7月はオクタゴンでの戦いは、始まったと思った瞬間にあっという間に過ぎ去っていった。3回のイベントで合わせて38試合が行われ、月間レポートで称えるべきパフォーマンスは目白押しだ。
2026年後半戦に入ってすぐのこの月間から、映像を徹底的に見返し、データを精査した結果、次のファイターたちとそのパフォーマンスを称えたい。
ブレイクアウト・パフォーマンス:トミー・マクミレン
“ガン”ことトミー・マクミレンの試合は、またしても激しい打ち合いにもつれ込むかと思われた。しかし、レッドホーク・アカデミー所属のマクミレンは一気にギアを上げ、同じくデイナ・ホワイトのコンテンダーシリーズ(DWCS)出身のアルベルト・モンテスに打撃を次々とヒットさせて、瞬く間に主導権を握った。第3ラウンド終盤、モンテスはこのまま試合終了のホーンまで持ちこたえそうに見えたが、マクミレンは手数と攻勢を再び強め、残り約90秒でベネズエラ出身のモンテスをケージ際に追い詰めてフィニッシュを奪っている。
これでUFCでの戦績を2勝0敗としたマクミレンには、今後フェザー級で大きな期待が寄せられるだろう。マクミレンにはDWCS出身で、“シュガー”の異名を持つショーン・オマリーとのつながりもあり、UFCデビューから2試合連続でメインカードに起用されてきた。その期待に違わず、いずれの試合でもボーナスを獲得するパフォーマンスを披露し、その抜擢(ばってき)が正しかったことを結果で証明している。将来のスーパースター候補として高く評価されるマクミレンは、試合後に自身が拠点を置くアリゾナ州で9月に開催されるノーチェUFCへの出場をアピールしており、その実現も十分にあり得るだろう。
フェザー級では恵まれた身長とリーチが大きな武器となっている上、手数の多いファイトスタイルには、まだ完成度こそ及ばないものの、若き日のマックス・ホロウェイを思わせるものがある。打ち合いを恐れない姿勢に加え、ここまで幾度となくタフさと粘り強さを示してきたことを考えれば、マクミレンの今後に期待が集まるのも当然と言える。
ここから先は、一戦一戦の重要性がさらに増していく。勝利を重ねるたびに注目度は高まり、背負うプレッシャーも大きくなるからだ。マクミレンなら、プレッシャーが才能を開花させると言うかもしれない。しかし、誰もがそのプレッシャーに耐えられるわけではない。強豪がひしめくフェザー級戦線で、自らが本物の原石であることを証明し続けられるかは、これからの戦いにかかっている。
特別賞:アレサンドロ・コスタ、ライアン・ガンドラ、デミアン・ピナス、ルーク・ライリー、ゲイブル・スティーヴソン、R.J.ハリス、フェリペ・フランコ、アブドゥル・フセイン、サム・パタソン、ムハンマド・サイードフ
サブミッション・オブ・ザ・マンス:ブノワ・サン・ドニを絞め落としたパディ・ピンブレット(UFC 329)
このサブミッションに特別な名前を付ける必要があったとは思わない。それでも、今月のベストサブミッションだったことは間違いない。ここ3週の土曜日だけを振り返っても見事な1本勝ちが数多く生まれただけに、その価値はなおさら際立っている。ピンブレットを批判したがる人たちは、サン・ドニが開始早々にタックルへ入り、長身のリバプール出身ファイターを相手に頭を外側へ出す形のテイクダウンを狙った判断自体が間違いだったと言うだろう。それはもっともな指摘だ。しかし、“ザ・バディ”ことピンブレットなら、相手のその選択につけ込むことは最初から分かっていたはずだ。素早くサブミッションを極め、そのままサン・ドニを眠りにつかせた手際は高く評価されるべきだろう。
フィニッシュ自体は、驚くような珍しい技ではない。ピンブレットが素早く、そして深く極めたのはダースチョークだった。しかし、この一本を特別なものにしたのは、ピンブレットならではのリーチの長さと柔軟性だ。あの体勢で座り込みながらダースチョークを仕掛け、なおかつ相手を失神させるほどの凄まじいグリップを維持していた場面は、記憶にある限り見たことがない。さらにピンブレットは、上からの圧力を強めるために左足を相手の背中に回していた。最初に引き込んだ時点では両足をクラッチしており、サン・ドニが回転して右足こそ外されたものの、この工夫が相まって月間最高賞にふさわしい唯一無二のフィニッシュとなった。
また、ヴァルテル・ウォルケルにも特別賞を送りたい。アブダビで開催されたイベントで、トーマス・ピーターセンにカーフスライサーを極め、5試合連続となる第1ラウンドでの1本勝ちを挙げた。カーフスライサーでの1本勝ちはUFC史上2人目の快挙となり、ヘビー級では通算サブミッション勝利数で歴代4位に浮上。さらに、現代UFCにおける連続サブミッション勝利数でもデミアン・マイアに並ぶ最多タイの5連勝となった。なお、この部門の歴代最多記録は、ホイス・グレイシーが持つ6連勝だ。まさに対戦相手にとって悪夢のような存在である。
特別賞:コスタ vs. コーディ・ダーデン、ブランドン・ロイバル vs. ロニー・カヴァナ、ジオニ・バルボーザ vs. アナ・メリサノ、チェイス・フーパー vs. ミッチ・ラミレス、フセイン vs. コーディ・ギブソン、アクセル・ソラ vs. イスマエル・ボンフィム、ヴァルテル・ウォルケル vs. トーマス・ピーターセン
ノックアウト・オブ・ザ・マンス:アルヴィン・ハインズを豪快に沈めたR.J.ハリス
相手を一発の打撃で宙に浮かせるには、どれほど完璧な一撃を打ち込まなければならないか。そして、その吹き飛ばされた相手が身長約188cm、体重約120kgのヘビー級ファイターだったことも忘れてはならない。
これだけでも、今月一番のノックアウトにふさわしいと言えるだろう。
試合の9日前にオファーを受けたハリスは、ハインズとの短期決戦となった1戦で、開始から約60秒間は落ち着いて様子をうかがっていた。しかし、一度攻勢に転じるとすぐにハインズへダメージを与え始める。“グージー”ことハインズが右ストレートを空振りすると、“ザ・ハンマー”ことハリスは鋭いアッパーカットでカウンターを合わせ、その一撃でハインズの身体を宙に浮かせてキャンバスへ沈めた。すぐさま追撃に入り、レフェリーストップを呼び込むだけのパウンドを浴びせて、鮮烈な形でUFC初勝利を飾っている。
ハリスもまた、今後のヘビー級で注目すべき若手の一人だ。ウォーカー、ヴィトー・ペトリーノ、マリオ・ピント、ゲイブル・スティーヴソン、ジョシュ・ホキットと並び、30歳未満ながら、まだ短いUFCキャリアの中ですでに大きな可能性を感じさせるファイターとなっている。もちろん、ハインズに圧勝したことと、実績豊富なベテランやランキング入りの選手を倒したことを同列には語れない。それでも、これ以上ないスタートを切ったことは間違いなく、ハリスが今年後半にどんなパフォーマンスを見せるのか、期待せずにはいられない。今後の戦いも要注目だ。
特別賞:デミアン・ピナス vs. セザー・アウメイダ、エイドリアン・ヤニェズ vs. コーディ・ガーブラント、ゲイブル・スティーブンソン vs. イライシャ・エリソン、ロバート・ウィテカー vs. ニキータ・クリロフ、キング・グリーン vs. テランス・マッキニー、フェリペ・フランコ vs. レヴィ・ホドリゲスJr.、トミー・マクミレン vs. アルベルト・モンテス、サム・パタソン vs. サンティアゴ・ポンシニビオ、ムハンマド・サイードフ vs. ダスティン・ジャコビー
ファイト・オブ・ザ・マンス:輝きを取り戻したフライ級(UFC 329)
数年前、あらゆる試合が名勝負となり、試合の質や層の厚さという部分でUFC随一の階級だと見られていたのはバンタム級だった。
今、その栄誉はフライ級のものとなっている。
ジョシュア・ヴァンと平良達郎の一戦が『UFC.com』が選ぶハーフイヤーアワードでベストファイト部門1位に輝いたのに続き、UFC 329ではブランドン・ロイバルとロニー・カヴァナが一進一退のハイレベルな戦いを繰り広げ、第3ラウンドでロイバルが1本勝ちを収めたこの試合も今年のベストファイトの有力候補になっている。
この試合は、ベテランコンテンダーと、大金星を挙げて頭角を現した新星による王道の一戦だった。結果としてはベテランの勝利となったものの、カヴァナも素晴らしいパフォーマンスを見せており、ランキングを大きくことも、評価を下げることもないだろう。ロイバルはどんな戦いもいとわないファイターであり、昨年はヴァンとの試合がファイト・オブ・ザ・イヤーに選ばれている。また、今回のような激戦も多く経験してきた。
“ロー・ダーグ”ことロイバルが最終的に主導権を握り、フィニッシュを決めたのは、その攻撃の多彩さが可能にしたことだ。試合終盤のカヴァナはテイクダウンを止めることも、そこから切り返すこともできず、ロイバルはディフェンスを気にすることなく攻めてフィニッシュしている。きわめて激しく、終始目の離せない展開となった試合であり、この階級の代名詞にふさわしい戦いだった。
特別賞:マリオ・バティスタ vs. コーリー・サンドヘイゲン、トミー・マクミレン vs. アルベルト・モンテス