ライト級ファイターのエディ・アルバレスが温暖なフロリダから地元フィラデルフィアに転居したのはボカラトンの洗練されすぎた状況から抜け出し、シティーオブブラザリーラブ(兄弟愛の街/フィラデルフィアの愛称)で根性をたたき直す必要があったから、など、さまざまな憶測がささやかれていた。
とはいえ、これは真実ではない。日本時間18日(月)に行われるUFCファイトナイト・ボストンのアンソニー・ペティス戦に向けて、現在31歳のアルバレスが地元に戻り、リカルド・アルメイダ・ファイトチームと共にトレーニングするのを決断したのは試合のためだけでなく、それ以上に重要な理由があったのだ。
UFCファイトナイト・ボストン:アンソニー・ペティス vs. エディ・アルバレス
「いろんな人が、俺が引っ越したのはフロリダにいるときにブラックジリアンズ(ジム)で何かがうまくいかなかったとか、トレーニングがうまくできなかったからだとか思っているみたいだけど、その予想は間違っている。これは家族を優先に考えての決断なんだ。子供たちもフロリダが好きじゃなかったし、妻も満足していなかった。フィラデルフィアからフロリダに引っ越すときに、妻と約束していたことがある。もし家族全員がフロリダで納得のいく生活ができなかったらフィラデルフィアに皆で帰るってね。何をするにも家族が一緒にいる事が一番大事なんだ。トレーニングも家で家族と一緒にやっていたぐらいだからね。でも家族にはフロリダが合わなかった。だからフィラデルフィアに帰ることにしたんだ。フィラデルフィアではずっと最高のチームに恵まれてきたし、フロリダにも素晴らしいチームがある。コーチやトレーニングパートナー、兄弟のこともたくさん考えた」
長年、アルバレスを見てきた人なら驚く行動ではないだろう。アルバレスは自分の信念を曲げない保守的なファイターなのだ。今回も自分より家族を優先した決断を下している。戦いのスタイルも決して華やかなではなく、淡々とした戦いを見せることから多くのファン、そしてファイターたちからも称賛を受けている。フロリダでもフィラデルフィアでもアルバレスの良い意味で古臭いスタイルは変わっていないようだ。
自らのキャリアや成長についてアルバレスは「自分はスーパーチーム出身じゃない」と語り始めた。
「少人数が一緒にトレーニングしていた地下室の出身なんだ。もともとのチームはファイト・ファクトリー。ただのグループってだけで、どう見てもエリート集団じゃなかった。レスラーが1人、ボクサーが1人、柔術をやっているやつもいた。でも大事なのは設備じゃないってことを全員がしっかり理解していた。大事なのは周りの人間であったり、全力でトレーニングする心構えだったり、チャンピオンになりたい気持ちなんだ。その部屋にはそういう同じような気持ちを持ったやつだけが集まっていた。キャリアをスタートさせた頃から、自分にはチャンピオンになるために世界で最高の40人なんかは必要ないって分かっていたからね。チームメイトももちろん重要な要素だけど、最終的には自分のメンタルが一番大事だと思う。フロリダだろうとフィラデルフィアだろうと、日本でもメキシコでも、どこでトレーニングしようと、あの金網の中に入るべきは自分なんだから」
給料が上がり、試合も多くのファンに観てもらえるようになったとはいえ、アルバレスは今までのハングリー精神を決して忘れてはいない。それでも、現在は異なる欲求があると言う。
「始めた頃とか、前まではもっとたくさんの金が欲しいと思って戦っていた部分が大きかったけど、今はもっと良い選手と良い試合をするために戦っている。今は両者互角で、何が起こるか分からないような試合が好き。それ以外の試合は出たくない。ランク外の選手はもちろん、15位とか20位、25位の人と戦う気なんてないし、今は業界のトップとしか戦いたくないと思っている。幸い、今はそれができるようになったからね」
今回のアンソニー・ペティス戦はアルバレスの希望に沿う試合と言えるだろう。見ごたえのある試合になるのは間違いない。ペティスにとっては昨年3月にライト級王座をハファエル・ドス・アンジョスに奪われて以来、初めての試合となる。昨年6月のギルバート・メレンデス戦でUFC初勝利を収めているアルバレスは今回の試合に勝てばタイトル争いに名乗りを上げられるかもしれない。しかしながら、多くのファンはチャンピオンシップに敗れながらもエリートファイターであるペティスが勝利するだろうと予想している。
これにはアルバレス本人も「100%ね」と同意。「だけど、もっと大事なのは自分が何を得られるか。いつも試合で対戦相手のことを探っているわけじゃない。相手のことなんて興味ないし、どんな試合をしようと関係ない。相手がどうなりたいとか、もっとこうしたいとか、そういうのは相手の問題。自分に何ができるかを見たいんだ。たとえ鼻の骨が折れても、片目が見えなくても、右足が折れても、自分が戦えるのかどうかを知りたいんだ。どれだけの逆境に置かれても戦い続けられるか? 自分のための試合だ。誰のためでもない。だからケージに一歩足を踏み入れれば、自分がどういうやつか、もう少し分かるだろう」
最悪のシナリオに直面すればどうなるかは歴史がすでに証明している。アルバレスは逆境に直面しても常にやり遂げてきた。その事実を伝えると、アルバレスは笑ってこう答えている。
「いつだってもっとうまくやれると思うものさ。キャリアのこの段階になると、どんなに最悪な状況に直面してもそれを跳ね返すだけの力は持っている」
今後の目標について聞いてみた。
「無駄なことに時間を費やしている暇はない。いつまでも格闘技ができるわけじゃないからね。だから多くのトップファイターたちと対戦して、ファンが待ち望んでいる試合をしていきたい。自分が生きていると感じたいんだ」