今からちょうど3カ月前、鶴屋怜は再びオクタゴンに立てる瞬間を今か今かと待ちわびていた。キャリア初黒星の苦い記憶を抱えたまま、14カ月もの間、戦列を離れていたのだ。
しかし、鶴屋がオクタゴンを離れている間に、その敗戦の意味合いは大きく変わった。UFC 313で鶴屋がショートノーティスの1戦に臨み、敗れた相手のジョシュア・ヴァンが今や王者となったからだ。それでも、日本のフライ級の有望株である鶴屋は前へ進むことを切望していた。再びオクタゴンのキャンバスに立ち、実力者がひしめくフライ級で台頭するトップクラスの有望株たちに肩を並べたいと考えていた。
鶴屋は5月、ルイス・グルレー戦を前に次のように語っている。この試合の第1ラウンドで1本勝ちを収めた鶴屋は、再び軌道に乗り、今週末に上海で行われるケヴィン・ボルハス戦へとつなげた。
「ショートノーティスだったので、やはり当時はジョシュア・ヴァンについてあまり知りませんでした」
「取り残されたくないんです。トップクラスのコンテンダーたち全員に追いつきたい」
「新しい選手がたくさん入ってきています。だから、俺もその波に乗りたい。フライ級には新顔が多く、ランキングも毎週のように変わっています。俺もそういうコンテンダーの1人になりたいんです」
5月の鶴屋は、ブランクをまったく感じさせなかった。オクタゴンに戻るやいなや、グルレーを圧倒。右のパンチで、急きょ代役として出場したグルレーを数歩後退させると、Road to UFCシーズン2のフライ級トーナメント覇者は“グリム”ことグルレーに組みつき、そこから攻撃を仕掛けていった。
その数分後、鶴屋は勝者としてケージ中央に立っていた。再び白星を挙げ、フライ級で台頭するトップクラスの有望株たちの中に返り咲いた鶴屋だが、本人はまだその域には達していないと考えている。
火曜日の夜、上海で取材に応じた鶴屋は次のように語った。
「前回は久しぶりにオクタゴンで戦ったので、勝てて本当にうれしかったです。今回もいい試合ができると思うので、しっかりフィニッシュしたいです」
1ラウンドで勝利した後、台頭する有望株たちの中で自分がどの位置にいると考えているのかを問われた鶴屋は、こう続けた。
「正直に言うと、俺はまだそこまで到達していないと感じています。今回のイベントではフライ級の試合がたくさん組まれているので、UFCは俺にインパクトを残してほしいと思っているんじゃないかと感じます。それができれば、俺もその1人になれると思っています」
土曜日に行われる全13試合のうち、常に見応えある戦いが繰り広げられるフライ級の試合は4試合。オリエンタル・スポーツ・アリーナで最初にオクタゴンへ向かうのが鶴屋とボルハスで、フライ級4試合の最後には、UFCで豊富な経験を積んできたス・ムダルジとアレックス・ペレスによる再戦が組まれている。
興味深いことに、前回ボルハスを倒したファイターであるアンドレ・リマは、以前にRTUフライ級トーナメントを制したナムスライ・バトバヤルとプレリムのラスト1戦で拳を合わせる。一方、ニューカマーのビラル・ハサンがメインカードの初戦でニルソン・ロハスと対戦。ハサンは数週間前、デイナ・ホワイトのコンテンダーシリーズ(DWCS)シーズン10の初週に45秒で勝利を決めて契約を勝ち取っていた。
鶴屋が頭角を現す上で、この試合順が逆風になると見る向きもある。しかし、24歳の鶴屋にはこの週末に階級の流れを決定づけるチャンスがあり、それを成し遂げるにふさわしい対戦相手も得ている。
UFCでは2勝4敗にとどまっているものの、ボルハスは戦績以上の実力を持っていると広く認識されており、6月にリマを倒して無敗記録を終わらせたのがその好例だ。
そして、鶴屋の唯一の敗戦が18カ月の間で評価を高めたのと同様に、ペルー出身のボルハスも対戦相手という部分から評価を受けるようになっている。ボルハスが4敗を喫した相手はヴァン、アレサンドロ・コスタ、ス・ムダルジ、そしてメキシコの有望株であるイマノル・ロドリゲスだった。
ボルハスは今年に入ってリマを倒したことで勝利街道に戻ったのみならず、Metaランキング入りも果たした。現在は11位につけている。今週にすべてが思い通り進めば、来週には自分の名前の横に数字がつくことを鶴屋は期待する。
前戦から比較的短い期間で次の試合に臨む鶴屋は「数カ月でまた試合をするのはすごくいいことです。身体がオクタゴンでの試合に向けて整っているので」と話し、こう続けている。
「それに、今回の対戦相手はMetaのランキングに入っているから、勝てば自分がランキングに入れます。自分にとってはいいことです。今回の試合が決まってうれしいです」
「俺の印象としては、ケビンはストライカーで、左のボディショットと右ストレートのカウンターに注意する必要があります。こういうのを回避することで、サブミッションで彼を仕留めることができるはずです」
それが実現すれば、おそらく鶴屋は自分もフライ級の新進気鋭の選手たちの仲間入りをしたと実感し始めるだろう。実際のところ、すでに彼はそのリストの上位に名を連ねるにふさわしいファイターなのだから。
