フロリダ南部で何やら不思議なことが起きているらしい。 アメリカにおいて、MMAの主だった拠点は今でもカリフォルニアのゴールドコーストラインやラスベガスの大通り沿い、ニューメキシコ州アルバカーキの砂漠地帯にあることがほとんどだ。しかしながら、今、アメリカ東海岸に総合格闘技のエリート層が集まり始めている。陽光の州と呼ばれるひとつ、フロリダだ。 トップファイターをその地へ誘い込んでいるのはウォルト・ディズニーでもミッキーマウスでもない。まったくの別ものだが、同じくらいに注目度はある。ダン・ランバートとヒカルド・リボーリオがUFC全階級のファイターたちを引きつけている。彼らが主宰するジムが世界に名高いアメリカン・トップチームだ。 アメリカン・トップチームのジムはフロリダ州ココナッツ・クリークに本部を構え、現UFCウェルター級王者ロビー・ローラーが所属することでも知られる。レスリングでオリンピック出場経験のあるカミ・バルジーニとスティーブ・モッコ、打撃ではバイテウモ・クビスにケウソン・ピントといったコーチ陣がサポートしている。
アメリカン・トップチームにあらゆる階級のビッグネームやファイターたちが加わっていく様は当然と言えば当然である。ヘビー級では元王者のジュニオール・ドス・サントスが最上位なら、今年1月からはライト級ランキング5位につける堀口恭司が所属選手として名を連ねた。 群馬県出身で25歳の堀口は刺激的かつ説得力のある評判を得ており、ランバートとリボーリオが建てた神聖なホールに君臨する新たな躍動だ。堀口が負け知らずのUFCフライ級チャンピオン、デメトリアス・ジョンソンに挑み、一本負けを喫したUFC 186はちょうど1年前の今頃だった。 「チャンピオンと試合ができたのは自分にとって最高の経験でしたし、自分のトレーニングを見直す時間になりました」と語った堀口にとって、オクタゴンではこれが初めての敗北であり、プロ格闘家のキャリアを通しても2度目の黒星にすぎない。 アメリカン・トップチーム加入前、堀口は昨年9月に開催されたUFCファイトナイト・ジャパンでチコ・カムスにユナニマス判定勝利を収めている。これにより、元修斗バンタム級王者のプロ戦績は16勝2敗となり、オクタゴンレコードは5勝1敗となった。 日本での試合を振り返った堀口は「勝つことしか考えていませんでした。特に負けた後だったのでフィニッシュしたかったんですが、カムスがタフで。日本のファンや応援してくれている人たちの前で試合に勝ててうれしかったです」とコメントしている。
さいたまスーパーアリーナに集まった大観衆から体いっぱいに声援を浴びた堀口は彼らしいベストなパフォーマンスを披露。山本“KID”徳郁が主宰するジム、KRAZY BEE(クレイジー・ビー)でトレーニングを積んできた堀口は15分に渡ってカムスを苦しめ続け、3人のジャッジ全員が30対27で堀口の勝利を支持した。ノックアウトできなかったからといって堀口が自身に厳しくしすぎる必要はない。カムスが7年以上に及ぶプロキャリアで挑んだ23試合のうち、打撃によるフィニッシュを食らったのはただの一度しかないのだ。 堀口の次なる舞台はロッテルダム。新しいトレーニングを生かす相手はニール・シーリーだ。アイルランド・ダブリン出身のシーリーは2015年10月にジョン・デロス・レイエスと拳を合わせ、第2ラウンドにギロチンチョークで一本勝ちしている。地元大会で活躍を見せたシーリーはプロ戦績を16勝11敗とし、初めてUFCでマークしたフィニッシュでパフォーマンス・オブ・ザ・ナイトを受賞した。 堀口は「相手はとてもアグレッシブなファイターです。前に出て対戦相手にプレッシャーを与えてきます。自分のスタイルとうまく合うんじゃないですかね。きっと興奮する試合を見せられると思います。自分のキャリアにとっては重要な試合ですし、ヨーロッパのファンに自分の攻撃性を示す良いチャンスだと思っています」と付け加えている。 堀口とシーリーの対戦を含むUFCファイトナイト・ロッテルダムのアーリープレリムは日本時間5月8日(日)23時30分にスタートする。ローラーやドス・サントスのように、すでに確立されたファイターを見事に蘇らせてきたアメリカン・トップチームの援助を得て、堀口にどんな成功が待ち受けているのか、必ずやおもしろい試合になるだろう。