UFCは激しくヘビーなアクションが次々とやってくるノンストップの秋を迎えている。結果として、10月は飛ぶような勢いで去っている。
ペイ・パー・ビュー・イベントで始まり、国際的なイベントをはさんで、ペイ・パー・ビュー・イベントで閉幕した10月。今月、ここに取り上げるべき試合は山ほどあるが、その中でも明らかに傑出したものがあった。指導している選手が出場しないときには、カットマンを務めている。
それぞれの部門の勝者に目を向ける前に、カナダ・オンタリオ州ストーニークリークにある“House of Champions(ハウス・オブ・チャンピオンズ)”のクル・アリン・ハルマジアンに敬意を評したい。彼は10月に、バンクーバーでUFCでコーチとして7勝0敗を記録した。カイル・ネルソンとマイク・マロットの2人がそろって勝利したことによる。カナダMMA界における知る人ぞ知る傑物であるクル・アリンは、バンクーバーで実施したすべてのUFCイベントに携わってきた。
ブレイクアウトパフォーマンス:シャルル・ジョーデイン(UFCファイトナイト・バンクーバー)
ジョーデインがバンタム級に移行してエドモントンでヴィクター・ヘンリーとの試合に臨んだ際、多くの関心と期待が寄せられていた。それは、派手なアクションが魅力のフランス系カナダ人であるジョーデインが、いつもフェザー級ではややサイズが足りないように見えていたからだ。第2ラウンドでヘンリーに1本勝ちしたことで、ジョーデインが新しい階級にフィットしているのは明らかであり、次に目指すべくは階級のヒエラルキーの頂点へと上りつめることだった。
アトランタでのリッキー・シモンとの試合は流れてしまったが、実現していれば実力のほどを計る良い試金石になっただろう。とはいえ、バンクーバーでのデイビー・グラントとの試合がその役割を果たし、ケベックからやってきたジョーデインは何とも見事な勝利で、自分がバンタム級における真の脅威であることを高らかに宣言している。
第1ラウンド中盤、ジョーデインはそれまでに2度試み、惜しくも逃していたジャンピングニーをグラントにたたき込み、それによって屈強なイギリス人ファイターをカンバスにどさりと倒している。立て直そうとするグラントに素早くギロチンチョークを仕掛けたジョーデインは、アームインの形から得意技である高角度のパーム・トゥ・パームへもっていくと、そのまま相手のタップを引き出した。
2人のベテランに対し、2試合で2回の1本勝ち。さらに重要なことに、29歳のジョーデインはもはやここでは体格差で押されることがない。フェザー級ではサイズ上の制限があったジョーデインだが、バンタム級には完ぺきにフィットしており、危険な新参者となっている。次に登場するときの対戦がランク入りしたファイターであっても、何の驚きもないだろう。
特別賞:ビア・メスキータ、メリッサ・クローデン、ユースリ・ベルガウイ、クイラン・サルキルド
サブミッション・オブ・ザ・マンス:マテウス・ガムロットからタップを引き出したチャールズ・オリベイラ(UFC ファイトナイト・リオデジャネイロ)
チャールズ・オリベイラが連敗を喫したのは、すでに10年前のことだ。キャリアの中で数度あったものの、ライト級で連続して敗れたことは一度もない。
それでも、6月にイリア・トプリアに衝撃的なノックアウト負けを喫した“ドゥ・ブロンクス”ことオリベイラが、10月に復帰すると聞いたとき、落ち着かない気持ちは拭えなかった。さらに、負傷したラファエル・フィジエフの代役としてマテウス・ガムロットが登場すると知った時点で、いやな予感は強まった。しかし、UFCキャリアで初めて地元リオデジャネイロで戦ったオリベイラは、ポーランドの強豪を圧倒し、UFC史上最多を更新する通算21回目のフィニッシュ、そして17回目の1本勝ちを記録してみせた。
多くのファンは、総合力に優れたベテラン同士がグラップリングを中心に激しく競り合う展開を予想していた。だが、結果はまるで違った。オリベイラはガムロットを圧倒的な差で上回り、寝技で完全に主導権をにぎると、第2ラウンドで仕留めて復活を印象づけた。彼の闘志がまだ衰えていないことを見事に証明した1戦だった。
UFCではまだタイトル戦線の常連という立場ではないため、ガムロットの実力は忘れられがちだ。しかし、“ゲーマー”の異名を持つファイターはこの試合前まで25勝3敗1ノーコンテストという戦績を誇り、一度もフィニッシュされたことがなかった。3敗のうち2敗はスプリット判定によるもの。そんなガムロットを相手に、オリベイラはまるで手本を示すように完勝してみせた。
正直なところ、トプリア戦での壮絶なノックアウト負けを見て、オリベイラの今後に不安を感じた者もいただろう。だが、今はその心配は一切ない。
もし来年、オリベイラとマックス・ホロウェイによるBMFタイトルマッチが実現するなら、それについて語る言葉が見つからない。ただ、高々と興奮を叫ぶだけだ。
特別賞:ラミズ・ブラヒマイ vs. オースティン・ヴァンダーフォード、ユーセフ・ザラル vs. ジョシュ・エメット、ジャフェル・フィーリョ vs. クレイトン・カーペンター、カーン・オフリ vs. ヒカルド・ハモス、ヴァルテル・ウォルケル vs. ルイ・サザランド
ノックアウト・オブ・ザ・マンス:ナスラット・ハクパラストを沈めたクイラン・サルキルド(UFC 321)
ファイターが立ったままノックアウトされ、そのまま崩れ落ちる瞬間は、衝撃的でありながら目を離せない光景だ。その姿を見たくないと感じつつも、ノックアウトの一撃が決まる瞬間の迫力に体が固まり、目を離せずに見入ってしまう。
サルキルドはUFC 321で今年屈指のノックアウトを記録。アフガニスタン出身のライト級ファイター、ハクパラストの頭部に右ハイキックを完ぺきに命中させ、瞬時に意識を奪うと、ハクパラストは顔からカンバスに崩れ落ちた。
今年初めにマウリシオ・ルフィがキング・グリーンを沈めた一撃ほど速くも派手でもなく、またエドソン・バハボーザがテリー・エティムに決めた伝説のノックアウトほど劇的でもなかったが、それでもこの一撃は決定打であり、まるで現地24日(金)のワールドシリーズ第1戦でトロント・ブルージェイズのアディソン・バーガーが放った代打満塁ホームランのようだった。瞬間的に「もう試合は終わった」と誰もが悟り、同時に、硬直したまま倒れたハクパラストの無事を案じたほどの衝撃だった。
昨年のデイナ・ホワイトのコンテンダーシリーズでUFC契約を勝ち取ったパースのルイストロ・コンバット・アカデミー所属の2人のうちの1人である25歳のサルキルドは、ルーキーイヤーで見事な戦績を残している。3戦全勝、うち2試合で印象的かつスピーディなフィニッシュを決め、2度のパフォーマンスボーナスを獲得。その間に、粘り強く戦い抜いた判定勝利も挟んでいる。
ライト級は常に才能がひしめく層の厚い階級だが、サルキルドが今後注目すべき存在であることは間違いない。
特別賞:エドメン・シャバージアン vs. アンドレ・ムニス、アテバ・グーティエ vs. トレストン・ヴァインズ、イジー・プロハースカ vs. カリル・ラウントリーJr.、ヴィトー・ペトリーノ vs. トーマス・ピーターセン、アザマト・ムルザカノフ vs. アレクサンダル・ラキッチ
ファイト・オブ・ザ・マンス:ドリュー・ドーバーとカイル・プレポレクによる激闘(UFCバンクーバー)
ファイト・オブ・ザ・マンスには、タイトルマッチやメインイベントといったテクニカルな接戦が選ばれることが多い。賭けるものが大きく、試合そのものに重みがあるからだ。しかし今月は、バンクーバーで対戦したライト級のベテラン2人が壮絶な殴り合いを見せ、堂々とこの栄誉に輝いた。
この2人について少しでも知っていたなら、試合が発表された時点で激闘を予想していただろう。ドーバーは退屈な試合を嫌い、プレポレクは打ち合いを望んでやまないタイプ。両者がオクタゴンに足を踏み入れると、予想を上回る打撃戦を展開し、ファイト・オブ・ザ・ナイトの称号にふさわしい、激しくも見応えある試合を作り上げた。
最初の10分間で互いに一歩も譲らず、1ラウンドずつを取り合って迎えた第3ラウンド序盤、ドーバーのローブローが意図せぬ形でプレポレクに直撃。プレポレクは立っているのがやっとという状態になり、試合は一時中断された。観客はデンバー出身のドーバーにブーイングを浴びせ、レフェリーはドーバーから1ポイントを減点。これにより、もしフィニッシュできなければ引き分け止まりという状況に追い込まれたドーバーは、何としてでも判定に持ち込ませない覚悟を決めた。
再開の合図とともに、ドーバーは猛然と前に出た。プレポレクは懸命に応戦したが、ドーバーの圧力を受け止めきれず、試合は途中でストップされた。
この1戦は、2人のベテランがケージの中ですべてを出し切った壮絶な打撃戦だっただけでなく、ドーバーのフィニッシュへの執念が、こうした状況でファイターとしてどうあるべきかを示す手本となった。彼は自分の置かれた状況を正確に理解し、ギアを上げて緊迫感を高めた。アクセルを踏まずに結果を運に任せるのではなく、自ら確実に勝利をつかみ取ることを選んだのだ。
特別賞:メラブ・ドバリシビリ vs. コーリー・サンドヘイゲン、エイマン・ザハビ vs. マルロン・ヴェラ、ナサニエル・ウッド vs. ホセ・ミゲル・デルガド、ルドヴィト・クライン vs. マテウシュ・レベツキ、ウマル・ヌルマゴメドフ vs. マリオ・バティスタ