”ショートノーティス(直前の試合出場要請)”という考え方を持たない選手がいる。ドナルド・”カウボーイ“・セラーニはその代表選手だが、もう1人の”カウボーイ”ことブラジルのアレックス・オリベイラも同類だ。したがって、日本時間22日(月)に開催されるUFCファイトナイト・ピッツバーグのわずか2週間前に、オリベイラがセラーニとのウェルター級戦を受諾したのも驚くにはあたらない。 ティム・ミーンズの代打で元ライト級コンテンダーと戦うことについてオリベイラは「ためらいは何もなかった」と語っている。「UFCが必要ならいつでも呼んでほしい。僕はいつでも準備ができている。トレーニングを休むことはないんだ。僕らはいつでも戦う準備ができていないといけないと思う。だって、戦いはいつなんどきでも起き得るんだからね」
言うは易しにも思えるが、オリベイラの場合、現実も別次元である。今回オリベイラがコンソール・エナジー・センターのオクタゴンに足を踏み入れれば、彼にとってはこれが過去12カ月で6試合目を数える。しかも、試合当日は彼の28歳の誕生日だ。このペースで試合をすることにジェラシーを感じるのがまさにセラーニである。だからこそ、この2人、勤労精神が似ているだけでなく、ニックネームまで同じなのもうなずけるところだ。とはいえ、オリベイラは”カウボーイ”によりふさわしいのは自分の方だと疑いなく信じている。 リオデジャネイロ州トレスリオス出身のオリベイラは「真のカウボーイは自分だ。オレはかつて本物の牛を乗りこなしていたし、本物のロデオコンテストにも出ていたからね」と明かす。 オリベイラの生活は苦しかった。オクタゴンでの戦いの方が楽だというわけではないものの、少なくとも今は、UFCでのキャリアのおかげでトンネルの先に光が見え始めている。2015年はオリベイラにとって忘れられない年になったと振り返った。 「魔法のような1年だった。世界最大のMMAイベントに出場し、母親に家を買ってやることができた。2016年がもっといい年になるといいなと思っているよ」 2015年のスタートをローカル団体での勝利で飾ったオリベイラは、その試合の1カ月後にUFCから急きょオファーを受け、無敗のライト級の星、ギルバート・バーンズと対戦。試合時間残り46秒にサブミッションで捕まるまで、あわやアップセット勝利かと思わせる試合をやってのけた。 その2カ月後、またしても代打で試合に出場したオリベイラは、ウェルター級マッチでK.J.ヌーンズに一本勝ち。そのオクタゴン初勝利から一月も経たないうちに、オリベイラはウェルター級にとどまったまま、今度はジョー・メリットを下した。昨年11月、ライト級に戻ったオリベイラはピオトル・ホールマンにノックアウト勝ちを収め、パフォーマンスボーナスを獲得。そして、ボーナスはそのまま母親の自宅購入資金に宛てられた。この物語が、試合への強い意欲や、栄光への厳しい道のりと相まって、オリベイラをブラジルですっかり人気者にした。 「ファンが応援してくれるのは、僕が善人で、苦しい生活をしているからだと思う」と彼は語っている。「サバイバルするために戦わなければならない人たちに共感を得ているのだろう。僕は試合を断らない。とにかく出場して戦う。素晴らしい試合をお見せすることが大好きなんだ」 今回のメインイベントについては、ほぼ確実に素晴らしいショーになるというのが衆目の一致するところだが、オリベイラは決して良い試合をするために出場するのではない。彼が” 鉄鋼の街”の愛称を持つピッツバーグには来るのは、あくまで勝つためなのだ。 「セラーニは危険なキックを放つ」とオリベイラは対戦相手を分析する。「でもそれ以外は、彼のような相手と戦ったことはすでにある」 オリベイラが誇る17戦13勝の戦績を考えれば、きっと、その試合でも勝ったのであろう。さらにオリベイラはウェルター級での戦績も豊富で、今回がウェルター級転向初戦となるセラーニには一日の長があるという。 「ウェルター級とライト級は全然違うからね。セラーニは僕に力負けすると思うよ」 しかし、この試合に勝ったとして、オリベイラはウェルター級にとどまることになるのだろうか。 「それは分からない。考えてみないといけない。ただ、僕が好きなのは今でもライト級だ」 彼に分かっていること、それは2016年がこちらの”カウボーイ”にとって、またしても忘れられない1年になるであろうことだ。 「たくさん勝って、たくさん笑いたいね」