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アンソニー・ペティス、王座奪還へ向け再スタート

 

UFCの元ライト級王者アンソニー・ペティスは別人となった。今でもケージに飛び出し、対戦相手の頭に蹴りを入れ、サブミッションを取られ慣れていない対戦相手をマットに抑え込むことができるファイターだ。しかし、28歳になったペティスの最盛期はこれからやってくるのかもしれない。

日本時間18日(月)にボストンで開催されるUFCファイトナイトのエディ・アルバレス戦に向けて準備に怠りがないペティスだが、現在の彼は昨年3月にハファエル・ドス・アンジョスに敗れ、ライト級のタイトルを失った時と同じ男ではない。

 



「オレは少しばかり変わったよ。大人になった。初めてチャンピオンベルトを手にした時は、めちゃくちゃ興奮した。王者になったわけだし、オレにとっては新しい経験だった。今は王者になるということを知っているし、すでに1度達成したことだ。だから、今の目標は少し違う。遺産を築く時であり、トップにとどまり続けられることを示さなければならない。王者になったとしても、それで調子に乗ったり満足してはいけない。ハングリー精神を持ち続けて、モチベーションを維持し、できる限り長い間、王者でいたい。自分でやれる機会はわずかしかないんだ」

“ショータイム”のニックネームを持つペティスは負傷に常に悩まされてきた。度重なるけがのせいで、2012年に1回、2013年に2回、そして2014年には1度しか戦っていない。ところが、その2014年唯一のファイトがペティスの新たな時代を告げるものとなった。ストライクフォースの元ライト級王者だったギルバート・メレンデスにとってはタイトル防衛戦だった試合で、ペティスが2ラウンドでサブミッション勝ちを収めたのだ。その結果、わずか3カ月後の2015年3月にドス・アンジョスとの対戦が組まれた。

そして、王座を失ったのである。

昨年3月まで、ペティスはMMA界最高のスターファイターであり、シリアル食品の“Wheaties(ウィーティーズ)”のパッケージに起用された最初のUFC格闘家として称賛されていた。しかし、初のタイトル防衛戦では、第1ラウンド早々に負った眼窩(がんか)骨折のせいで真っ向から勝負することができなくなった。果敢にも5ラウンドまで戦い抜くも、誰の目にも勝者は明らかだった。

アンソニー・ペティスは元王者となり、彼を担ぎあげる人はいなくなった。もっとも、ペティスはこういった状況に驚いてはいなかったという。

「前と同じだと思った。オレはWEC王者としてUFCに参戦したけど、クレイ・グイダに敗れた(2011年6月)。すると、人はオレのことなんてあっという間に忘れたし、自分たちと同じ人間だったんだと見るようになった。輝きを放っているヤツがいれば、ファンや批評家は心の中でそいつが負ける日が来るのを待っている。そうすれば、“彼も人間だったんだ”とか“みんなが言うほど良くなかった”と言って回ることができるからね。隠れている敵はたくさんいる」

そう語るペティスの口調は決して苦々しいものではない。MMAで長きにわたって上位にランクされ、この世界がどんなものであるかをペティスは知っている。世界王者になることは複雑極まりないことだが、そのために彼は契約を結んでいるのだ。もちろん、押し寄せてくる出来事を簡単にさばけるというわけではない。とはいえ、何とか乗り切れるファイターがいるとしたら、それはペティス本人に他ならない。

「チャンピオンになったら、あらゆるところで引っ張りだこだ。メディアやスポンサー、テレビ出演、セミナー開催で忙しくなる。この階級のナンバー1になったことで、誰もが自分から何かを得ようとする。オレの場合はチャンピオンベルトを失った時、夜と昼が逆転したみたいに何もかもが変わった。自分のことを本当に気にかけ、困った時に助けてくれると思っていた人たちの顔をあまり見なくなった。だから、味方は誰なのか、オレのことを人として、アスリートとして王者として、本気で心配してくれる人は誰なのか見分けるようになった」

挑戦者としての人生はそれほど複雑ではないと言えるものの、ペティスのように最高で見ごたえ抜群の試合を戦うことが期待されているファイターにとっては違うだろう。しかし、そういう意見は外部のものである。ペティスにとって、今週末に行なわれる一戦の目標はシンプルなものだ。

「エディが世界でもトップクラスのファイターであることは間違いない。オレが完勝した相手(ドナルド・セローニとメレンデス)と戦ったエディの最近の対決を見たけど、次の一戦で最高のパフォーマンスを見せなければ、振り出しに戻ってオレは何を間違えたのか考えなければならない羽目に陥るなと思った。それに、もう負けたくない。2連敗はしなくないし、その気持ちが最高のモチベーションになっている。2度続けて負けるのは御免だし、オレは王座にカムバックしたい。でも、楽しむつもりだ」

楽しむという言葉はアルバレス戦を語るためにふさわしい言葉のようには聞こえないが、それこそが昨年3月からペティスが最も変わった点である。

「みんなが勝手にオレらしいと思っている派手なファイターになろうっていうプレッシャーを自分にかけないようにしている。ただ戦いに出て行ってファイトを楽しみたい。オレはMMAが楽しかったからこのキャリアを選んだんだ。WECでもUFCでも最高の時を過ごしたけど、この一戦はオレのキャリアの新たな1章となる。ぜひ楽しみたい。オクタゴンに上がって自分自身にプレッシャーをかけることなく、自分の仕事、自分のキャリアを楽しめれば、結果は出るだろう」