2016年7月8日(金)にラスベガスのMGMグランド・ガーデン・アリーナで開催されたUFCファイトナイト・ラスベガス、プレリミナリーファイトの試合レポート。
2016年7月8日(金)にラスベガスのMGMグランド・ガーデン・アリーナで開催されたUFCファイトナイト・ラスベガスのプレリミナリーファイトでは2014年には安西信昌をKO、続く2015年には秋山成勲に判定勝利と日本のUFCファンにもおなじみの香港在住のブラジリアンファイター、アルベルト・ミナと、MMA界の真のベテランの一人、マイク・パイルによるウェルター級戦が実現した。
ミナはその強烈な打撃と思い切りの良さを発揮し、スロー・スターターで知られるパイルにペースをつかませることなく優勢に試合を進め2ラウンドに左フックを命中させると即座にパウンドをまとめてTKO勝利を呼び込んだ。
ミナの強打を警戒して、やや距離を取っていたパイルのローキックを捉えたミナが残り時間3分でテイクダウンに成功。パイルはミナの右腕を抱えてがっちりと引きつけると、レフリーのジェイソン・ハーゾッグによるブレイクを呼び込む。攻防がスタンドから再開され、ミナが左のダブルで一気に飛び込むと、この1発目の左がパイルの顎先を捉える!前転するようにマットに倒れこんだパイルはそのまま下のポジションになり、パウンドを狙うミナをしっかりと引きつける。ダメージからしっかりと回復したパイルは立ち上がり、再びテイクダウンに飛び込んできたミナをギロチンで引き込んだところで第1ラウンドが終了した。
第2ラウンド開始早々に自ら繰り出したハイキックを押し込まれて下になったパイルだが、ミナはスタンドを選択しパイルが立ち上がる。パイルが右ローキックを繰り出すと、これをミナはうまくキャッチしパイルのバランスを崩す。体勢を立て直そうとするパイルに一気に距離を詰めたミナは左のフライング・ニーを相手の顔面に叩き込む!後方に倒れこむパイルにミナがパウンドで躍りかかるとパイルはダメージのためにうずくまり、これを確認したレフリーのジェイソン・ハーゾッグが2ラウンド1分17秒に試合の終了を宣告した。
ミナはこれでプロ戦績13勝無敗。対するパイルは、そのプロ40戦目を白星で飾ることは適わず27勝12敗1分けとなった。
ライト級 5分3ラウンド
ジョン・マクデッシ vs. メディ・バグダッド
互いに打撃を得意とするライト級だが、長身のバグダッドがオクタゴンの中央に陣取り鋭いジャブでマクデッシを退がらせようと試みる。序盤は動きの少なかったマクデッシが、ラウンド中盤過ぎから左右への細かなフットワーク、多彩なヘッド・ムーブを見せて前に出始めると、バグダッドは無理をせずに下がりながら丁寧なジャブで距離を測り、時折そこから鋭い右へとつなげている。
多彩なフェイントで前に出るマクデッシだが手数は未だに繰り出せない。バグダッドは数歩下がると必ず思い切りの良いコンビネーションで飛び込み、相手に金網まで押し込まれることを許さない。残り時間1分40秒、マクデッシがスリップでバグダッドのパンチをかいくぐり、距離を詰めるシーンが出始めるとバグダッドはすぐに豊富なミドルとローキックでマクデッシのヘッド・ムーブを封じると相手を自分の距離に押し戻す。
左のフックから相手を首相撲に捉えたバグダッドの膝がマクデッシの顔面を突き上げる!膝が伸びきり後じさるマクデッシをさらにバグダッドの2発の右ストレートが襲う!必死に組みついてこの窮地をしのごうとするマクデッシにバグダッドがまさかの飛びつき腕十字!しかしこの試みは裏目に出てしまい、バグダットは下のポジションを余儀なくされるとマクデッシに回復の時間を与える結果になってしまう。なんとか相手を突き放し、攻防をスタンドに戻すことに成功したバグダッドだが、KOを意識したのか打撃が大振りになってしまいマクデッシとの乱打戦に巻き込まれてしまう。すっかり息の上がったバグダッドに対し、パンチで距離を詰めたマクデッシがトップポジションをキープする中、激闘の第3ラウンドが終了した。
ジャッジの判定は29-28、29-28、28-29のスプリット判定でマクデッシ。3ラウンドに渡り前に出続けたカナダのジョン・マクデッシがその積極性と終盤の盛り返しを評価される格好で際どいスプリット判定を制すとその戦績を14勝5敗と伸ばした。一方、第1ラウンド、第2ラウンドと有効打撃数では優勢に試合を進めていたようにも思われたフランスのメディ・バグダッドだが、11勝4敗と戦績を落とした。
バンタム級
5分3ラウンド アンソニー・バーチャック vs. ディレノ・ロペス
開始早々にバーチャックの強烈なミドルキックを受けたロペスは即座に突進、金網際までバーチャックを押し込むとしつこく組みついてテイクダウンを狙う。強引にテイクダウンを狙うロペスが一瞬下になるシーンも見られたが、ロペスは攻防をスクランブルに持ち込むとバーチャックのバックを奪い、スタンド状態で相手の背後からチョークを狙う。バーチャックはおぶさる相手を自陣コーナーまで運ぶと、そこでコーナーの指示を聞きながら冷静にロペスを振り落とすと猛烈な打撃とともに相手に襲いかかる。これを凌いだロペスはその後も何度かバーチャックに組み付きその背後を狙うが決定的なポジションは奪えない。
丁寧なジャブで距離をとっていたバーチャックが意表をつく胴タックルで飛び込むと、ロペスから双差しを奪い金網に押し込む。しばらく相手を押し込んでいたバーチャックは距離を取ると離れぎわに鋭いパンチのコンビネーションでロペスをぐらつかせる!力なく退がるロペスだが、その後のバーチャックの飛びヒザは回り込んでかわすと、なんとか相手に組み付きダメージからの回復を図る。ロペスは小外掛けでテイクダウンを狙いつつ、時折バーチャックの右脇をくぐって相手の背後も脅かすが、バーチャックは金網で背中を隠してロペスに決定的なポジションは許さない。
大振りのパンチで組み付き、攻防をグラウンドに持ち込みたいロペスだが、バーチャックはレスリングの攻防で妥協せず、両者の攻防はスタンドのまま試合が進行する。バーチャックの強烈なミドルでロペスのガードは完全に下がっている。息が上がってなかなか前には出れなくなったロペスだが、バーチャックの踏み込みに合わせて渾身の左を振って応戦し、最後まで相手に連打を許さなかった。
ジャッジの判定は29-28、29-28、27-30でアリゾナのアンソニー・バーチャックを勝者として支持。今大会初めての判定決着となった本戦をきわどいスプリット判定で勝利したバーチャックはそのレスリングを強化したことが実り、13勝3敗。一方、最後まで気力のこもった戦う姿を見せたブラジルのギロチン・マシーン、ディレノ・ロペスも今回はその必殺のギロチンは炸裂せず、19勝3敗と戦績を落とした。
バンタム級 5分3ラウンド
ラッセル・ドゥアン vs. ペドロ・ムニョス
初っ端から鋭いワンツー、そして強烈なミドルでムニョスを攻め立てるドゥアン。ドゥアンは頻繁にスタンスを左右に切り替えるが、ムニョスもスタンスを対応させながらこれになんとか食いさがる。ドゥアンの強烈な打撃のプレッシャーをムニョスは距離を詰めて逃れると、胴タックルから押し倒すようにテイクダウン!ムニョスは暴れて立ち上がるドゥアンのバックにしがみつき、正面を向こうとした際に頭の下がったドゥアンをガブるとそのまま飛びつくように相手をグラウンドに引き込むと、ギロチン・チョークで絞めあげる!なんとか頭を引き抜こうとしたドゥアンだったが、ムニョスが得意のギロチンを緩めるはずもなく、1ラウンド2分8秒、ドゥアンにはタップアウト以外の選択肢は残されていなかった。
ブラジルのペドロ・ムニョスは12勝2敗1ノーコンテストとその戦績を伸ばし、ハワイのストライカー、ラッセル・ドゥアンは14勝6敗と戦績を落とした。
バンタム級 5分3ラウンド
フェリペ・アランテス vs. ジェロッド・サンダース
しなやかな左右のキックで飛び込むアランテスは、エリート・レスラー、サンダースのトップ・コントロールをさほど気にしてはいないようだ。強烈なキックの連打にたまらず低いタックルに飛び込んだサンダースをガブッたアランテスはバックを狙いスクランブを仕掛けるが、サンダースは丁寧にトップをキープし、さらにラウンド中盤にはアランテスを完全なマウントポジションでコントロールする。アランテスは相手を引き付けダメージを防ぎながら、じっくりと時間を使ってポジションをハーフ、そしてクローズドガードに戻すが、サンダースが再びポジションをハーフ・ガードに進めて細かなヒジを落とす中、第1ラウンドが終了した。
サンダースの両足タックルを差し上げようとしたアランテスをサンダースは力強くテイクダウンを成功!しっかりとサンダースを引き付けダメージを避けているアランテスだが、下にいる時間が長く印象の悪さは否めない。このままずるずると失速するかと思われたアランテスだったが、サンダースがわずかに腰高になった一種の隙を逃さず相手の右腕を捉えると、まさに電光石火のアームバーを繰り出し2ラウンド1分39秒にサンダースからバーバル・タップアウトを引き出した。
バンタム級への階級転向を成功させたブラジルのフェリペ・アランテスは18勝7敗1分け2ノーコンテスト。対するオクラホマ州のジャロッド・サンダースは15勝3敗1ノーコンテストとなった。
ライト級 5分3ラウンド
ギルバート・バーンズ vs. ウーカス・サエウスキー
テイクダウンを警戒してやや距離を取るサエウスキーはバーンズのタックルに素早く反応して、しっかりと相手を差し上げるとこれを振りほどく。バーンズはサエウスキーとの打撃戦に応じるが、バーンズの右のローキックがサエウスキーの下腹部を直撃し、攻防はしばらくの間中断される。再開後の打撃戦でバーンズのパンチを貰ったサエウスキーは片足タックルで飛び込みダメージからの回復を図る。これを差し上げ防いだバーンズは相手を振りほどくと飛び膝蹴り、強烈なパンチ、そして前蹴りでサエウスキーを棒立ちにさせ、すかさず低いタックルでテイクダウンを奪う。残り時間1分でサエウスキーのバックを奪ったバーンズはリアネイキッド・チョークからアームバーに切り替え1ラウンド4分52秒にタフで知られるサエウスキーからタップアウトを引き出した。
世界最高峰のブラジリアン柔術に加えて強烈な打撃を身につけたブラジルのギルバート・バーンズはこれでUFCで3つ目のアームバーによる勝利を記録。その戦績は11勝1敗となった。一方、自身初めてとなるタップアウト負けを喫したポーランドのウーカス・サエウスキーは13勝2敗となってしまった。
バンタム級 5分3ラウンド
マルコ・ベルトラン vs. レジナルド・ヴィエラ
ヴィエラは大きな踏み込みとともにパンチを振りかぶり、長身のベルトランの懐に思い切りよく飛び込むとテイクダウンを成功させる。金網を背にして立ち上がろうと試みるベルトランと、その背を金網からはがそうとするヴィエラの妥協のない攻防が続くが、ここはベルトランがせり勝ち、ラウンド中盤過ぎに攻防をスタンドに戻すことに成功する。遠い距離からダブルニーで飛び込むベルトラン。この二発目の膝を命中させると、その後立て続けにカウンターのジャブ、首相撲からの膝をヴィエラの顔面に叩き込む。第1ラウンドは前半はヴィエラのテイクダウン、後半はベルトランの打撃が光る、両者が持ち味を発揮したラウンドとなった。
ヴィエラの大振りの右とベルトランのカウンターのジャブがともに命中し、ぐらつく両者に会場が湧き上がる!即座に体勢を立て直したヴィエラは猛烈な右を振り回しながら一気に距離を詰める。ベルトランを金網際で捉えたヴィエラは相手を高々と抱え上げ、オクタゴンの中央にに運ぶとマットに叩き付けるようにテイクダウン!ベルトランは一瞬も無駄にすることなく金網際まで体を移動させると、立ち上がってパウンドに切り替えてきたヴィエラの顔面に強烈な蹴り上げを叩き込む!蹴り上げをまともに貰ったヴィエラはその蹴り足を捉え、足関節技の攻防に持ち込みダメージの回復を図る。ベルトランはトップ・ポジションを取り返し、先ほどのダメージで完全に動きの落ちたヴィエラにがっちりとチョークを食い込ませ、劇的なサブミッション勝利を披露した。
これでメキシコのマルコ・ベルトランは8勝4敗となり、UFCでの無敗記録を更新。 TUFブラジル4優勝者、ブラジルのレジナルド・ヴィエラは14勝4敗と戦績を落とした。
ウェルター級 5分3ラウンド
ビセンテ・ルーケ vs. アルバロ・エレーラ
ブラジルのトータル・ファイター、ルーケがコンパクトなインローで手数を稼ぎ、ラウンド中盤にタイミング抜群の片足タックルでテイクダウンに成功。ヘレーラは一度は立ち上がることに成功したが、ルーケはヘレーラを金網に押し込みしっかりとテイクダウンし直すとコツコツとパウンドを落とす。なかなか立ち上がることが出来なかったヘレーラは残り時間40秒で攻防をスタンドに戻し、得意の強打で反撃を試みるが、ルーケはこれを再び鮮やかな両足タックルで封じて見せた。
第2ラウンドも容易にテイクダウンを成功させるルーケ。ルーケのパウンドに苦しむヘレーラは相手を両足で蹴り離して立ち上がるが、ルーケは相手の立ち上がり際にスピニング・バック・エルボーを叩き込むと即座に両足タックルで飛び込みテイクダウンを成功させ、立ち上がろうともがく相手をダース・チョークに捉えてしめあげる!試合時間2ラウンド3分52秒、ルーケはその強烈なサブミッションでまたもやタップアウト勝利を披露した。
この勝利で戦績を9勝5敗1分けと伸ばしたビンセンテ・ルーケは9月に開催されるブラジル大会への出場をアピール。一方その強打を完封される形で見せ場なく敗れたメキシコのアルバロ・エレーラは9勝4敗となった。