日本時間2017年4月9日(日)に米国ニューヨーク州バッファローのキーバンク・センターで開催されたUFC 210メインカードの試合レポート
ミドル級 5分3ラウンド
クリス・ワイドマン vs. ゲガール・ムサシ
日本時間2017年4月9日(日)に米国ニューヨーク州バッファローのキーバンク・センターで開催されたUFC 210のセミ・メインイベントで実現した元UFCミドル級王者、現ミドル級4位のクリス・ワイドマンと同級5位のゲガール・ムサシの一戦はタイトルコンテンションの浮上を狙う両者にとって、“決定的”な勝利が必要とされる一戦だった。しかし、両者の思いとは裏腹にトップコンテンダー同士の好勝負は、誰も予想しなかった混沌とした、そして消化不良な結末を迎えることになってしまった。
一進一退の第1ラウンドを終え、迎えた第2ラウンドに、ワイドマンをがぶった状態のムサシのヒザ蹴りが反則と見做され、試合は一時中断された。ドクターの診断を待つ間に、放送席でのリプレイではムサシはワイドマンの片手がマットから離れるように、相手の上体を引き上げながらヒザ蹴りを繰り出しており、ムサシのヒザ蹴りは反則ではないことが確認されていた。その為、本来であれば試合は即座に同じポジションから再開されるべきであったものの、マグリオータはワイドマンに5分間の回復時間を与え、そしてドクターはその間にワイドマンを試合続行不可能と診断してしまった。
その後にブルース・バッファーによってコールされた試合結果は2ラウンド3分13秒でのゲガール・ムサシのTKO勝利。ワイドマンが試合続行不能であり、先ほどのヒザが反則でないならば、ワイドマンに5分間の回復時間は与えられるべきではないし、反則であるならムサシが失格となるのがルールに則った裁定であり、このムサシのTKO勝利と言う裁定は勝利したムサシ自身すら全く納得のいかないものだった。
騒然としたオクタゴンの中で、勝利を喜ぼうとするチームを諌めて国旗を降ろすように促したゲガール・ムサシは「俺のミスじゃない、俺は続けたかった。リマッチをするよ、何の問題もない。俺も試合を続けるつもりだったし、彼も続けることが出来たと思っている」と憮然とした表情でワイドマンとの再戦の意向を明確にした。
一方、「みんな、すまない。あのヒザは反則だと思っていた。あのヒザが反則でないなら、なぜ試合を止めたんだ?俺は間違いなく両手をついていたいたんだ」と語ったワイドマンだが、インタビュアーのジョー・ローガンに促され会場のビッグスクリーンでリプレイを確認すると「たしかにそう(反則ではない)みたいだな・・・。タフな時間と向き合っている皆、愛してるぜ。俺も強くなって復活して見せる」とぼうぜんとした表情で言葉を繋いだ。
短期決着狙いか、ムサシが珍しく力んだワンツーを見せる。開始後1分、ワイドマンが片足タックルを成功させると、これをタックルで切り返そうとしたムサシを潰してギロチンを狙う。ムサシはこのギロチンをしっかりと防御し、攻防をスタンドに戻すことに成功。その後の片足タックルで再びテイクダウンを奪われたムサシだが、ここもすぐに立ち上がり、ラウンド終盤に入るとワイドマンのテイクダウンを潰し始める。タックルを潰され始めたワイドマンはパンチのコンビネーションを増やし、これがムサシの顔面を捉えるとムサシがおもわずあとじさる。
第2ラウンド開始直後のムサシのジャブがワイドマンのガードをかいくぐり、その顔面を跳ね上げるとムサシが一気に前に出る。強引に左右のパンチを振るってワイドマンを防戦一方に追い込むが、ムサシはそこからテイクダウンに繋げようと両足タックルに飛び込んだところで攻防が膠着。レフリーのダン・マグリオータが両者にブレイクを命じた。再開後にムサシの飛び込みに両足タックルを合わせたワイドマンはこれを成功させる。ムサシのバタフライフックを潰したワイドマンはポジションをバックマウントまで進めるとチョークを狙うがムサシはワイドマンの右足を手繰ってスクランブルに持ち込むと、この絶体絶命のピンチを脱出して見せる。攻防がスタンドに戻るとムサシの鋭いジャブを嫌ったワイドマンが、再び片足タックルに飛び込むが、これをムサシはしっかりとガブり、鋭い右ヒザを相手の側頭部に突き上げる!この二発目をグラウンド状態でのヒザと判断したマグリオータは両者に攻防の中断を命じ、ドクターをオクタゴンの中に招き入れるとドクターはしばらくの診断の後にワイドマンを試合続行不可能と診断した。
なお、この結果ゲガール・ムサシは42勝6敗2分け、クリス・ワイドマンは13勝3敗となっている。
女子ストロー級 5分3ラウンド
シンシア・カルビーヨ vs. パール・ゴンザレス
ゴンザレスはしっかりとガードを上げじりじりと前にでながらカルビーヨのパンチをブロックし、相手の打撃のタイミングを計っている。90秒が過ぎるとカルビーヨはパンチの角度を変え、その右アッパーが時折ゴンザレスのガードをかいくぐるが、ゴンザレスも相手のコンビネーションの打ち終わりに的確にワンツーを返し始める。残り時間1分20秒、意外にもゴンザレスが片足タックルでカルビーヨを金網際まで押し込むが、カルビーヨはしっかりとこれを差し上げる。ゴンザレスはしつこく食い下がり、残り時間30秒でカルビーヨに尻餅をつかせたが、カルビーヨはすかさず足を効かせてゴンザレスをトライアングルに捉えてみせる。このトライアングル・チョークの極まりは深く見えたものの、ラウンド終了のブザーがゴンザレスを救い出す。
手数を増やすためか、ゴンザレスは1ラウンドよりはガードを下げローを織り交ぜながら前に出る。残り時間4分、ゴンザレスが両足タックルでテイクダウンを成功させるがカルビーヨは相手のアームバーに合わせて巧みにポジションを入れ替えると残り時間2分20秒でバックを奪取。しっかりと足を効かせながらチョークで相手を脅かし始める。ゴンザレスも丁寧にチョークをディフェンスしながら何度もエスケープを試みるが、カルビーヨはそのつど素晴らしい反応を見せ、バックマウントをキープし続けた。
最終ラウンドに入ってもスタンドではゴンザレスが攻防を支配しているように見えるが、ここでもゴンザレスがテイクダウンの素振りを見せる。残り時間3分25秒、ゴンザレスの前蹴りを拾ったカルビーヨがテイクダウンを成功させるとハーフガードから肩固めを狙う。この肩固めを嫌ったゴンザレスのブリッジに合わせてカルビーヨは相手のガードをパスすると、そのままするすると相手の背後に回り込む。冷静に相手の隙を伺うカルビーヨはついにゴンザレスの喉にがっちりとチョークを組み込ませると、3ラウンド3分45秒、しぶといゴンザレスからタップを引き出した。
この勝利でUFC2連勝を記録したシンシア・カルビーヨは5勝0敗。なお、ほろにがUFCデビューとなったパール・ゴンザレスはこの一戦で6勝2敗となっている。
ウェルター級 5分3ラウンド
チアゴ・アウベス vs. パトリック・コーテ
アウベスの前足へのローキックを警戒してか、コーテは自身の前足から小刻みに体重を抜きつつ、軽やかなインローとワンツーを主軸にテイクダウンの機会を伺っている。アウベスも機敏なフットワークで上体を振り、相手をよく見ながら強烈なローキック、そしてワンツーを繰り出すが、コーテの頭を下げながらの右を時折被弾する。しかしコーテのテイクダウンには手堅い反応を見せるアウベスが至近距離になるとパンチの回転の速さと打点の高いヒザで攻防を支配する。残り時間50秒、コーテのミドルに左フックを合わせたアウベスがダウンを奪いそのままトップをキープ。アウベスが左右のパウンドを落とす中、第1ラウンドが終了した。
第2ラウンドが開始されるとコーテが猛然と前に出る。左右のパンチを突き出しながらアウベスを金網際まで追い込むことに成功するが、アウベスも猛然と左右のパンチを連打し体を入れ替える。強引に距離を詰めるコーテの右オーバーハンドがこのラウンドでもたびたびアウベスを捉えるシーンが見られるが、残り時間90秒、金網際で胴タックルを仕掛けたコーテの顔面をアウベスの右ストレートが捉え、コーテはマットにヒザを着くがすぐに持ち直す。互いに距離を取り、鋭いローキックを交換しつつ第2ラウンドを終える。
ガードを下げて歩くように前に出るコーテが両足タックルに飛び込むが、アウベスは金網を背にしてこれを受け止めるとしっかりとコーテを差し上げる。さらにもろ差しを奪ったアウベスは残り時間3分15秒で小外掛けで相手を金網から剥がすようにテイクダウンを成功させがコーテの下からのサブミッションの仕掛けを警戒し、深追いはせずに攻防をスタンドに戻す。残り時間1分10秒、コーテの一発の右ストレートを皮切りに、突如コーテの右が当たり始める。右手を大きく振り回し、観客を煽りながら繰り出されるコーテの右アッパーが2発、立て続けにアウベスを捉えるが、気を良くしたコーテがさらに踏み込むと、アウベスが猛烈な飛びヒザ蹴りを突き上げる!これをすんでのところでかわしたコーテが苦笑いしながら後じさりしたところで、ウェルター級の一戦が幕を閉じた。
判定は30-27のユナニマスでチアゴ・アウベス。2年ぶりの勝利でその戦績を27勝11敗と伸ばすと 「最後に勝者の名乗りを上げてからずいぶん長い時間が経ってしまった。復活で来てエキサイトしているよ。ウェルター級への減量はずいぶん容易だったよ」と語り、勝利街道への復帰への喜びをにじませた。
一方、試合後にグローブをマットに置いたカナダのパトリック・コーテはジョー・ローガンに促されると「マットにグローブを置く意味は分かっている。勝っても負けてもこれが最後だって決めていた。驚くような15年間だった。みんな、ありがとう!」と語り引退を表明。なお、コーテのプロ通算戦績は24勝11敗となった。
ライト級 5分3ラウンド
ウィル・ブルックス vs. チャールズ・オリベイラ
オーソドックスに構え、細かくローを散らすオリベイラに対し、ブルックスは時折スタンスをスイッチしながら重たいキックを繰り出すが、開始後1分でオリベイラは胴タックルからの大内刈りでテイクダウンを成功させる。ブルックスは金網を背にしてウォール・ウォークで立ち上がったかに見えたが、これはオリベイラの巧みなセットアップ。すかさずブルックスを釣り上げてマットに引き戻し、サイドポジション、そしてバックマウントと立て続けにポジションを奪う。ブルックスは立ち上がってオリベイラを振り落とそうと試みるが、その喉元にオリベイラのリアネイキッド・チョークががっちりと食い込み締め上げる!しばらくこれをこらえていたブルックスも緩まぬ圧力に屈してついに無念のタップ。時間は1ラウンド2分30秒だった。
既に9つのボーナスを獲得済みのボーナスハンター、オリベイラはまたもや圧倒的なサブミッションスキルを披露し、その戦績は22勝7敗1ノーコンテスト。一方イリノイのウィル・ブルックスは18勝3敗となった。