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敗北をばねに、立ち上がるワイドマン

 

 



クリス・ワイドマンは誰もが認めるミドル級王者としてUFC 194を迎えた。長きにわたるアンデウソン・シウバの支配を終わらせた彼は、さらに3勝を重ねて185ポンド級のトップに立とうとしていた。

ところが、運命の2015年12月12日、オクタゴンを出た彼の称号は“元”王者に変わっていた。メディアの前を通り過ぎていく彼のほほには流れた血と涙の両方が入り交じる。プロになって初の敗北をルーク・ロックホールドに喫したのだ。

2人は6月4日(土)にUFC 199のメインイベントで再び拳を交える。ロングアイランド出身のワイドマンはすでにその日を指折り数えながら、ロックホールドからミドル級タイトルを取り戻す算段をしている。

「1日中オレの頭にあるのはルークのことばかりだ。試合をこんなに心待ちにしたのは初めてだぜ。とにかく、ベルトを取り戻すために全力を尽くしている」と先週のUFC 196で長年の友人でトレーニングパートナーでもあるジアン・ヴィランテにハッパをかけるためにラスベガスを訪れていたワイドマンは語った。

敗北から少し時間を置き、彼はこの挫折に明るい面を見いだすことができたという。ロックホールドに屈して奮起したワイドマンは、トレーニングキャンプに対するアプローチを見直し、ジムでのワークを変えた。


無敗のファイターや王者が皆この方法を選ぶとは限らない。彼らは“記録が途切れなかった”と仮定して、方針を変えないこともままあるものだ。しかし、勝利がそれまでの行動を強化するとしたら、敗北は改善のための答えを探すきっかけとなる。ワイドマンは最終的にこの敗北が彼にとって最高の糧になると信じている。

敗北が結果的にプラスになるというというスタンスについて聞かれ、ワイドマンは笑った。「あの当時にそんなことを言われたら、あんたの顔面にパンチを食らわしていたよ。でも、本当にそうなんだ」

「あれがあったからこそオレはフルポテンシャルを発揮することが可能となり、やりたかったトレーニングができるようになった。今はいろいろとやり方を変えながら、この試合に向けてモチベーションと期待を最高潮に高めている。絶対にまたあのベルトを取り返してやる」

彼の最大の変化はトレーニングキャンプの日数が倍に延びたことだ。これまで6週間だったキャンプを12週間に変更した。


その理由の1つとして、彼がロックホールド戦に向けたのキャンプ初日に足を骨折してしまったことが挙げられる。けがのために十分な準備ができず、それは試合のパフォーマンスにも影響を及ぼした。過去にもワイドマンはけがや理想とはいえない状況を乗り越えてきたが、アメリカン・キックボクシング・アカデミーのスターには通用しなかった。それを切り替えたと彼はいう。

「ファイターってのは傷ついていても試合をする。オレは今まで人より悲惨な状態でタフな試合を経験してきたと思う」というワイドマン。彼のUFCデビュー戦は、あばらを骨折しながら臨んだものだった。デミアン・マイアとの対戦では過酷な減量に挑み、骨折した手でリョート・マチダからミドル級王座を防衛している。「こういう経験があったから、それでも何とか切り抜けられるって考えをオレは持っていたのかもしない。でも、そうはいかなかった」

「すべてを足のせいにするつもりはない」と彼は付け加えた。「結局、あの夜はあいつの方がオレより上だったんだ。勝つためにケージに入ったのに、オレは負けた。けど、1つ分かっていることがある。もう6週間のキャンプはやめた。けがをしたとしてもそこで終わらないように、12週間かけてもっと早い段階から調子を整えるようにしたんだ」

最初の対戦前のワイドマンとロックホールドは礼儀正しく交互に自身の才能をアピールし、UFC 194で勝利の権利があることを主張した。そこにののしり合いはなく、2人のエリートファイターが互いに敬意を示す健全なやりとりだった。

しかし、今回は同じことを期待してはならない。


「なれ合いは終わりだ。もう容赦はしねえ」とワイドマンはロックホールドに敵意をむき出しにする。「あいつは陰でくだらないことを言い過ぎた。オレは面と向かって戦い、あいつをたたきのめしてやる。見てろ、ベルトは取り戻す」

「あの試合に負けるなんてあまりにもシュールだった。とても現実とは思えねえのに、ヤツはオレのベルトを巻いていやがる。この短期間でそれを奪還するチャンスを得られたオレはラッキーだし、恵まれていると思う」

「絶対に負けられない相手を1人選ぶとすれば、それはルークだった。前回の試合の時からそうだった」と彼は付け加えた。「だがオレは敗れ、あいつはますますつけ上がった。それはオレの責任なんだから、どうにかしなくちゃな。責任は取るよ。そこにこだわっているわけじゃない。でも、オレの使命の1つではある――あいつには思い知らせてやらなきゃならないんだ」

再戦によってワイドマンが勝てば、彼らは仲良く1勝ずつとなる。3度目、あるいはそれ以上の対戦をすることも考えられ、そのたびにUFCのタイトルは揺れ動くことになる。しかし、ワイドマンはこの展開を一蹴した。

「3回目はどうかな。オレは完全にあいつを滅ぼす。そうすれば3戦目なんて誰も見たがらないだろう」と彼は言い切った。「こんなに試合を待ち望んだのは生まれて初めてだよ。その後何が起きようと構わねえ。でも、オレはヤツを倒すためにすべてのことをやり尽くしている」

「この試合だけは負けるわけにいかねえんだ」