誇張表現が珍しくない業界とはいえ、6月はここ最近のオクタゴンで繰り広げられた戦いの中でも、屈指のエキサイティングな1カ月だったと言っても決して大げさではない。
44試合で30試合がフィニッシュ決着となり、年間アワードの候補に名を連ねることになりそうな激闘もいくつかあった。ホワイトハウスが会場となった歴史的なUFC Freedom 250が大きな盛り上がりを見せたのは言うまでもないが、その前後に開催された3つのファイトナイトも、いずれも期待に応える内容だった。
それでは、6月の各賞を発表していこう。
ブレイクアウト・パフォーマンス:ボー・ニッカル
UFC Freedom 250でのニッカルのパフォーマンスは、ミドル級期待の新鋭として本格的に名乗りを上げるために必要なものだった。
昨夏のオクタゴン復帰後に2試合連続でフィニッシュ勝利を収めていたカイル・ドーカスと対戦したニッカルは、試合開始早々、オクタゴン中央ですくい上げるような強烈なダブルレッグテイクダウンを決め、卓越したレスリング技術を見せつけた。ドーカスのガードからブレイクで立たされた後も、かつてレスラーとしてペンシルベニア州立大学で名をはせたニッカルは、ストライキングの成長ぶりを披露。正面から放ったフロントキックは惜しくもドーカスの顎を捉えなかったが、その直後の素早い左フックから右フックのコンビネーションが命中すると、フィラデルフィア出身のドーカスはカンバスへ崩れ落ちる。そこへニッカルが一気に襲い掛かり、パウンドで試合を決めた。
UFCで4年目を迎えたニッカルの今シーズン初戦では、全米王者に3度輝いたレスラーが2026年に大きな飛躍を遂げるかどうかが注目されていた。そして、その答えはこれ以上ない形で示された。ドーカス戦の勝利は、自身の実力を強く印象づける1戦となり、ニッカルはトップ15入りを果たす。そこでは、さらに手強い相手との対戦と、より大きなチャンスが待っている。
特別賞:ケトレン・ソウザ、チェルシー・チャンドラー、エドガル・チャイレス、アレサンドロ・コスタ、イヴォ・バラニェフスキ、シェーン・コリンズ、レヴァン・チョクヘリ、ミッチ・ラポーゾ、ケヴィン・ボルハス、ムルタザリ・マゴメドフ、クリスチャン・ロドリゲス、カーン・オフリ、ヌルスルトン・ルジボエフ、アブドゥルラフマン・ヤキヤエフ、マテウス・カミロ
サブミッション・オブ・ザ・マンス:ムルタザリ・マゴメドフ
ツイスター炸裂!
今年もすでに印象的なデビューや見事な1本勝ちは数多く生まれてきたが、その両方を兼ね備えたパフォーマンスとなると、これを上回るのは難しいだろう。デイナ・ホワイトのコンテンダーシリーズ・シーズン9で大きな注目を集めたムルタザリ・マゴメドフは、無敗、フィニッシュ率100パーセントという実績を引っさげて、メルシック・バグダサリアンとのUFCデビュー戦に臨んだ。そして試合後には、無敗とフィニッシュ率100パーセントを維持したまま、さらに評価を高め、今年最高ともなり得る1本勝ちまで手にしてラスベガスを後にした。
距離を詰めてバグダサリアンを捕らえたマゴメドフは、試合をグラウンドへ持ち込むと、素早くバックポジションを奪う。バグダサリアンは冷静に対処し、マゴメドフの両肩をカンバスにつけることには成功した。しかし、トップポジションを奪い返そうと、4の字ロックの内側に向き直ろうとした瞬間、新鋭のマゴメドフは相手の身動きを完全に封じ、すぐさま変則型ツイスターを仕掛ける。上半身と下半身を逆方向へ強烈にひねり上げられた“ザ・ガン”ことバグダサリアンは、たまらずタップした。
オクタゴンでツイスターが決まったのは、これが史上4度目だ。今月はバクーで開催されたイベントで決まったスロエフ・ストレッチをはじめ、見事な1本勝ちがいくつも見られた。それでも、この極め技を仕掛けてからフィニッシュに至るまでのスピードと正確さが、マゴメドフを一歩抜きん出た存在にした。今後もしばらく語り継がれ、年末のアワードでも再び話題になるに違いない、見事なフィニッシュだった。
特別賞:ジョアンダソン・ブリート vs. ジョーダン・レヴィット、チャンドラー vs. プリシラ・カショエイラ、チャイレス vs. ブルーノ・シウヴァ、ブライス・ミッチェル vs. サンティアゴ・ルナ、ビア・メスキータ vs. メリッサ・マリンズ、ロドリゲス vs. ハイダー・アミル、オフリ vs. ハヴィエル・レイエス、ルジボエフ vs. アンドレイ・プリャエフ、アブス・マゴメドフ vs. ミハル・オレクシェイチュク、アスー・アルマバエフ vs. チャールズ・ジョンソン
ノックアウト・オブ・ザ・マンス:アブドゥルラフマン・ヤキヤエフ
8秒。
MMAで相手が完全に意識を失った時点で試合を止めるルールだったなら、アブドゥルラフマン・ヤキヤエフはUFC史上最速ノックアウトの記録保持者になっていたかもしれない。実際にはそうではなかったものの、ヤキヤエフはアゼルバイジャンのイベントでジュリアス・ウォーカーをわずか8秒で沈め、ライトヘビー級屈指の危険な存在として、その評価をさらに高めた。
試合で起こったことは実にシンプルだ。両者がグローブを合わせ、ウォーカーが単発の緩いローキックを放つ。そこへヤキヤエフが右オーバーハンドを合わせ、その強烈な一撃がウォーカーの顎をねじ曲げた。カンバスに倒れ込んだ衝撃で意識を取り戻したウォーカーの目に飛び込んできたのは、容赦なくパウンドを振り下ろすヤキヤエフの姿。そしてレフェリーがすぐさま試合を止めに入った。
以前、デイナ・ホワイトのコンテンダーシリーズ・シーズン8出身者が、番組史上最高のタレント集団になる可能性があると書いたことがある。どうやらシーズン9出身者はそれを聞いて黙ってはいられなかったようだ。彼らは開幕から快進撃を続けており、ヤキヤエフもジョシュ・ホキット、バイサングル・ススルカエフ、キャム・ラウストン、イヴォ・バラニェフスキと並び、デビューイヤーから大きなインパクトを残している。
ヤキヤエフの勝利、そしてUFCキャリアを「合計3分33秒で3勝」という形でスタートさせたこと以上に恐ろしいのは、まだ25歳であり、ウォーカー戦がプロ10戦目に過ぎなかったという事実だ。まだ階級トップクラスの相手とは対戦していないものの、これまで立ちはだかった相手をことごとく圧倒してきた。その実績を考えれば、さらに格上との対戦機会を得るに十分値する。今の勢いを見れば、年末までにトップ10入りを果たしていても何ら不思議ではない。
勝つとは思っていた。今回も見事なフィニッシュを見せるとも思っていた。だが、これほどとは予想していなかった。この若者は本物だ。
特別賞:ソウザ vs. アリアネ・カルネロッシ、コスタ vs. マット・シュネル、バラニェフスキ vs. ジュニア・タファ、ディエゴ・ロペス vs. スティーブ・ガルシア、ニッカル vs. カイル・ドーカス、マウリシオ・ルフィ vs. マイケル・チャンドラー、ショーン・オマリー vs. エイマン・ザハビ、チョクヘリ vs. リオン・シャバージアン、ナヴァホ・スターリング vs. イオン・クテラバ、マネル・ケイプ vs. 堀口恭司、ダニール・ドンチェンコ vs. ティオドル・ベリグレン、カミーロ vs. ナジム・サディコフ、ラファエル・フィジエフ vs. マヌエル・トーレス
ファイト・オブ・ザ・マンス:ジャスティン・ゲイジー vs. イリア・トプリア
この試合がファイト・オブ・ザ・イヤーに選ばれなかったのだとしたら、2026年下半期に少なくとも1試合、歴史に残る名勝負があったということになる。
戦いそのもの以外の要素をすべて取り除いたとしても、語り継がれるべき名試合だった。チャンピオンは試合開始直後から積極的に攻め込み、ゲイジーには第2ラウンドで明らかにダメージが入りはじめる。ボディに激しい打撃を浴びせ、フィニッシュは目前かと思われた。しかし、そこから反撃に転じたゲイジーは、スローダウンしたトプリアをつかまえ、時間の経過とともに打撃の勢いを強めていく。ついには第4ラウンドが終わったところで、トプリアのコーナーが試合続行を断念するに至った。
それを把握した上で、この試合の背景に目を転じてみよう。ホワイトハウスを舞台とするUFC Freedom 250に組まれたこの一戦は、ゲイジーがキャリアをかけて追い求めてきたタイトルを手にするための、最後のチャンスだった。さらに、この過程においてゲイジーはトプリアに黒星をつけた唯一のファイターとなったばかりか、誰もが認める勝利を収めている。これがファイト・オブ・ザ・イヤーの最有力候補ではないのなら、何をそう呼ぶのだろう。
ただ、それも驚くべき話ではない。ゲイジーはデイナ・ホワイトUFC会長が選ぶファイト・オブ・ザ・イヤーの受賞者に2度なった経験があり、キャリアを通じて、2022年以外のすべての年でゲイジーの試合が年間スタッフアワードのトップ10に入っている。
特別賞:ブレンダン・アレン vs. エドメン・シャバージアン、ミッチ・ラボーゾ vs. アラン・ナシメント、ヴィニシウス・オリヴェイラ vs. アンドレ・フィリ
