりに、こう答えたのだった。

「試合を受けない理由があるかい?」

20分間で決めた上海出陣

「サン・ピエールは10回戦って10回とも勝てる相手のはずだったのに、力を出し切れず、後味の悪さが残った。この嫌な気分を取り除くためにも、早い時期に試合に戻りたかったんだ。試合に出て、白星を取り戻し、素晴らしい試合をして世界中に自分の力を示す。その上、カネまでもらえる。いいことだらけのウイン・ウインじゃないか。どうして断らないといけないんだ? 身体の方は全く問題ない。ただ、気持ちの面を癒やすためには試合をするしかない。この試合は神様からの贈り物だと思っているんだ」

ここで格下に負けるようなことがあれば、ビスピンのレガシーに傷が付きかねないが、ビスピンは意に介さない。

「レガシーがどうのこうのといったことは何も考えていない。何の意図も企(たくら)みもない。この試合についてはマネジャーとロクに話し合いもしていない。ピアニストがピアノを弾(ひ)くように、俺は戦うだけ。シンプルな話だよ」

「試合の戦略だって何も立てていない。だって、降って湧いたようなチャンスだったからね。自分が妻と昼飯を食いに行く車の中で、ラジオでアンデウソン欠場のニュースを聞いたんだ。その場で(UFC会長の)デイナ(・ホワイト)にメールをした。“先週戦ったばかりだけど、特にケガもなくて、上海に出場できる選手を知ってるよ”と。20分後に電話がかかってきて、それで試合が決まりさ」

ビスピンのファイナルカウントダウン

思えばビスピンがルーク・ロックホールドを下してミドル級のタイトルを獲得した時(2016年7月、UFC 199)にも、ビスピンはわずか18日前の急な代打出場に応じたのだった。ビスピンは、こうしたスクランブル発進に強いのだ。

「俺は生涯この仕事をやってきている。マーシャルアーツは8歳の頃からずっとやっているんだ。コンディションは常に作っているし、体重もいつでも合わせられる。ただ、急なオファーの方がプレッシャーがなくていいのかもしれないね。前回の試合はベルトを防衛しなければならなかったのがプレッシャーだった」

UFC最多勝利数(20勝、サン・ピエールとタイ)、UFCでの最多出場試合数(28戦、ジム・ミラーとタイ)の記録を誇るビスピンも、年齢は39歳、サン・ピエール戦の前からすでに、引退をほのめかす発言をしてきた。

「できれば今回、白星を飾って、夜にゆっくり眠れるようになりたいよ。そして来年3月にロンドンでファイナルマッチをするんだ」と語るビスピン。その勇姿を拝めるチャンスはそれほど残っていない。

目指せ2冠王、ガステラムの野望

一方のガステラムにとっては前々回のヴィトー・ベウフォート戦、前回のクリス・ワイドマンに続いて、今年は3戦連続で元王者を迎えてのメインイベントに臨むこととなる。対戦相手の急な変更についてガステラムは「自分のキャリアにとってはプラスでしかない」と、ただただ前向きだ。

「マイクは元王者で、アンデウソンよりランキングが上、UFCでのポジションもうんと上だ。タフな試合になるとは思うが、この試合になってむしろよかったと思っている。彼は合宿を終えたばかりで、体調もいいだろう。簡単な試合にはならないと思っている」

前回、ワイドマンに負けた後、ガステラムはウェルター級復帰の可能性も示唆していた。

「この試合に勝てば、自分はミドル級にずっととどまることになるのかもしれないと思っている。ミドル級でのタイトル挑戦に結びつけば理想的だ。でも同時に、ウェルター級でもやっていけると思っているし、ウェルター級のタイトルも狙いたいんだ。だから今回の試合はウイン・ウインだと思っている」

急きょ組まれたメインイベントで、興味深くも両選手が“ウイン・ウイン”という言葉を使って好機を生かそうと目をぎらつかせている。上海のファンに、UFCとは何たるかを見せつける激闘を繰り広げてくれそうだ。

ジャンリン、故郷に錦を飾る

セミメインイベントでは中国のトップスター、リー・ジンリャンが、ザック・オットーと対戦する。フランク・カマチョ、ボビー・ナッシュ、ディエゴ・リマなどに勝利、現在3連勝中と好調のチャイナ・トップチーム所属のリーにとっては、地元の観客の前で、これまで世界と伍(ご)してきた力と技をようやく披露できる、夢の晴れ舞台となる。

MMA人気が急上昇中と伝えられる中国本土での記念すべきUFC初イベント。日本のファンにも見やすい時間帯に刻まれる歴史の第一歩を、ぜひライブでゆっくり楽しもう。

【文 高橋テツヤ】
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