最初の週末が月初に当たったため、最終週にはイベントがなかったにもかかわらず、8月には4つのイベントが、充実のパフォーマンスによってファンを楽しませてきた。
この8月こそは、ついに複数の部門で複数の対象に賞を与えることも考慮された。というのも、1人の勝者を選ぶことは、他の傑出したパフォーマンスを軽視することのように感じられたからだ。しかし、このコーナーに引き分けはふさわしくない。難しい決断を経て、各カテゴリーに1人の勝者を選出した。ただここで触れて起きたいのは、ここで特別賞に選ばれているパフォーマンスのいくつかは、他の月であればタイトルを得ていたに違いないということだ。
2025年8月の、熱いオクタゴンに再び飛び込もう。
ブレイクアウト・パフォーマンス:レローン・マーフィー(UFC 319)
アーロン・ピコとの対戦が組まれたUFC 319を前に、レローン・マーフィーはフェザー級ランキング6位につけていた。UFCでは8連勝を飾り、オクタゴンでの9試合を無敗で終え、通算戦績は16勝0敗1分。それでもなお、下馬評では劣勢と見られていた。
34歳でマンチェスター出身のファイターは、ここ数年で最も過小評価されてきた実力者の1人だ。その理由は、派手さよりも技巧を、口先のアピールよりも実力を重視するその姿勢にある。エドソン・バハボーザ、ダン・イゲ、ジョシュ・エメットといった同じようなスタイルの強豪たちを下し、静かに連勝を伸ばしてきた。
一方のピコは、アブダビで予定されていた無敗のロシア人コンテンダー、モフサル・イヴロイエフとの対戦が流れ、新に組まれたUFC初登場の舞台に臨んでいた。28歳のピコは、『Bellator MMA(ベラトールMMA)』と契約した当初から、史上最高のプロスペクトとの呼び声が高かった。キャリア序盤にはつまずきもあったが、その後は9勝1敗と巻き返し、唯一の敗戦も負傷によるものだった。
新たな血、新星の到来。ピコはアレクサンダー・ヴォルカノフスキーへの挑戦権をつかむべく、自らがトップコンテンダーであることを証明しようとしていた。
だが、マーフィーにはその筋書きは通用しなかった。
セミメインイベントが始まって3分あまり。マーフィーは近づいてきたピコを迎え、右回転して放った肘がピコの額を直撃。一撃でノックアウトした。
これはまさに、長年影で戦い続けてきた男に格闘技の神が与えたご褒美のような試合だった。否応なく周囲が注目せざるを得ない結果、見て見ぬふりをしてきた者たちが認めざるを得ない瞬間となった。これは運ではなく、純粋なスキルと完璧なタイミングがもたらしたものだ。マーフィーは常に、オクタゴン内で非凡な技術と戦術眼を持つファイターであり続けている。ただ、時にあらゆる巡り合わせが重なり、真に実力ある者にチャンスと結果が与えられる。そして、観客の多くが「すまなかった。これまでは君のすごさを知らなかった」と口にするだろう。
今や誰もが、マーフィーがとんでもない男だと理解している。
特別賞:エライジャ・スミス、ジョセフ・モラレス、バイサングル・ススルカエフ、ウラン・サティバルディエフ、イー・ジャー、カイル・ドーカス
サブミッション・オブ・ザ・マンス:朝倉海を1本で下したティム・エリオット(UFC 319)
今月は悩ましい選出となった。アンソニー・ヘルナンデスによるロマン・ドリッゼへの容赦ないチョーク、ジョセフ・モラレスのアリビ・イディリスに対する劇的なフィニッシュ、そしてウラン・サティバルディエフのエゼキエルチョーク。どれもが他の月であればトップに選ばれていてもおかしくない完成度だ。それでも頂点に立ったのは、エリオットの朝倉戦での1本勝ちだった。
アカデミー賞で、飛び抜けた演技ではなくても、これまでの功績を称えて、今こそこの人にオスカーを渡すべきだと評価されることがあるだろう。それと似たような状況だ。
エリオットは2012年にUFCがフライ級を導入した初期から参戦していたファイターで、シドニーでフライ級が初お目見えした1カ月後にUFCと契約を交わしている。しかし、ジョン・ドッドソン、アリ・バガウティノフ、ジョセフ・ベナビデスというタイトル挑戦者たち、そして元ベラトール王者のザック・マコウスキーに敗れ、最初の6試合で2勝4敗に終わったことでリリースされた。
その後、エリオットはジ・アルティメット・ファイター・シーズン24に出場。優勝者が“マイティ・マウス”ことデメトリアス・ジョンソンへの挑戦権を獲得する形式のこのイベントで頂点に立ち、長年王座に君臨してきたジョンソンに対しても果敢に挑んだ。以降、エリオットはフライ級トップ15の常連として名を連ねてきた。
この競技を追いかけているファンなら、エリオットがここ数年、私生活でさまざまな困難に直面してきたことを知っているはずだ。ロバート・フォリスの死去を乗り越えたことや、娘との時間を大切にするために20カ月間キャリアを休止したこと。そして、今回の朝倉戦が復帰の第一歩となった。
復帰戦でも、エリオットは変わらず独特なスタイルを貫いた。前戦でタイトルに挑んだことで注目されていた朝倉を相手に、見事なマウントからのギロチンチョークで1本勝ちを収め、これ以上ない復帰劇を展開。この勝利は、エリオットがいかに難攻不落な相手であるか、そして絶好調の時には誰にとっても危険な存在であることをあらためて示すものとなった。
ミズーリ出身のエリオットは、これで連続の1本勝ちを達成。直近5勝中4つ、そして8戦中6勝を1本で飾っており、敗北はいずれもトップ10選手との対戦時だった。
これはファンに愛されるベテランが見せた見事なパフォーマンス。そして、思わず称えたくなるような、そんな心に残る1戦だった。
特別賞:オースティン・バシ vs. ジョン・ヤニス、平良達郎 vs. パク・ヒャンソン、アンソニー・ヘルナンデス vs. ロマン・ドリッゼ、モラレスvs. アリビ・イディリス、ススルカエフ vs. エリック・ノーラン、ティバルディエフ vs. ディヤル・ヌルゴジェイ
ノックアウト・オブ・ザ・マンス:“ランペイジ”ことクイントン・ジョンソンを彷彿とさせるKOを決めたイライジャ・スミス(UFCファイトナイト・ラスベガス109)
SNS全体が即座に同じ反応で沸き立つ時、それは年間最高クラスのノックアウトが決まった瞬間だと言っても過言ではない。
スミスと風間敏臣の1戦が終わった瞬間、まさにそれが起きた。試合終了と同時に、誰もが「ランペイジ!」と叫び、『PRIDE GRANDPRIX 2004 2nd ROUND(プライド・ブランプリ2004セカンドラウンド)』で元UFC王者のジャクソンがヒカルド・アローナを叩き落とした“パワーボム”のGIFを次々と投稿した。
こうしたスラムはすさまじく、そして破壊的だ。風間が無事だったのは本当に幸いだが、だからこそ、こうした稀な一撃はいっそう際立つ。まるでスローモーションで交通事故が起こる瞬間を目の当たりにしているようだった。どう展開するかはすでに予想がついており、そしてその通りの衝撃的な結末が訪れる。
第1ラウンド残り1分を切ったところで、風間が下からトライアングルチョークを狙った瞬間、スミスはすかさず身体を持ち上げ、体勢を整えながら、強烈な衝撃と共に風間をキャンバスに叩きつけた。スミスが持ち上げに入ったその瞬間、誰もが結末を悟り、目が離せなかった。
これで今年2勝目を挙げたスミスは、デイナ・ホワイトのコンテンダーシリーズ出身者として、バンタム級での将来的な台頭を予感させる存在となった。
特別賞:中村倫也 vs. ネイサン・フレッチャー、ウロシュ・メディチ vs. ギルバート・ウルビナ、ヨセリン・エドワース vs. プリシラ・カショエイラ、クリスティアン・リロイ・ダンカン vs. エリク・アンダース、カルロス・プラテス vs. ジェフ・ニール、マーフィー vs. アーロン・ピコ、イー・ジャー vs. ウェスティン・ウィルソン、ドーカス vs. ミシェル・ペレイラ、チャールズ・ジョンソン vs. ロニー・カヴァナ
ファイト・オブ・ザ・マンス:激闘を繰り広げたクリス・ダンカンとマテウシュ・レベツキ(UFCファイトナイト・ラスベガス108)
この試合こそ、“スロバー・ノッカー”の真骨頂だった。つまり「極めて激しく、肉体的に過酷な試合。または、激しい打撃や選手同士の衝突など」と定義されるような戦いだ。
15分間のすべてを通して、ダンカンとレビツキは何度も激しい一撃を打ち合い、オクタゴンの隅々で衝突を繰り返した。キャンバスには血が飛び散り、画家ジャクソン・ポロックの新作が誕生したかのようだった。両者とも一歩も引かず、最後のホーンが鳴った時には、まるで地獄をくぐり抜けてきたかのような姿だった。顔面を裂傷と血で染め、疲労と誇りが入り混じった表情を浮かべていた。
判定で勝利を収めたのはダンカン。2022年にデイナ・ホワイトのコンテンダーシリーズから昇格して以来、6戦で5勝目、3連勝を飾った。一方でレビツキも、層の厚いライト級戦線において評価を落とすことはなかった。
今後、より注目度の高い試合がファイト・オブ・ザ・イヤー候補として話題を集めることは間違いないが、この試合も現時点ではその有力候補の一つと言える。そして、季節が秋に変わろうとしている今、最有力候補と見なされても不思議ではないだろう。
特別賞:エステバン・リボビクス vs. エルブス・ブレナー、ルーピー・ゴディネス vs. ジェシカ・アンドラージ