にわかには信じがたいかもしれないが、今年の3分の1がもう終わった。序盤4カ月が終わった時点で、2025年のUFCが大成功を収める道筋が、もう見えている。
1月には2つのイベントがあった。2月と3月には合わせて9のイベントが開かれ、興奮度は最大まで高まっていく。4週あった土曜日のうちの3つにイベントが組まれた4月には、それがやや落ち着いた。5月が始まる今、3幕からなる舞台の登場人物たちについてはよく分かってきた。いくつかの伏線が張られているのも見える。しかし、クライマックスはこれからであり、第2幕と第3幕が意外な展開になる可能性や、特別ゲストの登場もあり得る。
今週末、アメリカ・アイオワ州デモインで第2幕が上がる。オクタゴンの物語、第1幕の最後の展開を振り返り、新章に備えよう。
ブレイクアウト・パフォーマンス:パディ・ピンブレット(UFC 314)

このチョイスについては、文句のつけどころがないはずだ。あえてつけるという者がいるのなら、その根拠としては次の2つのケースが考えられる。一つには、その人物がすでに “パディ・ザ・バディ”を全面的に支持しており、今さらブレイクアウトどころの話ではない場合。もう一つには、その人物がリバプールから来たこのライト級ファイターに関心を持つことは未来永劫なく、ピンブレットがいかなる成功を収めようとも、この階級における立ち位置について評価が変わることはない場合だ。
マイアミが舞台のUFC 314でピンブレットがマイケル・チャンドラーを相手に見せた猛烈な闘志は、多くのファンや事情通にとって、深いため息と共に“オーケイ・・・”と(背もたれに背中を委ね、頭をどちらかの肩に預けながら)つぶやかざるを得ないものだった。カリスマ性を備えたスターは、軽々と目標点に到達し続けている。それが常に、前へと動いているにもかかわらず。
チャンドラーとの対戦は、人気が高まっていたイギリス人ファイターが“実際のところ、どの程度の位置にいるのか”を見るための戦いだと見られていた。これまでにさまざまな選手が、そういった戦いに臨んできた。しかし、ふたを開けてみれば、ピンブレットの一方的な勝利に終わっている。この戦いを見た者は、どんどん少なくなっていく、ライト級ランキングで自分より上にいるファイターたちと戦ったとき、ピンブレットが何を見せてくれるのかを思わずにはいられなかっただろう。
UFCにやってきて以来、30歳のスカウサー(リバプールの住民)は体を強化し、レベルアップしてきた。この試合ではこれまでで最高のパフォーマンスを見せている。ピンブレットは自信に満ち、(UFCでは)ライト級タイトルを手にしたことがある相手にしか負けたことがない、敬意を集めるベテランに勝ち切った。それでもなお、「いや、でも・・・」と言いたくなる者はいるのだろう。一つ覚えておいてほしい。まったく同じ試合展開で、チャンドラーとピンブレットを入れ替えたとしたら、そういった理屈が出ることは一切ないはずだ。

自分自身に挑戦し、それほど高くなかった周囲の期待や評価をひっくり返してしまうファイターというのが、定期的に出てくる。このスポーツの魅力の一つだ。そして、それこそNext Generation MMAからやってきたピンブレットが、過去数戦でやってのけたことでもある。
こう考えてみれば、パディ・ザ・バディがライト級でどれほどの道のりを歩んできたかという点一つを取ってしても、このファイターにみじんも興味が持てない理由などあるわけがない。次に何をやってくれるのか、人をうずうずさせてしまうファイターだ。
特別賞:パット・サバティーニ、マルコ・トゥリオ、チェイス・フーパー、マルコム・ウェルメーカー、ジャン・ミンヤン
サブミッション・オブ・ザ・マンス:ブライス・ミッチェルにタップアウトさせたジェアン・シウバ(UFC 314)

ブライス・ミッチェルとのフェザー級マッチに向けてマイアミに乗り込んだFighting Nerds所属のジェアン・シウバは、ここで名乗りをあげ、実力を証明してみせるつもりだった。シウバはその両方をやってのけたばかりか、そのプロセスを通じて大きく株を上げている。
サウスビーチでの一週間を通じて、よりアグレッシブで見ごたえがあったのが、ブラジルからやってきたシウバの方だった。その状況はオクタゴンでも続き、28歳のシウバは画面越しにも伝わるほどの自信に満ちた戦いを見せている。試合の始まった瞬間から、シウバがミッチェルの応戦を意にも介していないのは明らかだった。それどころか、シウバはミッチェルを追い詰めるのを楽しんでいるようにさえ見えた。シウバは勝利を確信しているかのようで、肉食動物が獲物で遊んでいるようであり、攻撃はするものの、以前の試合で求めていたような、フィニッシュによって戦いを早く終えるチャンスを探している様子はなかった。
しかし、第2ラウンドが残り1分ほどになったところで、シウバは急に攻撃を強め、狩りの仕上げにかかる。右の一撃でミッチェルを痛めつけてカンバスへと崩すと、相手がレスリングで反撃し、体勢を立て直そうとする動きを封じてニンジャチョークへ。このチョークはあまりにもタイトであり、タップアウトした直後にミッチェルは意識を失った。次の瞬間にミッチェルが目にしたのは、犬のように吠えながら自分を見下ろすシウバの姿だったことだろう。
細かいところまでじっくり吟味してもなお、あらゆる敬意と共に、シウバは絶対的な脅威だと言える。シウバは喜んで混沌に飛び込む一方、その中で成功を収められるファイターでもある。そして、これまでのところ、対戦してきたどの相手よりも使える武器が多いことを示してきた。今回の勝利によってシウバはトップ15に食い込んでおり、その上にいるファイターたちとの試合は、どれも魅力的な一戦になるだろう。

オクタゴンに足を踏み入れるたび、シウバは自らの力を示してきた。この試合でもまた、恐るべき選手として急浮上中のフェザー級ファイターが、ダイナミックな勝利をあげている。
特別賞:ジオニ・バルボーザ vs. ディアナ・ベルビツァ、ヘイリー・カワンを倒したノハ・コノル、ポリアナ・ヴィアナを倒したジャケリニ・アモリン
ノックアウト・オブ・ザ・マンス:ニコラス・ダルビーを仕留めたランディ・ブラウン(UFCファイトナイト・カンザスシティ)

どうやら、ランディ・ブラウンは毎年、オクタゴンでの最初の試合を見事なノックアウト勝ちで満喫しているようだ。2025年の初戦で、ブラウンは4月のノックアウト・オブ・ザ・マンスに輝いている。
昨年2月、“ルードボーイ”ことブラウンはクリーンな1-1-2でムスリム・サリコフをその場に崩れさせた。今年のブラウンはニコラス・ダルビーからフィニッシュを奪った最初のファイターになることで、1年をスタートさせている。
ノックアウトそのものに至る前についても、触れないわけにはいかないだろう。第1ラウンドでは、ブラウンの右の一撃によってダルビーの鼻が完全に変形してしまった。一見して、自宅の画面で見ている者にとっては、思わず声を上げてしまうほどのショットではない。しかし、ブラウンがダルビーへの攻撃を始めた瞬間に、何かを見落としているのではないかという感触はあった。
ダルビーの姿が“フル・アルロフスキー”状態になってしまったのを見て、なぜブラウンがこの攻撃を繰り出したのかは理解できただろう。ダルビーのために触れておくと、ダルビーはこれにも優れた対応をし、第1ラウンド終盤にはライバルをダウンして、試合をさらに盛り上げた。第2ラウンドが始まると、それぞれのコーナーから出てきた両者は、シンプルにスタンドでの打ち合いに没頭していく。

第2ラウンド開始から90秒にわたってハンマーを振るいあった2人。ブラウンの右の一撃をまともにくらった40歳のベテランが、顔面からどさりとカンバスに落ちたとき、戦いは終わった。昨年4月に、UFC 300でマックス・ホロウェイがジャスティン・ゲイジーに勝利したときを思い起こさせる結末だった。同時に、ブラウンがウェルター級において、経験豊富で危険な選手であることが、改めて実感されている。
いずれ新たな年を迎えたとき、ブラウンのその年最初の対戦相手になることを嫌がる選手も出てくるだろう。なぜなら、見事なノックアウトの助演を務めさせられることが、歴史的に証明されているからだ。
特別賞:トゥリオ vs. トレーシャン・ゴア、ミハル・オレクシェイチュク vs. セドリクエス・ドゥマス、ドミニク・レイエス vs. ニキータ・クリロフ、ヨセリン・エドワーズ vs. チェルシー・チャンドラー、ティミー・クアンバ vs. ロベルト・ロメロ、ウェルメーカー vs. キャメロン・サーイマン、イクラム・アリスケロフ vs. アンドレ・ムニス
ファイト・オブ・ザ・マンス:ディエゴ・ロペスを下したアレクサンダー・ヴォルカノフスキー(UFC 314)

チャンピオンシップマッチがこうした月間表彰で優位に立ちやすいのは、懸かるものが大きく、通常は階級トップクラスの実力者同士が対峙するからだ。
今月の賞に選ばれた空位のフェザー級王座を懸けた戦いは、アレクサンダー・ヴォルカノフスキーとディエゴ・ロペスの双方が好機をつかみ合う、見応えある接戦だった。それだけでなく、多くの教訓と示唆をもたらす1戦だったという点でも特別な意味を持つ。この試合以外に賞を与えるのは、この対戦が残した価値に対する正当な評価とは言えないだろう。
まず何よりも、この試合は素晴らしい激闘だった。世界最高峰のフェザー級ファイター2人による25分間の攻防の中で、ヴォルカノフスキーは自身の健在ぶりを見せつけ、ロペスも頂点まであとわずかであることを証明した。
しかし、この試合をこれほど見事なものにした要素はそれだけではない。もうひとつの魅力は、大一番での立ち回りを熟知している経験豊富な元王者が、初めてタイトル戦に臨む挑戦者が見せた戸惑いの隙を突いて、序盤からリードしていく構図にある。スポーツの世界では、個人でもチームでも、頂点に立つ前に何度か失敗を経験するものだと言われるが、この試合はまさに、才能に恵まれたブラジル人ファイターにとってその瞬間だったように感じられる。

そして最後に、この1戦は今後12から18カ月にわたるフェザー級戦線の行方に対する関心を一気に高めただけでなく、UFC史上最も偉大なフェザー級王者は誰かという問いについて、改めて真剣に考えさせられるきっかけにもなった。
ジョゼ・アルドはフェザー級初代王者として君臨し、UFCでは最多の7度にわたる防衛に成功。さらに、UFC移行前のWEC時代にも複数回の防衛実績を残している。一方、ヴォルカノフスキーは2度の戴冠を果たしており、アルドに勝利しただけでなく、アルドと自身の間に王座を保持していたマックス・ホロウェイには3勝。初めて王座に就いてからは、5度の防衛に成功している。
ここでその優劣を論じるつもりはないが、この対戦を経て、その議論がより興味深いものになったことは間違いない。
特別賞:ジム・ミラーを下したチェイス・フーパー、ダルビーを下したブラウン、カルロス・プラテスを下したイアン・マシャド・ガリー