
ホルヘ・マスヴィダルは考える。対戦相手が大物であればあるほど、そして契約体重が重ければ重いほど、全てが自分にとって都合がいいと。
南フロリダ出身、キャリア12年にしてUFCライト級で5勝2敗という戦績を残したマスヴィダルは、155パウンドで戦うために体を絞るのは割に合わないという結論を出した。以前の減量について、彼はこう語る。
「試合に至るまでに、砂漠を走り切るようなもんだったよ。」
アル・アィアキンタに極めて微妙な2-1の判定負けを喫してから僅か3ヶ月後の7月、マスヴィダルはウェルター級としてオクタゴンに復帰し、TUFブラジル優勝者のセザール “ミュータンチ” フェレイラと対戦した。そして大きな戦果を挙げたのだった。
いや、正確に言えばその戦果は莫大なものだった。この試合でマスヴィダルは1ラウンドKO勝ちを収めるとともに、パフォーマンス・オブ・ザ・ナイトのボーナスも獲得したのである。
「170パウンド(ウェルター級)の方がはるかに調子が良かったんだよ。本当に良かった。この数年間体を絞り続けていたけど、ずっと170パウンドに上げたかったんだ。ずっと、あと1試合勝てばビッグファイトを組んでもらえる、って思ってたんだ。でもそうはならなかった。だから新しいことにチャレンジしようと思った。はるかにいい調子で、良いパフォーマンスができると思える階級で戦おうとね。ライト級で絶対勝てるはずの相手と戦って、エネルギーが沸いて来なくて勝てなかったことが数回あって、自分に苛立ってもいたんだよ。でも今回オクタゴンに立ったときには、まったく別人のように調子が良かったんだ。計量の時も最高の気分だった。まだ(カットした)水分を体に戻してさえいない時だよ。こんな気分を味わうのは久しぶりだった。計量をクリアして疲れ切っていないっていう状態が、どんなもんだったか思い出すことができたよ。次の日に僕と誰と戦うのが誰であろうと、相手にとって僕は危険な存在だって確信したよ。」
30才のマスヴィダルは、ウェルター級では水を得た魚の如き動きを見せた。パンチを出しながら前に出て、相手のテイクダウン狙いを切り続け、そしてミュータンチが一度テイクダウンに成功したときも、即座にスタンドに戻ることに成功した。こうした得意な戦い方を見せつけた「ゲームブレッド」ことマスヴィダルは、最後には凄まじい肘を炸裂。キャリア11度目のKO勝利を挙げたのだった。それは実に5年以上ぶりの打撃でのフィニッシュだった。
こうして鮮烈なウェルター級デビューを飾ったマスヴィダルは、さらに自身の株を急上昇させる試合に臨むことになった。韓国ソウルで行われる大会のセミ・メインイベントにて、ウェルター級ランキング7位のキム・ドンヒョンとの一騎打ちが決まったのだ。
「僕は長いことキャリアを積んできた。経験においても試合数においても、キム・ドンヒョンや、その他対戦の可能性のあった多くのファイターより僕の方が勝っている。これまで世界中で戦ってきたんだ。UFCは僕を韓国に送り、キムをぶっ倒すチャンスを与えてくれた。それを達成したら韓国の焼肉を楽しむつもりだよ。だから本当に楽しみだ。キムとの試合は大きなチャンスだ。そしてチャンスはでかければでかいほどいい。僕の目標は、最短でウェルター級ランキングを駆け上がることだからね。もしこの試合で勝利を告げられたら、考えられる限り一番の大物に挑戦表明するつもりだよ」
そう語っていたアメリカン・トップチームのベテラン選手マスヴィダルだが、その後、この11月28日の韓国大会は彼にとってより大きなチャンスとなった。メインイベントに抜擢されたのだ。もともとこの大会のメインでは、3度の防衛に成功した元ライト級王者にして、2月にはブランドン・ザッチをチョークで下して見事なウェルター級デビューも果たしたベンソン・ヘンダーソンが、長年トップコンテンダーの座を守り続けるKOアーチストのチアゴ “ピットブル” アウヴェスと戦う予定になっていた。しかし、大会数週間前にしてアウヴェスは負傷により欠場を余儀なくされ、アメリカン・トップチームの仲間であるマスヴィダルが抜擢され、初のUFC大会のメインイベントを務めることになったのだ。
「このカード変更は、僕にとってまさにパーフェクトだ。僕はどの分野においてもベンよりも上だと思う。テイクダウンされても、柔術で勝負したりしないよ。すぐに立ち上がるさ。僕の方が打撃が上だし、ベンのテイクダウンを防ぐことができると思う。逆にこっちが自在にテイクダウンを取れるんじゃないかな。あとは試合場に上がり、世界に向けてそれを証明するだけだ。確かにベンはまだウェルター級ランキングの上位にはいない。でもいずれそうなるよ。僕は選手として分かっている。ベンは、ウェルター級トップ10のうちの多くの選手を倒せるってことをね。ベンの戦い方やその強さをもってすれば、多くの上位ランカー相手に自分のやりたいことを貫き、そして勝つことだろう。そんな相手との試合だから、今回は僕にとって最高のチャンスだ。この試合を通して、僕がライト級でどれだけ強かったかを証明できる。ライト級のウェイトで戦うことなしにね。」
ヘンダーソン戦に向けて、マスヴィダルは世界的に名高いアメリカン・チップチームにて練習を重ねている。今やウェルター級で戦う彼は、減量のためにひたすら走るのではなく、かつてなかったほどのエネルギーをスパーリングとトレーニングに注ぎ込むことができているのだ。そのなかでも最も激しい練習のひとつは、NCAAディヴィジョン1のオール・アメリカンの座に輝いたレスラーにして、アメリカン・トップチームの練習仲間であるコルビー・コヴィントンとともに、コヴィントンの出身校であるオハイオ州立大学のレスリングチームとともに行うものだ。このような経験を経て、マスヴィダルは試合を自らの望む形、つまりスタンド戦で進められると自信を深めている。
「ベンがこっちの足を掴もうとしてきたり、他になんでもいいから仕掛けてくるのが今から待ち切れないよ。そしてベンは気付くんだ。僕をテイクダウンすることが不可能だとね。それにも増して重要なことは、僕を抑え込むのは不可能だってことだ。テイクダウンされることはあるかもしれない。でも僕を抑え込み続けることはできないよ。世界中の誰もね。それはあり得ない。君に断言するよ。絶対にあり得ないとね。誰も僕を抑え込めないし、僕の心を折ることはできない。今まで僕に蹴りを放っては足を使って逃げようとするような相手とはさんざん戦ってきた。でも僕を3ラウンドに渡って抑え込んで上に居続けることができる相手は存在しない。僕の世界において、そういうことは起こらない。」
今週土曜日、韓国のソウルにおいてマスヴィダルは、元UFC王者のヘンダーソンから大きな勝利を収め、大いにアピールしてみせる気に溢れている。
「韓国に行って大暴れするのが本当に楽しみだ。僕のファンも試合を楽しみにしてくれるはず。世界でもっとも熱烈な僕のファン達がね。彼らは、僕がアンダードッグ扱いされることを望んでいるんだよ。そうすればこの試合で、僕の勝利に自分の家を賭けることができるからね。」