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過去の反省を勝利に生かすレスナー

 

 


ブロック・レスナーは物事を中途半端に終わらせたりしない男だ。アマチュアレスリング、プロレス、短い間ではあったがNFL、そしてMMAでもレスナーは常に自分の求めるものを追い続けてきた。全力を尽くして成功しようが、惜しいところまでいって失敗しようが、レスナーに過去を考えている暇などない。

しかし今は違う。日本時間7月10日(日)に開催されるUFC 200のセミメインイベントでマーク・ハントと対決する元ヘビー級王者のレスナーは、初めてMMAに参戦した頃を振り返り、改善点はなかったものかと考えることがあるようだ。

「シェイン・カーウィン、ケイン・ヴェラスケス、そしてアリスター・オーフレイム、オレにとってこの3人との試合は決して良い思い出ではない」とレスナーは明かした。「オレの頭の中では健康になることに必死だった。オクタゴンを離れて心と体をひとつにして休むべきだったと思う。ただ、オレの中のファイター精神が辞めることをさせてくれなかった。そして今まで4年間、オレは考えに考えを重ねきた」

もしレスナーがヴェラスケスとオーフレイムの試合に勝利していたら、もしカーウィンの5分間の猛攻撃に耐えずして史上最高とも言える逆転勝利を収めていなかったら・・・。2008年から2011年の間にレスナーが最も苦戦した病という難敵がグローブを付けていなかったことを考えると、これら3試合はどれも振り返るに十分値する。

憩室炎を患いながら戦った最後の2試合はレスナーを困らせた。2011年12月にアリスター・オーフレイムに敗れ、MMAを引退した際には“もしレスナーだったら”と何度も考えさせられた。しかし、多くのファンがそんな疑問は二度と答えが明かされないものだと考えていたはずだ。レスナーでさえも自身のMMAキャリアは終わりを迎えたと考えていた。そして彼は再び健康を取り戻した。

「格闘技から一度遠ざからないといけないのは分かっていた。病気だと分かった時にどこかで一度時間を置くことが必要だったし、ただ自分で自分の言うことを聞かなかっただけだ。復帰することは常に頭の中にあった。これ以上戦えないと思いながらも、どこかで復帰を狙っていた。でも、タイミングが正しくないといけなかった。もちろん他にも活動はしてきた。家族が常に一番大事な存在だし、ビンス(マクマホン/WWE代表取締役会長兼最高経営責任者)の下で、アスリートとエンターテイナーとしての任務も果たしてきた。時間がどれくらいかかるか分からないけど、一度アスリートとして活躍したヤツは常にアスリートなんだ。同じように、競争者として活躍したヤツは常に競争に戻りたくなるもんだ」

WWEではプロレス界のスーパースターとして公衆の目を離れることはなく活躍を続けたレスナー。機会を見つけるたびに、昔のようにジムで汗を流していたようだ。

「ここ何年かはフォーカスミットを使ったりしてグラップリングの練習をしたりしていたし、ジムから逃げたりすることはしなかった。アスリートとしてトレーニングするチャンスを見つけるたびに、トレーニングするようにはしていた。だから完璧にMMAから退いていたわけではないんだ」

そう明かすレスナーが復帰を表明したのは6月初旬。UFC 199の途中で流されたUFC 200の告知映像にレスナーの姿が映し出されたのだ。UFC 199から数日後には多くのメディアに出演し、“スーパーサモアン”ことマーク・ハントを相手に復帰することを正式に発表した。対戦相手は多くのファンを驚かせるものだった。強烈なパンチ力を誇るハントは、決して5年間のブランクを経て戦いたい相手ではない。しかし、38歳になるレスナーにとってはいつも通りのことなのだ。

「NCAA(全米大学体育協会)レスリングトーナメントでは相手を選べない」と2000年NCAAディビジョン1チャンピオンのレスナーは語る。「遅かれ早かれ全員と対戦しないといけないんだ。デイナ・ホワイト(UFC会長)が組んだ相手を断ったことはない。1度もない。だから相手は誰でもよかった、ただそれがマーク・ハントなだけだ。マークのキャリアは知っている。素晴らしいキャリアの持ち主だ。物凄いパンチ力の持ち主だし、レスリング経験者と強烈なパンチ力の持ち主の面白い戦いになるだろう。違った戦い方が入り交じっていることがUFCの醍醐味だしな」



ファンの間ではグラウンド戦になればレスナーが有利となり、立ち技勝負になればハントが有利となると考えられている。最近、レスナーはブラジリアン柔術青帯を取得しており、もしサブミッションで勝利すれば、2010年のカーウィン戦以来の一本勝ちとなる。カーウィン戦から6年が経った今でも、誰に何を言われようと気にしないレスナー。今はハントを倒すことだけに集中しているようだ。レスナーの集中はメディアにでもなく、勝敗予想にでもなく、または7月10日以降に何が待ち構えているのかに注がれているのではない。

「試合のことしか頭にないんだ。マーク・ハント相手にケージの中に入ることしか考えていない。子供の誕生日すら忘れてしまうほど。それだけこの試合に集中している。試合のために私生活を中断しているし、犠牲もたくさん払ってきた。生活の中でいらないものはすべて切り捨て、キャンプのために多くの犠牲を払って体調を整えてきた。今日戦おうと思えば戦える。それが結論だ」

今後についてはいまだ決断していないレスナーだが、その声にはいつもの「目の前にある試合に集中するんだ」といった迫力がないように感じられる。しかし、そんなレスナーも以前の活躍がもたらした影響や、ファンがどれだけ復帰を待ち望んでいたことを考えると少し穏やかになった。

「とりあえずどうなるか見てみよう。何が起こるか分からないのが格闘技だから」

前回のUFC出場期間はあまりに短かったものの、その7試合の間でもレスナーが残したインパクトは大きかった。考えてみて欲しい。プロ2戦目にしてフランク・ミアに惜敗し、その3年後にはしっかりとかたきを討っている。ミアとの再戦前には以前PRIDEで活躍していたヒース・ヒーリング、そして殿堂入りを果たしているランディ・クートゥアからヘビー級タイトルを奪い、カーウィンとの圧巻の一戦には見事勝利し、誇るべき功績を残した。

「オレはもっと長い間、格闘技を続けたかった、オレにとって格闘技は楽しむことが重要だった。人生はすべてにおいてタイミングが重要になってくる。UFC 200だろうが、他のタイミングであろうが関係ないんだ。2つの団体(WWEとUFC)とオレの意見が合意することなんてなかなかない。奇跡だ。起こるべくして起こったことだと思っている。マーク・ハントもオレを倒す気でいるだろうけど、オレが輝く場だ。単純な話さ」