11月はオクタゴンの中で大きな動きが続いた月だった。新たな王者が誕生し、別の王者は歴代最高クラスの存在であることを改めて証明した。さらに、2025年の終盤を飾る4つのイベントの中で、各階級における重要な勝利がいくつも生まれた。
クリスマスや年末年始が近づき、さまざまな分野で今年の総まとめとなる年間ベストをリストアップする時期になった。ここでは、今月の対戦で見られた際立つパフォーマンスの中から、その話題に加わり得るいくつかの活躍を振り返ってみよう。
ブレイクアウトパフォーマンス:ワルド・コルテス・アコスタ(UFCファイトナイト・ラスベガス110、UFCファイトナイト・カタール)
“サルサ・ボーイ”にとってはとてつもない1カ月だった。2025年で4度目と5度目のオクタゴン登場を、いずれも11月に果たしたのだ。2勝をマークして今季の戦績を4勝1敗としたワルド・コルテス・アコスタは、ヘビー級における出世株としての立場を確固たるものにしている。
デイナ・ホワイトのコンテンダーシリーズ出身であるファイターをここに選出するに至ったのは、そのいずれもが普通の試合ではなかったからだ。
最初のアンテ・デリア戦は第1ラウンドの途中で中断された。デリアを含む多くの人々が、レフェリーのマーク・スミスがこの試合を止めたのだと思った。しかし、実際にはクロアチア出身でUFC2年目のデリアが、コルテス・アコスタの目を突いたかの確認が行われていた。やがて試合が再開されると、ドメニカからやってきた巨体のワルド・アコスタが右手をデリアの顎に炸裂させる。そのまま相手をカンバスに崩したワルド・アコスタはパウンドを浴びせてフィニッシュへと持ち込んだ。
そこから数週間。そして、UFCがカタールはドーハでのデビューを数日後に控えていたタイミングで、コルテス・アコスタはセルゲイ・スピバックの代役としてシャミル・ガジエフとの試合に合意した。
上海でセルゲイ・パブロビッチに喫した敗北を2つの勝利ではさんだコルテス・アコスタは、今年もう1度出場するチャンスを得るべく働きかけてきた。デリアにアイポークされたことを逆手にとってアイパッチを装着したコルテス・アコスタが、強烈なノックアウトパワーの持ち主であることは明らかであり、UFCで9勝2敗、全体で16勝2敗という戦績を残している。
階級のトップクラスの選手たちと戦えることを示す必要はまだあるものの、11月に上げた2つの勝利によって、すでに新たなチャンスを得るだけのことは成し遂げている。待つことにはなるかもしれないが、正直な話、それもそれほど悪いことではない。急上昇中の34歳のヘビー級ファイターがランク内の相手ともう2戦ほどして経験を積めば、さらなる成長が見られるかもしれない。
特別賞:スティーブ・ガルシア、クリスチャン・リロイ・ダンカン、クリス・パディーヤ、ウロシュ・メディチ、ジョセフ・モラレス、ファティマ・クライン、カイル・ドーカス, イーサン・ユーイング、マイケル・モラレス、アブドゥルラフマン・ヤキヤエフ、ルーク・ライリー、ムフトベク・オロルバイ
サブミッション・オブ・ザ・マンス:トレイシー・コルテスからタップを引き出したエリン・ブランチフィールド(UFC 322)
ニュージャージー出身のブランチフィールドが初めてマディソン・スクエア・ガーデンで戦った際、公開計量ではブーイングを浴び、人気者である“ミートボール”ことモリー・マッキャンを圧倒して1本勝ちを収めた瞬間も、会場はざわつくだけだった。それから数年、地域イベントで判定負けを喫した因縁の相手、トレイシー・コルテスとの再戦のため、“ビッグアップル”に戻ってきたブランチフィールドは、今回もまた強烈なインパクトを残した。
第1ラウンドは両者が距離を取りながら互いに手数を出し、拮抗した展開になった。だが2ラウンド目に入ると、ブランチフィールドが持ち味である攻めの姿勢と粘り強さを一段と強め、前に出てコルテスに圧力をかけ始めた。少しずつ鋭い打撃が当たり始め、相手は徐々に失速し、ブランチフィールドは止まることなく前進を続ける。
ラウンドの終盤、ブランチフィールドはついにグラップリングを仕掛け、ボディロックからコルテスをカンバスに押し倒した。右側からアームトライアングルを狙うそぶりを見せたものの、本格的に絞りにはいかなかった。コルテスはスペースを作って立ち上がることに成功したが、ブランチフィールドは密着したまま離れず、今度はダブルレッグを狙ってケージを横切るように追いかけ、再びコルテスをカンバスに倒した。
コルテスが立ち上がった瞬間、ブランチフィールドはそのままリアネイキッドチョークをがっちりと食い込ませた。フックを入れることもなく、体の位置もコルテスの背中の中央に合っていない状態だったため、やや不自然な角度になった。それでも十分に絞りは深く、フィニッシュに持ち込んだ。
26歳の新星が圧倒的なフィニッシュを決めてみせるには絶好のタイミングだった。その夜の後半には、“ブレット”ことヴァレンティナ・シェフチェンコが再び女子フライ級王座の防衛に成功し、将来的な対戦相手として挙げた2人のトップコンテンダーのうちの1人がブランチフィールドだったからだ。次戦で実現するか、もう少し先のことになるかは分からないが、今回のパフォーマンスにより、ブランチフィールドがこの階級の序列にしっかりと食い込み、女子フライ級のエリート層に確実に到達していることが明らかになった。
特別賞:ドンテ・ジョンソン vs. セドリクエス・ドゥマス、アラン・ナシメントvs. コーディ・ダーデン、ザカリー・リース vs. ジャクソン・マクヴェイ、ダニエル・マルコスvs. マイルズ・ジョーンズ、モラレス vs. マット・シュネル、ドーカスvs. ジェラルド・マーシャート、ヤキヤエフ vs. ハファエル・セフケイラ、アスー・アルマバエフ vs. アレックス・ペレス、堀口恭司 vs. タギル・ウランベコフ、アルマン・ツァルキャン vs. ダン・フッカー
ノックアウト・オブ・ザ・マンス:ホドルフォ・ヴィエイラを仕留めたボー・ニッカル(UFC 322)
多くの人には馬鹿げて聞こえるかもしれないが、そんなことは構わない。あのフィニッシュを見た瞬間、頭の中に浮かんだのは本当にこうした考えで、ここではその妙な思考を好きなように共有させてもらうとしよう。
映画『Happy Gilmore(ハッピー・ギルモア)』で、ハッピーがロングパットを沈めてシューター・マクギャビンを見やり、「ハッピーはパットを覚えた・・・やばいだろ」と言い残して歩き去るシーンを覚えているだろうか。今回のニッカルのフィニッシュを見た時、頭に浮かんだのはまさにそれだった。オクタゴンに上がったレスラーの中でも屈指の実績を誇るニッカルが、完ぺきなタイミングと見事な精度で放った左ハイキックで、ヴィエイラを一瞬、別次元に吹き飛ばしたのだ。
ニッカルはUFCデビューから3年間、伸びしろを示しつつも、さらなる成長や磨くべき点が残る発展途上のファイターだった。持ち前の圧倒的なグラップリング能力を最大限に生かすためにも、乗り越えるべく課題がいくつもあった。今回のパフォーマンスは、その努力が初めて実を結んだと言える1戦だった。しかもそれが、本来なら余裕を持って勝ち進んでいた試合でキャリア初黒星を喫した直後だったという事実は、彼がどんなコンペティターであり、どれほどの将来性を備えたペンシルベニア州立大学出身の逸材なのかを雄弁に物語っている。今後の期待値も一段と高まるばかりだ。
今回のパフォーマンスに文句を言いたくなる人もいるだろう。対戦相手やスタイルの相性を理由にそういう声は必ずあるものだ。しかし、そこがむしろ評価を高めるポイントになっている。というのも、グラップラー同士の組み合わせが、しばしば見どころの少ない不格好なキックボクシング戦になることを何度も見てきたからだ。その中で、ニッカルは最初から最後まで動きが冴えていた。序盤でリズムをつかみ、2ラウンド目にはヴィエイラにしっかりダメージを与え、最終ラウンドの中盤には脛を首元に打ち込んでフィニッシュへ持ち込んだ。これ以上望むものはないと言える完成度の高い内容だった。
デビュー直後に、トップ10と対戦させるべきだと主張する人がいたかと思えば、経験値で大きく上回る相手に一度敗れただけで、今度は一斉に評価を下げて29歳のニッカルの見立てを変えてしまう。そんな流れが起こったこと自体が驚きだった。そもそも、あの敗戦を基準にニッカルの実力を再評価するべきではなかった。注目すべきは復帰後のパフォーマンスであり、ニューヨークでのニッカルは、これまで多くの人が超優良株として描いてきた姿をそのまま、いやそれ以上に示してみせた。
特別賞:ガルシア vs. デビッド・オナマ、ダンカン vs. マルコ・トゥリオ、メディチ vs. ムスリム・サリホフ、ガブリエル・ボンフィム vs. ランディ・ブラウン、バイサングル・ススルカエフ vs. エリック・マコーニコ、ブノワ・サン・ドニ vs. ベニール・ダリウシュ、カルロス・プラテス vs. レオン・エドワーズ、イスマイル・ナウルディエフ vs. ライアン・ローダー、ライリー vs. ボグダン・グラッド、ワルド・コルテス・アコスタ vs. ガジエフ、オロルバイ vs. ジャック・ハーマンソン、ヴォルカン・ウーズデミア vs. アロンゾ・メニフィールド
ファイト・オブ・ザ・マンス:会場を沸かせたイーサン・ユーイングとマルコム・ウェルメーカーによる1戦(UFC 322)
この1戦に向けた前評判では、ウェルメーカーがまたしてもテクニカルノックアウト勝ちを挙げるか、少なくとも勝利を収めるだろうと見る声が大勢を占めていた。理由は明確だった。
(1)直近2試合でいずれも第1ラウンドでノックアウト勝利を飾っていたこと
(2)11月15日の試合に向けて十分なトレーニングを積んでいたこと
(3)対するユーイングは、イベント直前に足の骨折で欠場したコーディ・ハドンの代役として、試合の数日前にオファーを受けて出場を決めたこと
こうした状況を踏まえれば、ウェルメーカーが有利という見解は当然だった。
試合が始まってすぐ、ユーイングがためらうことなく前に出て、しかも有効打を当て始めた時点では、嬉しい誤算にすぎなかった。多くが予想していたワンサイドの展開が、多少は競り合う形になるかもしれない、その程度の印象だった。ところが、カリフォルニア出身のユーイングは前進を止めず、相手よりも優れた打撃を次々と当て、返ってくる攻撃にも難なく対応し続け、試合は一気に面白さを増していった。
もし今月、ワルド・コルテス・アコスタがとんでもない活躍を見せていなかったら、ユーイングは間違いなくブレイクアウト・パフォーマンス・オブ・ザ・マンスの筆頭候補だったはずだ。なにしろ48時間前のオファーで急遽参戦し、ウェルメーカーのプロキャリアで初めて黒星をつけたのだから。それでもユーイングは、今月最も記憶に残るパフォーマンスの一つを作り上げ、11月の中でも群を抜いてエンターテインメント性の高い1戦を制したファイターであったことに変わりはない。
誰もが“ザ・プロフェッサー・フィネッサー”ことユーイングが、次にどんな試合を見せるのか待ちきれないだろう。
特別賞:ティミー・クアンバ vs. イ・チャンホ

